第7話「クロネ」☆
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どうするかを決める前に、やるべきことがあった。
「そういえば、髪、洗っていい?」
俺は、汗や砂で固まってハ○ター×ハ○ターの主人公みたいになってしまっているクロネの髪を見ながら尋ねる。
傷周りの汚れを取ったり怪我を治したりして後回しにしていて、結局魔力切れで洗えていなかった。
そろそろ魔力も回復しているだろう。
「え? は、はいどうぞ。かわ――」
「ウォッシュ」
「ひやああああああああ⁉︎」
許可を得たのでクロネの頭を水で覆ったら、奇妙な声をあげた。
(くすぐったかったのかな? いや、普通に驚いただけか)
「あんまり動くなよー。まだそこまで制御出来ないから」
頭全体を包み込むようにして水球を張り付かせ、水球の中の水を適当に動かして汚れを落とし絡まった髪を解いていく。
水球の中でクロネの黒い髪がうねうねと動く様は、ちょっと面白かった。
洗っている間、クロネは青くなったり赤くなったりとめまぐるしく表情を変えた。
そして水球が濁ってくると水を頭から離し、遠くの方にぶちまけた。
「これでさっぱり――」
しただろ?と言おうとして、できなかった。
振り向いて見たクロネの頭は少し艶を取り戻して、爆発した髪はぺったりと彼女の肌に貼り付き、貼り付けなかった髪は素直に重力に従って下を向いている。
うつむく美幼女がそこにいた。
しかしつい言葉を切ってしまったのはそれが理由ではない。
「NEKOMIMI……」
そう猫耳が付いていたのだ。
猫耳が伏せられている。
猫耳が戸惑うように横に揺れ始めた。
猫耳がまた伏せた。
「あのっ!」
――は! つい猫耳を観察してしまった。
「ど、どうした?」
覗きがばれたときのような罪悪感を感じながら、俺は極めて平常を装って返事をする。
「黙っていてごめんなさい!」
突如、クロネが土下座した。
「なんでもするので捨てないでください!」
よくわからないが、オタクセンサーが重要な言葉を拾ったのでお約束のセリフを返す。
「今、なんでもするって言ったよね?」
この後めちゃくちゃもふもふした。
生ネコミミは、すごく柔らかかったです。
◇◇◇
この世界には様々な人種がある。
人間に始まり、エルフ、ドワーフ、猫人、犬人、エトセトラ。
その中でも大きな国を起こし、広い範囲を支配しているのが尊き人間なのだとか。
尊き人間は、それ以外の人種を人の出来損ないという意味を込めて亜人と呼び差別している。
獣人は家畜以下。というのが世の中の通説らしい。
クロネからこの話を聞いたとき、俺は何様だよ人間、と思ってしまった。
そして、自分勝手に他を虐げる人間に虫酸が走ると同時に、それを受け入れているクロネにも腹が立った。
しかし手慰みにクロネの頭を撫でて、気持ち良さそうにしている彼女を見ると、その怒りも治まった。
ちなみにこの常識を知らない理由は、興味がなかったから、で済ませた。
まあ実際どっちが尊いとかどうでもいいし。
俺のバイブルによると、「かわいいは正義」とあるから、クロネが普通の人間より尊く正しいのは間違いないが。
「そういえば、これからどうするか考えないといけないんだっけ」
猫耳騒動で、はじめに考えていたことをすっかり忘れていた。
「ご主人様は何の目的で森に入ったのですか?」
異世界から来て降り立った地がここでした、とはさすがに言えないし……。
「うーん、特に目的があったわけじゃないよ。それと敬語禁止」
「でも――」
「ご主人様の命令が聞けないのかー?」
「わかりまし――わかった」
「それとご主人様呼びも禁止な。それ以外で好きに呼んでくれ」
「えーっと、じゃあハヤトお兄ちゃん」
「ぐふっ」
お兄ちゃん、だと⁉︎
いい響きじゃないか。気に入った。
ついつい頭を撫でてしまう。
「ほわ〜」
気持ちよさそうに眼を細めるクロネ。
「まあ、することを考えるって言っても人里に行ければそれでいいんだが……」
それでいいというより、むしろそれが現在最優先の目的だ。
「クロネ、街の方向覚えてたりしないか?」
ダメ元で聞いてみる。
「憶えてるよ」
「やっぱ覚えてないか――って、覚えてるの⁉︎」
必死に森の中を逃げ回っただろうから、混乱して覚えていないだろうと思ったのに。
「それがわたしの特技だよ。わたしのステータス見てみて?」
「え、他人のステータスって見られるのか?」
「えーっと、主人なら奴隷のステータスを見られるの」
へーそうなのか、ってさっきの聞き方だと俺がこの世界のことを全然知らないってばれるんじゃ……
そう思ってクロネを見るも、時に気にした風でもなかったので安心した。
奴隷について知らないことはとっくにばれてるだろうから、今後は奴隷との違いを聞く形で尋ねることにしよう。
さて、クロネのステータスが見られるということだが……
クロネのステータスを見たいと念じる。
――――――――――――――――
クロネ
猫人 女
職業:《奴隷lv.3》
スキル:
《空間把握lv.2》
――――――――――――――――
ち、ょ、っ、と、待、て、!
なんだ猫人って! 変なルビをつけるな! いや、そもそもニャーマンってなんだよ! 分かるけどさ、分かってしまうけどさ!
「見た?」
「ああ、(種族名が)すごいな」
「えへへ、(スキルが)ちょっとした自慢なの」
とにかく、この空間把握スキルのおかげでちゃんとどっちから来たかが分かるらしい。
「それで、街に向かうの?」
「街が一番近いのか?」
「んーと、うん。街の方が近いよ」
「よし、じゃあ街に向かおうか」
俺は、クロネと連れ立って歩き始めた。
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一章が終わりました。ちょっと話を挟んでから二章に入る予定です
次回更新は今日の夜7時予定です