第61話「弓矢DEジッケン」
※6/14矢の価格を100エソから10エソに変更しまし、それに合わせて文を一部書き換えました。
翌朝、寝返りの打てなかった俺の身体はボキボキで、朝からミズクはルンルンだ。
まあ、ヒールで簡単に治るし、ミズクが喜んでるならそれでいい。
ラジオ体操で軽く運動してから朝ごはんを食べ始める。
「ハヤトにぃ、食べさせてほしいの」
ご飯を真剣に見つめて手をつける様子のなかったミズクが、おもむろに口を開いてそう言った。
「ご飯をか?」
「なの。あーんしてほしいの」
ミズクは上目遣いで俺を見る。ダメ?っと聞いているような幼女の円な瞳を前に、俺はたじろぐ。
あーんだって?
そんなの是非させて頂きたいに決まっている!
「いいぞ。ほれ」
俺は、一口サイズに切ったウインナーをフォークで刺し、ミズクの前に持っていく。
「んっ」
ミズクは、身を少し乗り出してぱくっといった。
瞬間的に鼻に襲ってくる萌えの強烈な一撃。
「ヒール」
朝から危ないな、まったく。
「ハヤトお兄ちゃん! 私も食べさせてほしいのです!」
「分かったわかった、そう焦るな。ほら」
「んっ~~」
ぱくりとクロネがフォークを咥えた。
「ヒール」
俺、最近鼻血がよく出かけるんだけど、何かの病気だったりするのだろうか。
え、ロリコンは病気じゃないぞ?
「ハヤトにぃもう一回あーんしてほしいの」
「わたしもあーんしてほしいです!」
その後俺は、雛に餌を与える親鳥になった。
昨日ミズクに甘えるのを許したのを少しだけ後悔した。
だって回復魔法がなかったら、多分萌え死んでただろうから。
◇◇◇
朝ごはんを食べたら、早速武器屋へと出かけ、矢を二十本買う。
矢は竹製で鏃が鉄のものを選んだ。一本10エソ、日本円にして百円だ。
おそらく前世の矢と比べたら破格なんじゃないだろうか。
鍛冶系スキルの恩恵は本当にいろんなところに見受けられるな。
ギルドでクエストを幾つか受けて町を出た。
まずクロネに魔物を倒させてみる。迫ってくるコボルトと十メートルくらいの距離になったところで矢が放たれ、怯んだところにもう一本中てる。
その後さらに二本の矢を中て、コボルトを倒した。
「やった!」
「スゴイなクロネ! 初めてなのに一回も外さず仕留めるなんて!」
「はいっ! わたしも一人で魔物が倒せました!」
やっぱり、気にしているんだな。
折れてない矢を回収し、スキル試しを再開する。
その後俺もスライムを倒していたが、以前の半分くらいの力で真っ二つにできた。
人の感覚は、少しの変化でもかなり楽に感じるというし、実際は二割くらいの変化だろうか。
ミズクも「すごいのすごいの」と、はしゃいでいた。
「クロネ、やってみてほしいことがあるんだ」
俺は、ふとゲームで見たあることを思い出し、クロネに頼んでみる。
「なんですか?」
「曲射をやってみてほしい」
「きょくしゃ、ですか?」
「ああ、ほとんど空に向けるような感じで弓を引いて、遠くの相手の頭上から矢を降らすんだ」
「ミズク、それ知ってるの。すごく難しいって聞いたけど、空間把握のあるクロネならきっとできるの」
「やってみます!」
そして、少し開けた場所に移動する。
「少し射てみないと分からないです」
「ああ、じゃあ俺のいうとおりに射てみてくれ」
さて、物理法則の定番! 放物線だ!
しかし普通に放物線を見ても物理法則から外れているかの確認ができないから、計算式を立てることにした。
この世界に重力があることは間違いない。
手元で周期の短い振り子を作り、ストップウォッチと重力加速度の指標を作る。
振り子の長さを一、振り子の周期を一として関係式を立てると重力加速度は円周率の二乗の四倍になる。
……とまあややこしい話は置いておこう、これらの準備は全て無駄だったわけだから、虚しくなるだけだ。
最初、地面と水平に射てもらって計算に必要なもう一つの指標を図ろうとした時のことだ。
「クロネ、まずは真横に射ってみてくれ」
「はい」
クロネは地面と水平に弓を引き絞り、矢を放った。
放たれた矢はまっすぐに飛んでいき――
「ん?」
――全く高度を下げずにまっすぐ飛んでいったかと思うと、あるところでぽとりと地面に落ちた。
「ぶ、物理法則さあああああああああああああああああああああああん」
この世界の神は言っている。水平投射? なにそれクソワロwww
やめたげてよぉ……。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。曲射をやってみようか」
俺は錯乱しすぎて、曲射の時も同じようになるという考えには至らなかった。
しかしそれで正解だった。
斜めに射られた矢は、綺麗に放物線を描き、地面に突き刺さった。
その後実験を重ねた結果、曲射をしようとして打った矢には重力加速度が働くことがわかった。
普通にまっすぐに射ようとするときには働かない。
必要とされるときにだけ呼ばれる物理法則さん、カワイソス。
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