第51話「心象」☆
※6/19文字でのステータス表示を追加しました。
「奴隷商ショヌヒップへようこそおいで下さいました」
ギルドから紹介されたのは、クロネを囮に使った野郎のいる商会だった。
「おや、そちらの帽子の奴隷は……」
お、まさか覚えているのか?
心象が少し良くなる。
「もともとここにいたらしいな」
「やはりあの亜人でしたか、使い心地はどうです?」
使い心地だと? なんだその道具みたいな言い方。
いや、奴隷は人であって物でもあるのだ。そんなことでいちいち構っていられない。
しかし俺の心象はただ下がりだった。
「悪くない。素直に言うことも聞いてくれるからな」
クロネはちょっとした頼みごとでも嬉しそうに聞いてくれる。
この間なんか、痒いところに手が届かなくてクロネに頼んだら、喜んで掻いてくれた。
「そうでしょう! このショヌヒップは、例え亜人でも教育を怠ることはしませんから!」
宣伝乙です。
奴隷を好きで買ったりしないから悪しからず。
そもそもクロネは奴隷商をたらい回しにされていたんだから、お前らの教育量なんて近似をとったらゼロになる。
それに偉いのはそこを生き抜いたクロネだ。
俺はイライラしながら単刀直入に話を切り出した。
「首輪が買いたいんだが」
「そうでしたか。そちらの亜人ですね。奴隷紋の確認をしても?」
「ああ」
ミズクに服をめくらせる。
小さな背中と幼鳥の翼が、露わになる。
それを見た奴隷商人は、露骨に顔を顰めた。
「確認ができました。どのような首輪をお探しでしょうか」
「ベースはこいつがつけているような物を頼む?」
そう言って、クロネの首元を見せる。
「軽くて丈夫な革で、装飾は銀製。色は——茶色か焦げ茶色だな」
ミズクの亜麻色の髪には青は合わない。
「かしこまりました。予算はおいくらほどでしょうか?」
「1500エソだな」
もっと出せるが、クロネの時と同じにしておく。差別は良くない。
「ちなみにこれはスラーリブで作らせたものだ。ショヌヒップの技師の腕はどうだろうな」
「っ! かしこまりました。素晴らしいものに仕上げましょう」
「あまり装飾過多で華美なものは避けてくれよ」
しっかり釘を刺しておく。
そして俺たちは奴隷商を後にした。
◇◇◇
屋台で間食を取り、宿に戻った。
ミズクとクロネをベッドに座らせ、二人と向かい合う形で椅子に腰掛けた。
「さて、これでミズクが仲間に加わった訳だが……ミズクはギルド証を持ってるか?」
「持ってるの」
ミズクは懐から赤色のギルド証を取り出した。
「アサートを見せてくれるか?」
「んっ」
————————————————
ミズク rnk.3
役:荷物運び、近接型
スキル:
《夜目lv.3》《聞き分けlv.3》
《待機lv.2》
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「スキルレベルがステータスのと一致してるけど、こまめに更新していたのか?」
「ううん。一年くらい前に冒険者登録させられて、それ以来なの」
つまり梟人の集落にいた時からもうスキルのレベルが高かったのか。
近接もできるみたいだし、幼いのに凄いな。
「そういえばミズクは今何歳なんだ?」
「七歳なの」
ナイスの七か!
ナイスリトルである。
「ミズクは、いつから奴隷なんだ?」
「それも一年前くらいからなの」
「どうして奴隷になったんだ?」
「人間に村を襲われたの」
「そうか……村に帰りたいか?」
「村は、焼かれてもう無いの」
……それはまた、人間もまた酷いことをしたもんだな。
人間を恨んでないか気になる。
いや、十中八九恨んでいるだろう。
人間に対する心象が良くないのは間違いない。
だが、俺たちは主人と奴隷だ。
聞いても素直な思いが聞けるとは思えない。
俺はクロネを呼び寄せ、可愛らしい猫耳に耳打ちする。
耳が頭上にあるので、頭を抱くようにする必要があった。
「お、お兄ちゃん⁉︎」
「(クロネ、今度人間を恨んでないか聞いておいてくれ)」
「わ、わかりましたっ」
どうやったら俺を信頼してもらえるだろうか。
(獣人のこともあるから、しばらくは俺の下に置こうと思っていたが、奴隷を解放する手段を探すのを急がなければならないかもしれないな)
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