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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
三章「タゼウロンの町」
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第56話「物語などしけるほど」

「今日は、今まで働きづめだったし、ミズクのこともあるから冒険者業は、休みにしよう」


「ミズクのこと、なの?」


「ああ、長くこき使われていたんだろ? 疲れがあるかと思ってな」


「別に大丈夫なの」


そうは言っても、疲れは必ずあるはずだ。


「まあクロネを休ませたいのもあるから、気にしないでいい」


「……ありがとなの」


ミズクは、気まずそうにしながら、しかし頬を緩めてお礼を言った。


でも、お礼を言うのは俺の方だ。


今日まで俺のペースで冒険を続けてきて、クロネを十分に休ませていなかった。


普通の冒険者でも一週間に一、二回は休みの日を作るのだから、下手をしたらクロネが倒れていたかもしれない。


「わたしも大丈夫ですよ? 逆に、ハヤトお兄ちゃんに会ってから、前より元気になりましたし」


「本当か?」


「うんっ、ハヤトお兄ちゃんの優しさのおかげですっ」


そう言ってクロネは腕にしがみついた。


嬉しいことを言ってくれる。


ますますクロネが愛おしく思えてきた。


躊躇わず彼女の頭を撫でる。


「ほんとに仲がいいの」


ミズクは半眼で俺たちを見る。


やばい、呆れられたか?


口角が上がっているのは、冷笑や苦笑ではないと思いたい。


「(ミズクにもお兄ちゃんがいたらな……)」


ぶつぶつ言いながら、俺を温かい目で見るミズク。


これは呆れている目だ。間違いない。


俺はゆっくりとクロネから手を離した。


「ほんとに主人と奴隷の関係だけなの?」


はい、ロリコンと幼女ですとは、もちろん言わない。


そして、俺がこの世界(イロエリス)に来て初めて会った人でもあるけど、それもまだ言わない。


二人を信愛――もとい信頼しているが、まだこの世界に来て一月(ひとつき)も経っていないのだ。


明かすのは半年ぐらい経ってからでいいかなと、深い理由もなく考えている。


もちろんその時になっても言いふらす気はないし、ロリコンの意味は明かさない。


しかし俺のことを何も話さないのは慕ってくれているクロネたちに対して失礼だろう。


「よし、じゃあ今日は三人の親睦を深めるためにいろんなお話をしよう」


「しんぼく?」「なの?」


二人は揃って首を傾げた。


「仲良くなるってことだ」


「なるほどなの」

「わたし、お兄ちゃんと仲良くなりたいですっ」


クロネは、はいはいっと手を挙げてもおかしくないほど前のめりになっている。


「十分に仲がいいと思うの」


「俺も、すでに仲良くなれていると思うぞ」


すると、クロネの顔に花が咲いた。


「ハ、ハヤトお兄ちゃんっ、ほんとにそう思ってくれてるんですかっ?」


「当たり前だろ? 仲良くなかったら頭とか撫でないだろ?」


仲良くもない幼女を撫でるなど、命知らず過ぎる。


「よかったです。じゃあもっと仲良くなりたいです!」


「もちろんだ」


「ミ、ミズクもっ!」


「ああ、そのつもりだよ」


奴隷商、梟人(ホーマン)の村、日本。


生まれはそれぞればらばらで共通の話なんてない。


世間のことを知っているのはミズクだけだし、奴隷商での生活の酷さなんて俺には分からないし、奴隷になってすぐに買われたミズクにも分からないようだった。


そして二人とも日本のことなどもちろん知らない。


しかし、だからこそ三人で誰かが仲間はずれになることもなく話すことができた。


クロネは辛かった記憶が蘇り、不安になって泣き、ミズクは故郷を思い出して静かに涙を零した。


そして俺は、もう日本に戻れない現実をはじめて直視し、ホームシックになりかけた。


「ハヤトお兄ちゃん、元気出してください」

「ハヤトにぃ……」


でも、生まれた時からすでに奴隷で、親の顔を知らないクロネや、魔物によって家族を殺されたミズクを見て、そんな思いは吹き飛んだ。


『ロリコンなら幼女を守れ』と偉い人の言葉にもあるように、俺は幼女を護る必要がある。


それだけでなく、クロネの笑顔は「守りたい」と思えるものだし、ミズクの満面の笑みを見たい。


俺は心の支えになってくれる二人を守ると、心と異世界でやり遂げることリストに深く深く刻み付けた。


ちなみに、リストの中には、世界一周と、魔法を全部見る、できれば使えるようになることと、色んな幼女を見ることと、職業ロックの呪いを解く方法を見つけてロリコンを退職することがある。


どれも各地を巡る必要があるから、降りかかる災難をあしらえるようにレベルを上げて強くならなければならない。


「明日からまたレベル上げをするぞ」


「「はい」なのっ!」

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