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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
三章「タゼウロンの町」
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第46話「ミズク」

遅れてすいません!

陰から姿を見せたロリ――もとい少女は、怯えた様子で周囲をチラチラと見ていた。


「大丈夫だ。この辺りに魔物はいない」


そう言ってやると、彼女は少し落ち着いた。


「お前、名前は?」


「ミズク」


「そうか。俺はハヤトだ。この子はクロネ。見ての通り俺の奴隷だ」


「奴隷……」


彼女は、ぽつりとその言葉を繰り返した。


気にせずに言葉を続ける。


「コボルトに襲われたみたいだけど、何があったか教えてくれないか?」


そう言うと、彼女の姿が消えた。


しかしそれは消えたように見えただけだった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ミズクが寝てしまったせいなの! 罰はなんでも受けるから、命だけは取らないでください!」


彼女は、地面に座り込んでこちらを見上げながら、すごい勢いで謝罪と命乞いを繰り返した。


「謝罪はいい。俺はお前の主人達の仲間でもないし、命をとる気もないから安心しろ」


「ほ、ほんと?」


「ああ。本当だ。」


ホッとしたようなため息が聞こえた。


「何があったのか聞かせてくれ」


「夜の見張りをしている時に眠ってしまって、その時に襲われたの」


「夜営はミズクだけだったのか? 何人のパーティーだったんだ?」


「ミズクを含めて五人なの。夜営はミズク一人だったの」


「奴隷一人に見張りを任せていたのか? 信じられないな」


「ミズクが買われたのは、夜の見張りを任せるためだからなの」


「だとしても一人だけに任せる理由としては弱いぞ」


「ミズクは、夜目スキルを持っているの」


嫁?


いや、夜目か。


「他にも、聞き分けスキルもあるの」


「聞き分け?」


聞き分けがいいということではないだろうが、どういうスキルだ?


「それはどういうスキルなんだ?」


「いろいろな音を聞き分けることができるの」


聖徳太子的な感じかな?


「確かに夜営に向いているな」


物みたいに表現することになってしまうが、居ると、とても便利だ。


「それにミズクは、(ふくろう)の獣人なの」


人間じゃなかったのか。


耳を見るが暗くてよく見えない。


そうやって観察していると、ミズクの顔が強張ってきた。


よく考えると、今俺はクロネを抱えて立っているわけで、必然的にミズクを見下ろすことになっている。


獣人であるから、この先を思って不安になっているのだろうか。


「一先ず俺の夜営地に戻るから、ついて来い」


血の匂いにつられてコボルトが集まり始めていることを感じたから、俺はその場を離れることにした。



◇◇◇



夜営地に戻ると、火を消し忘れていたことに気づいた。


火事にならなくて良かった!


これも幼女のファーストキスで運気が上がったからだろうか。


ごめんなさい、言いたかっただけです。


明るいところでミズクを見ると、薄い茶色の髪からぴょこんと立った耳が見えた。


「とりあえずそこらへんに座ってくれ」


ミズクは指示に従って、立っていたところに正座した。


「足は崩していいぞ」


そう言うと、彼女は体育座りになった。


俺も少し間を空けて横に座る。


「で、梟の獣人と言うのはどういう種族なんだ?」


獣人は、種族ごとに耳などに特徴を持つがそれだけではない。


クロネの猫人(ニャーマン)の場合、身のこなしが軽いという特徴がある。


採取で木に登るとき、いつもクロネに頼っているくらいだ。


「ミズクたちは、夜になっても眠たくならなくて、夜に効果を発揮するスキルを得やすいの」


「へぇ、それはすごいな……。でも、じゃあなんで見張り中に寝てしまったんだ?」


「ミズクたちでも、ずっと起きてられるわけじゃないの。少し寝ないとダメなの」


「まさか、まったく寝かせてもらえなかったのか?」


ミズクは頷いた。


「お昼は森を動き回って、夜は見張りなの」


「労働基準法とか児童虐待とかはこの世界にないのか?」


「ろうどう、なの?」


「いや、気にするな」


それにしても、ずいぶんひどい扱いだったんだな。


「お腹空いてないか?」


「空いてるの」


俺は荷物からパンを取り出し、ミズクに渡す。


「ハヤトさん、これは?」


「パンだけど?」


「食べていいの?」


「ああ、そのためにやったんだ」


「ありがとうございます」


彼女は、黙々とパンを食べた。


やっぱり食べ物もそんなに貰ってなかったようだ。


食べ終わったミズクに対して言う。


「今日はもう寝るんだ。見張りは俺がやっておくから」


「え? 奴隷の契約はしないの?」


「え?」


「え?」


主人のいない奴隷を拾った場合、奴隷はその人のものになるということをすっかり忘れていた。

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