第6話「幼女」
言葉だけ知っていて中身を知らないってよくありますよね
小並感とか微レ存とかね……
あ、元ネタ調べるのはお勧めしません
調べた方は自己責任で。
世の中知らなくていいこともあるのです
女の子が目を覚ましたのはそれからしばらく経った頃だった。
すでに服は乾いていたから、着せてある。
「あれ……わたし生きて……る?」
「調子はどうだ? 痛むところとかないか?」
声をかけると、女の子ははじめて俺に気づいてびくりと身をすくませて怯えた目を向けてくる。
俺は目線を女の子の高さまで下げ、努めて優しく話した。
「ゴブリンに襲われていたんだが……憶えているか?」
「えーと、う、うん。憶えてる」
「そうか、辛かったな。だがもう大丈夫だ。安心しろ」
やがて俺が敵じゃないと認識すると、女の子は俺の胸に飛び込んで大声で怖かった痛かったと泣き始めた。
俺はうんうんと頷き返しながら女の子の背中をさすった。
顔をぐりぐりと擦り付けられ、涙やら鼻水やらも服に付くが気にしない。
精いっぱい泣かせてやると、女の子は恥ずかしそうにしながら身を離した。
そしてその顔には困惑の表情が浮かんでいた。
「あの、わたし……えっとその、お金とか、ない、です」
「お金?」
「えっと、助けてもらったらお金を払わないといけないから……」
(なんだそんなことか)
「気にしなくていい、俺が勝手にやったことだ」
そう言うと、女の子は安堵の表情を浮かべた。
「もしお金を要求したらどうするつもりだったんだ? 安心しろ、もしもの話だから」
「お金がない時は体で払う、教えられました」
「ぶっ――」
俺は思わず吹き出した。
「誰だ、そんなこと教えたやつは」
「どれいしょうのおじさんです」
「奴隷商?」
まさかこの世界には奴隷がいるのか?
すると、女の子はおもむろに服を脱ぎだした。
「お、おい、どうした突然」
しかし女の子はその質問には答えず、自分の胸を見下ろして唖然としていた。
「あ、あれ? 痣がなくなってる」
「ああ、俺が治したからな」
すると女の子は驚きながら狼狽えた。
「えっと、わたし――」
「大丈夫だ。お金は要らない。それよりどうして服を脱いだんだ?」
すると、女の子は思い出したのか、はっとした顔になって背中を見せた。
「見てください。背中に刻印があります」
肩甲骨の間あたりに奇妙な模様があった。
「それで?」
「わたし奴隷なんです。生まれた時からの。そこで教わりました」
「なるほど、辛かったな」
そこで、少女は上目遣いに怯えたような目を俺に向けた。
「あの、せいどれいにしないんですか?」
「は?」
「怪我を治したってことはせいどれいにするんじゃないんですか?」
「なるほどわからん」
彼女によると、奴隷には労働に使う奴隷とソウイウことに使う奴隷の二種類あり、前者は使い潰すため怪我を治したりせず、怪我を治すのはもっぱら後者しかいないらしい。
彼女は未契約奴隷で、やろうと思えばすぐにでも契約できるため、ソウイウ目的で傷を治したと勘違いされたのだ。
俺は必死に誤解を解いた。
「それにしてもどうしてこんなところにいたんだ?」
話によると、未契約奴隷はまだ誰にも買われていない奴隷で、間違っても一人で森に入ったりはできない。するとなぜ彼女がここにいたのかという疑問が起こる。
「えーっと、森を抜けたところにある街に行くところだったんです。ジュヨーさんやニーズさんに会わせるためって教えられました。そのために奴隷を交換するらしいです。そして、その道中でゴブリンにあって、その時に馬車から放り出されました」
話を聞くと怒りが込み上げてきた。
奴隷商での生活を聞いていると、彼女は一緒にいた奴隷の中で一番幼く、泣いてばかりだったらしい。だから魔物から逃げるためにおとりとして選ばれてしまった、と。
他にも奴隷商で日常的に暴力を振るわれていたという話を聞いた。
「お前は奴隷商の所に帰りたいか?」
彼女は首を横に振った。
「じゃあ俺の奴隷になるか?」
奴隷商に返さないなら、他人に譲るか、奴隷から解放するかだ。
しかし未だに彼女としか会ってない俺には人脈も無いし、奴隷から解放するのは契約した後でもできる。
未契約状態だと他の人に会った時に不安も残るし、何より俺の奴隷にすれば俺の所有物扱いになり、俺以外誰にも彼女に手を出せないし、俺は彼女を傷つけるつもりはない。
そこまで考えた上での提案だ。
やましい気持ちがあったことは否定できないが……
彼女は激しく頷いた。
俺は、彼女の教えに従って指を切り、出てきた血を奴隷印に押し付けた。
「契約」
すると呼応するように紋章が光り、その模様が変わった。
「そういえば名前を聞いていなかったな。俺は大鷹隼人――いや、ハヤトだ」
「クロネです。ふつつか者ですがよろしくお願いしますご主人様」
ずれた挨拶に苦笑を返しながら俺はこれからどうするか考えた。
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