第67話「自業自得」
四章突入です!
空には雲ひとつなく、春らしい白みがかった青色が広がっている。
「快晴、かな?」
「いい天気ですねー」
「なの(こくこく)」
今ロリコンと幼女改め、俺とクロネとミズクは、低レベルの魔物が出るヨマワモルの森を北上していた。
と、気配察知に魔物の気配が出現した。
結構近いな。
「クロネ、ミズク、近くにスライムが一体とコボルト一体が湧いた」
「どうするの?」
「結構近いから倒すぞ」
「はい!」「なの!」
それから三分とかからず魔物を倒した。
「ハヤトにぃ、そんな大きな荷物持ちながら戦うなんてすごいの」
「ほんとにすごいです! でも、ほんとなら私たちが持たないとダメなのに……」
俺は今、米俵ひと抱えはあろうかというサイズの大きく膨らんだリュックサックを背負っている。
対して奴隷二人は、萎んだナップサックしか持っていない。
クロネはそのことを言っているのだろう。
「気にしなくていいと言ったろ?」
「でも私たちの服ですし……」
「俺が調子に乗って買ったものなんだから俺が持つのが理ってもんだ」
リュックサックが膨れている原因は幼女二人の服だ。
市の日に後先考えず勢いに任せて買ったものを詰め込んだ結果こうなった。
幸いにして《このロリコンどもめ!》という加護のおかげで、体力や筋力が倍になっているから疲れにくいし、弱い魔物なら荷物を持ちながらでも相手をすることができる。
というか、幼女の服を持たせていただいてるのだから、文句などあるはずないだろう?
「さて、そろそろお昼だな。休憩にしよう」
七時(正午)が近付き、場所もちょうどいい場所があったから、間食を兼ねた休憩タイムに入る。
汗を拭き、町で買ったロールサンドを食べ、クロネの頭を撫でたりミズクの頭を撫でたりしながらのんびりする。
「セメカインスト、楽しみです!」
「何しろ迷宮だからな」
「きっとびっくりするの。前の人もすぐ迷子になってたの」
『前の人』というのはミズクの元主人のことだな。
「ハヤトにぃ以外にご主人様はいないの」
しれっとそんなことを言うミズクが可愛い。
ミズクがセメカインストの様子を話すのを聞きながら、俺とクロネはまだ見ぬ光景に思いを馳せた。
◇◇◇
そうだ、あのことを話しておかないと。
俺は、そろそろ休憩を終えようかと準備をしている時に思い出した。
「これから夜営をするとき、夜の警戒はミズクと俺で行う」
「ハヤトお兄ちゃん、わたしはしないのですか?」
「ああ、クロネにはしっかり寝てもらう」
「二人がやっているのにわたしだけしないなんてダメです!」
「まあ、聞け。平等になるようにミズクには今から寝てもらう」
「今からなの? それだと進むペースが遅くなるの」
「ああ、もちろんその間も歩みは止めないつもりだ」
「ミズク置いていかれるの⁉︎」
「だから聞け。眠っているミズクを俺が抱っこして運ぶ。これで問題はない」
「だ、抱っこなの……っ」
ミズクがえくぼを作りながら口をすぼめた。
口元がニヤつくのを堪えている顔だ。
「クロネも抱っこして欲しいですっ」
「クロネは夜寝るときな」
「やった!」
クロネが笑顔になる。
しかし、クロネは忘れている。
寝るときはたいていクロネを抱っこしていることを。
「さて、そろそろ行こうか。ミズク、おいで」
「はいなのっ」
俺は、ミズクを抱え上げて歩き出した。
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