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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
四章「迷路の街セメカインスト」
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第74話「『人魔大全』」

狭く薄暗い地下室の中、何が入っているかわからない木箱や、本が積まれた棚が佇んでいる。


鉄の甲冑なんて物もあった。


燭台の火に照らされたククラは、とても妖しい雰囲気を醸し出していた。


「それで、ククラはどうしてこんなところにいるんだ?」


疑問に思っていてたことが、ようやく聞けた。


「うーんとねー、ククラは、たぶんここで生まれたのー」


「この家でか?」


「うん。ククラは、きっとこの家にいた人形だったと思う」


「ん、人形だった?」


「うん。ちょっと待ってて……これに偶人(ドール)のことが書いてあったんだ~」


ククラが奥の木箱の陰から取り出した物は、一冊の分厚い本だった。


革張りの、随分としっかりとした本だ。


その表紙には、神聖文字(ヒエロロフィオ)で「人魔大全」と書かれていた。


人魔、つまり人と魔物について纏められた本のようだ。


分厚い紙をめくって軽く見てみると、驚いたことにすべて手書きだった。


手書きの本なんて初めて見たぞ。


現在はどうなのかわからないが、少なくとも書かれた当時には印刷技術が発達していなかったようだ。


中身は、著者の独白から始まり、人、亜人、精霊、魔物と項目が続いていた。


「ここにドールのことが書いてあったんだ~」


ドールの項目を探す。


お、あった。


『偶人 (ドール)

世の中には偶人と呼ばれる種族が存在する。その意味は、人形の人という意味である。……(中略)……何かの拍子で人形に命が宿り、偶人が生まれるのだ。……(中略)……偶人は人形だった頃の名残か、操者 (マスター)と呼ばれる存在を常に求めている。もし偶人に気に入られてしまうと、特殊な契約魔法(後述)によって、半ば強制的に操者にさせられてしまう。……』


『偶人の種族魔法

繰糸契約 (シリングリング)

偶人はみな、生まれながらにして誰かを操者にするための契約スキルを持っている。……(中略)……契約を結ばれると、利き手の人差し指に指輪が出現する。この指輪には特殊な魔法がかかっていて、繰糸契約によって結ばれた二人のいずれかが死ぬまで外れることはない。……』


なかなか癖のある種族なようだ。


それにしても俺は、ククラに気に入られてしまったわけか。


ここまで読んだ限り、操者になることは否定的に書かれている。


しかし、ふむ、幼女に気に入られて悪い気はしないな。


むしろ大歓迎だ。


「それにしても、よくこんなところに一人でいたな」


探検程度でしばらく滞在するならともかく、ずっと住んでいるなんてできない。


何気なく言ったが、ククラの顔に影が差した。


「出たくても出られないの」


「どういうことだ?」


「この屋敷を出ようとすると何か見えない壁があって出られないの」


「そんなのあったか?」


俺たちは何にも阻まれることなくすんなり入ってきたけどな。


クロネたちに話を振ってみたが、二人とも揃って首を横に振った。


と、ネウスからホーンデットマンションのことを教えてもらったときに聞いた話を思い出した。


冒険者などに金品を持って行かれたり、魔物が外に出るのを防ぐため、屋敷全体に結界が掛けられているらしい。


結界を張ったときに中にあったものと、その後中で生まれた物を外に出さない結界らしい。


「屋敷から出られないならご飯はどうしていたんだ?」


「魔物の魔力を吸ってた」


「ああ、『魔力吸収』か」


「うん」


ステータスにあったな。


この本にも「後述」とあったような気がする。


本をもう少し読み進めてみると、



『……偶人は必ず魔力吸収のスキルを持っている。……(中略)……魔力は偶人の主食で、個人によって魔力の「味」が違うらしく、その「味」が操者を決める主な理由である。操者になるとたとえ海を隔てようと、指輪から絶えず魔力を吸い取られる。……』



ああ、これがドールが否定的に見られる理由か。


そして極め付けは、



『……操者は、うまく関係を築かないと、魔力を吸い尽くされるだけの存在になり果ててしまう……』

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