第54話「少しずつ」
最近スランプです
書き溜めはあるのでまだ大丈夫ですけど
夕ご飯の時間。
頼んだ料理が運ばれてきた。
料理はそれぞれ違っている。
「さて、食べようか。――いただきます」
「いただきますっ」
「神様をけいあいします」
そして、三人で交換しながら料理を食べ進めた。
「ミズクは、食器の扱いが上手いな」
クロネの時を思い出して、ミズクを観察していると、しっかり食器を使いこなしていた。
「う、うん」
ミズクは、戸惑いながら返事をした。
「ハヤトお兄ちゃんっ。わたしはどうですか?」
「ああ、クロネもずいぶん上達したな」
初めて食器を使ってから約二週間が経ち、不慣れさが感じられなくなり扱いも上手くなっている。
「えへへ~~」
自慢げににっこりと笑うクロネの頬っぺたには、パンくずが付いていた。
そんなところがとてもいじらしく思う。
「クロネ、パンくずついてるぞ」
「えっ、どこですか?」
「ここだ」
全く見当違いなところを触っているクロネの顔に手を伸ばし、付いていたパンくずを取った。
俺は少し悩んだあと、それを自分の口に入れた。
「ハヤトお兄ちゃんっ、汚いですよっ」
「汚いわけあるか」
幼女の頬っぺたに付いた食べかすは、幻の食べ物じゃないか。
「奴隷の食べかすを……信じられないの」
ミズクは、目をぱちくりさせて俺とクロネを見比べている。
「奴隷とか関係ないって言ってるだろ?」
「奴隷だけじゃなくて亜人でもあるの」
「それこそ関係ない。俺は獣人を醜いだなんて思わないからな」
「ハヤトお兄ちゃんはわたしの耳を可愛いって言ってくれましたっ」
「ああ、耳だけじゃなくてクロネも可愛いぞ」
「えへへ、嬉しいです」
クロネは屈託のない笑みを浮かべた。
「(これは、夢なの?)」
ミズクは、悩ましそうに眉間にしわを寄せていた。
◇◇◇
ご飯を食べ終わり、タオルで拭いて身体を綺麗にする。
「ミズク、裸になってくれ」
「分かったの」
ミズクが躊躇いもなく服を脱ぎ、裸体が露わになる。
「ミズク、服を脱ぐときは後ろを向け」
「え? わ、分かったの」
ミズクが慌てて後ろを向いた。
「ちょっとビックリするかもしれないが、我慢してくれ」
「え、何――」
「ウォッシュ」
「――っひゃあっ!!!」
水球がミズクの身体を包んだ。
「ちょっ~~くすぐったひ~~何にゃのっ~~ハヤトにひぃ~~ひゃひっひぃ~~」
洗い終えると、ミズクが肩で息をしながら、床に手をついた。
「はぁはぁ……くるひぃ……」
「まさかミズクって、くすぐったがりなのか?」
「……なの。すごく、くすぐったかったの」
「いや、それは……ごめん」
「………………(どうしてそこで謝るの……)」
「何か言った?」
「何にもないの」
ミズクがジト目で俺を見つめた。
「(この人は、信じていいかもしれないの)」
何か小声で呟いているが、嫌われてしまったのだろうか。
幼女に嫌われることをしたと思うと、自分が嫌になる。
クロネと仲良くなれたから、調子に乗りすぎたのだろうか……。
でも、ジト目のミズクも可愛いと思ってしまうのは、もう仕方がないと思う。
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