第69話「ミズクとのはじめての夜営」
遅れてすいません!
空には左側の欠けたほぼ半円の月が登り始めていた。
時刻は十九時ごろ。前世の感覚で言うと日付が変わる前あたりになるのだが、この世界は日の出まで日付が変わらない。
「ハヤトにぃ、ありがとうなの」
「どういたしまして」
俺は、肩を寄せてくるミズクを撫でる。
ミズクがお礼を言っているのは、俺がミズクの退屈を思って起きたことに対してだ。
幼女一人に夜の見張りを任せるのは人としてどうかと思うから、当然のことなのだが。
「ハヤトにぃ」
ミズクは、俺の肩に頭を預けて俺の名を呼んだ。
「なんだ?」
「ミズク、ハヤトにぃの奴隷になれてよかったの」
「そう言われると主人として嬉しい限りだな」
「珍しいジョブを持っているし、優しいし強いし格好いいの」
「ミズクだって可愛いぞ」
夜のミズクは、パッチリと開いた瞳がとても可愛いのだ。
「か、かわいくないのっ。でも、ありがとうなの」
照れながらもお礼を言うミズク。
顔は逸らされて見えないが、その声音だけでも十分に萌える。
「ミズク、ずっとハヤトにぃと一緒にいたいの」
「ああ。でも嫌だったら言ってくれれば奴隷から解放するぞ?」
幼女を縛り付けるような真似はしない。
ミズクを一度俺の奴隷にしたのは彼女を守るためだ。
主人のいない状態で放っておくわけにはいかなかった。
「嫌じゃないの。むしろ、その、す、好きなの」
ミズクの顔が赤い気がするけど、焚き火のせいだろうか。
嫌われているかもと思っていたからすごく安心した。
そして同時に興奮もした。
だって幼女に好きって言われたんだぞ?
クロネもよく好きって言ってくれるけど、ミズクにはミズクの言い方があるから、そもそも一緒にしていいものじゃないし、何度言われても飽きるはずがない。
前世ではアニメのロリキャラのそういうセリフを何回もリピートしたものだ。
「ありがとう。俺も好きだよ」
俺も下心のない素直な気持ちを伝える。
幼女だからとかでなく、ミズクとして好きだ。
するとミズクは急に立ち上がり、
「マ、魔物が出たのっ」
慌てた様子で森に入っていった。
気配察知による限り近くに魔物はいないんだけどな。
その後さも魔物を倒してきたかのように振る舞うミズクがすごくいじらしかった。
◇◇◇
翌朝、頬をつんつんしてクロネを起こし、穢れを払った食材を用いて朝ご飯を作る。
穢れを払えば食べても食あたりにならないと言っても、払いきれない穢れが日ごとに蓄積していくから注意が必要だ。
まあ、さすがに昨日の今日で食べられないほど蓄積はしていないだろう。
三人でわいわいと朝ご飯を食べた後は、いよいよ移動を始める、
予定では今日あたり寄り道の目的であるホーンデットマンションにつけるはずだ。
俺はワクワクしながら歩き始めた。
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