第50話「癖」
冒険者から手に入った金を数えてみると、11000エソもあった。
俺の全財産くらいある。
どおりで盗賊が減らないわけだ。
奴隷を除けば四人組だったから、だいたい一人3000エソくらいは持ち歩いていたのだろう。
「そういえば、彼らがギルドに預けていたお金はどうなるんだ?」
「ずっとギルド証の更新がなかったら、没収されるの」
「まじかよ」
「まじなの」
まあ、それがギルドの財源でもあるのか。
でもギルド証を作った時、そんなこと言われなかったぞ?
「ずっと、ってどれくらいだ?」
「分からないの。ごめんなさいなの」
「そんなことで謝らなくていいぞ」
また、ギルドに行った時に聞けばいいしな。
俺は、ミズクの頭を撫でた。
「あっ……」
「っと、ごめん、つい」
無意識のうちに、クロネにするように手が動いてしまった。
「ううん、大丈夫なの。びっくりしただけなの」
ミズクは、頭を押さえて目を丸くしている。
「(いいなぁ……)」
クロネが羨ましそうにボソボソと言っている。
仕方ないな(←ここ重要)。また後で可愛がってやろう。
「お、壁が見えてきたな」
疎になってきた木々の向こうに、タゼウロンの町の城壁が見えてきた。
「そういえば、ミズクは前はどこの町にいたんだ? タゼウロンか?」
「ううん、違うの。セメカインストから来たの」
「セメカインスト? どんな街なんだ?」
「迷宮市街って呼ばれてるの」
迷宮! 凄くいい響きだ! ダンジョンとかがあるのだろうか。
「ダンジョンがあるのか?」
「ううん、違うの。街が入り組んでいて迷路みたいになってるの」
へぇ、それはそれでなかなか面白そうなところじゃないか。
「じゃあ戻ることになってミズクには悪いけど、レベル上げが終わったら迷宮市街に行こうか」
「分かったの」
「迷宮市街……面白そうですね!」
クロネは興味津々のようだ。空間把握があるから非常に心強い。
「……っと、関所が見えてきた。ここからはご主人様と奴隷の関係になるから気をつけてくれ」
「はいっ」
「分かったの」
一人分の通行料を払って町に入った。
ギルドにミズクの元主人のパーティーが襲われて全滅したことを伝える。
「奴隷だけが生き残っていたんですか。では、この町の奴隷商を紹介しますね」
「ん? なんのためだ?」
「いえ、使えない奴隷を売るのに必要かと」
見張りが疎かになったのは、主人の方に非があるのだが……
まあ、首輪の件もあるから、紹介してもらおう。
俺はむっとする気持ちを抑えて紹介を頼んだ。
ギルドを出た。
「ミズク、売られるの?」
ミズクが暗い顔で聞いてくる。
「いや、新しい首輪を頼むだけだ。誤解させてしまったな」
「そうなの……。良かったの」
ミズクはほっとしたようだった。
「(この人を逃すと、いいご主人様には出会えなさそうなの)」
また何かボソボソと言っていた。
独り言が多いタイプなのか?
……謎めいた幼女って感じで、萌えるな。
「(梟人は、ぜったいに滅ぼさせないの)」
一旦、一昨日まで泊まっていた宿にチェックインして、奴隷商に向かった。
感想・ご意見・誤字脱字などなど随時受け付け中!
気軽に書き込んで行ってください!
できる限りコメント返します
ブックマークもお願いします!