第62話「市の日」
昨日でスキル試しも終わり、レベリングを本格的に始めようかと思いながら宿を出ると、街の様子がいつもと違った。
馬車や荷車を引く人が多く見え、どことなく賑やかな雰囲気だった。
道行く人を捕まえて聞いてみると、どうやら今日の三時(朝の九時ごろ)から市が開かれるらしい。
毎月一日に必ず開かれるそうで、様々な流通品が出回るのだとか。
「市か……面白そうだな。今日は狩りは休みにして、市を巡ろうか」
「分かりました!」
「市、巡るの」
二人の承諾を得、俺たちはのんびりと歩きまわりながら市が開くのを待った。
町の大通りから広場にかけて露店が並ぶようで、いつもは屋台がないところにも、パイプテントのようなテントが準備されていた。
聞いたところによると、扱う商品によってエリア分けされているらしく、どこにどんな露店が並ぶのかを調べているうちに、市が始まった。
初めこそ人が少なかったものの、三十分もしないうちに通りは人でいっぱいになった。
「す、すごい人です……」
「(こくこく)」
幼女二人は人の多さに目を丸くして、ミズクに至っては声も出ないようだった。
俺は、存在を知って行こうと決めていた露店エリアに向かった。
やってきたのは衣服を扱うエリア、そしてその一角にある子供服のコーナーだ。
「よし、先ずはミズクとクロネの服を買うぞ」
「「え?」」
驚く二人の声がハモった。
「そ、そんな必要ないですっ。ついこの間買ってもらったばかりですしっ」
「それは気にしなくていい。俺が買いたいから買うんだ」
「ご主人様の服は買わないの?」
「そんなのは後でいい。先ずは二人の服だ。好きなのを選ぶといい」
「……えっと、いいの?」
「ああ、可愛いミズクをもっと可愛くするために買うんだからな」
「か、可愛くないの。でもミズクのための服なんてもったいないの」
「ミズクのためだけじゃないぞ? 俺のためでもある」
可愛い幼女は、目の保養になるのだ。
「とにかく、好きな服を選んでみろ。じゃなきゃ俺が勝手に選ぶぞ?」
「クロネは、ご主人様に選んでほしいです」
「そ、それならミズクもそうしてほしいの!」
おいおい、二人してロリコンの俺に任せるとは、なんて恐れ知らずだ。
「本当にいいのか?」
「「もちろんです(なの)」」
よし、言質も取ったし、二人を俺好みのテイストでコーディネートしてやろうじゃないか。
◇◇◇
似合いそうな服を選んで、二人を試着用の衝立の向こうに放り込んだ。
待っているとクロネが衝立から顔を覗かせた。
「ご主人様、着替え終わりました」
「じゃあ出てきてくれるか?」
そう声を掛けると、クロネが小股でちょこちょこと出てきた。
その姿に一瞬にして心を奪われた。
清涼感のある白いブラウスはクロネの活発そうな印象を一段と明るくし、会ったばかりの頃とは見違えるような健康的な素足が、青いフレアスカートからまるでこちらを誘うようにすらっと伸びている。
俺は瞬きするのも忘れてクロネを見つめた。
しかしその時間は長くはなかった。ミズクがクロネの後に続いて姿を見せたからだ。
しかし、俺は息を吐くことはできなかった。
ミズクの亜麻色の髪の先端を隠すように巻かれた焦げ茶色のストールに、肩のラインを隠すベージュのショール。
一見厳重に守られているように見えるが、上半身に対し、波打つミニスカートから覗く足は露わになっていて、ひどく無防備だ。
それが逆に庇護欲を掻き立ててくる。
「はぁ……」
俺はようやく息を吐いた。二人が不安げな表情になる。慌てて誤解を解く。
「二人があまりにも可愛すぎて声も出なかったよ……。すごくよく似合ってる」
「ご主人様、ほ、褒めすぎですよ~」
「な、なのっ! 可愛いなんて、嘘はよくないのっ」
「褒めすぎてもないし、嘘でもない。二人とも本当に可愛いよ」
「にゃぁ~お兄ちゃん……」
「ほふぅ……かわいい、違うの~」
ああ、二人とも赤くなって俯いてしまった。
でも、照れる二人もかわいいんだよな。
俺は迷わずその服を購入した。
計6900エソの出費だった。
そしてそのあとも二人の下着やら他の着替えやらを買いまくり、さらに8000エソ使った。
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