第40話「ロリコン退職」
「次は転職ですね。ご案内します」
教えを受けた後は、いよいよ神殿に来た目的である転職だ。
早くロリコンを退職したい。
ちゃんとした職に就きたいのだ。
クロネたちに誇れるような職に就きたいのだ。
俺たちが連れてこられたのは大きな鏡の前だった。
鏡の向こうのクロネを見ると、目が合う。
クロネがにっこりと笑った。
かわいいなぁ。
そこら一般にいる幼女よりも、クロネはダントツでかわいい。
「ホント、ハヤト様はお優しそうですね」
俺たちの様子を見ていた神官がそんなことを言った。
優しいとは違うよな、ただのロリコンだし。幼女を大切にするのは当たり前だ。
「では、転職の儀を始めます。説明は要りますか?」
「ああ頼む」
「転職の儀では、転職希望者の血を鏡面につけることで始まります。すると今職の名前が中央に、なれる職業が周囲に現れます。その中からなりたい職業を選べば転職ができます」
「わかった。ありがとう」
「転職代は転職後に頂きますが、お持ちですか? 1000エソです」
「ああ持っている」
俺は金貨を見せる。
「では始めてください」
渡された針で右手の人差し指の先を軽く突き、出てきた血を鏡面につける。
すると鏡に映った鏡像が暗くなり、夜の窓ガラスを室内から見たような感じになった。
俺の姿は見えず、離れているクロネとノロは見える。
鏡の向こうから白い光の粒子ようなものがやってきて、鏡面で文字の形になった。
俺が手を置いてる位置——鏡の中央に《ロリコン》
その周りに《村人》《魔法使い》《ソーサラー》の文字。
「ロリコン? 聞いたことのない職業ですね」
神官が鏡面を見て、そんなことを言った。
え⁉︎ これ見えてるの?
「ロリコンってどんな職業なんですか? どうやってなったんですか?」
興味津々といった様子で聞いてくる。
(あれ、ロリコンの意味を知らない?)
考えてみれば当然だった。だってロリコンの語源であるロリータは、前世のロシアの小説のタイトルなんだから。
でも、神聖文字って意味がなんとなく分かるんじゃなかったっけ? 読めるだけだったっけか。
「なんとなくわかったりしないのか?」
「神聖文字は、知っている言葉だけしか意味を察することはできませんよ」
おお、そうなのか。
助かったぜ……
「どういう職業か実はよくわかっていなくてな。得体がしれないから、早く転職したいんだ」
と、適当に嘘をついて説明から逃げ、鏡面に意識を戻す。
「一旦手を離して、なりたい職業に触れてください。就きたいと強く念じれば転職が完了します」
説明に従い一旦手を離す。
そして《ソーサラー》の文字へと手を伸ばして——
「「え⁉︎」」
神官と俺の驚いた声が重なる。
手を動かすと《ロリコン》の文字が追ってくるのだ。
《ソーサラー》を選ぼうとしても、手前に《ロリコン》が来て選べない。
「どうなってるんだ?」
俺は何としても《ソーサラー》に触れようと、下ろしていた左手を鏡面に触れさせる。
「はぁ⁉︎」
すると、《ロリコン》が二つに増え、《ソーサラー》の前に滑り込んできた。
「くっ! 斯くなる上は!」
ギリギリまで《ソーサラー》に近づき、素早く親指で《ソーサラー》に触れる!
《ロリコン》が三つに増えた。
その後自棄になってすべての指を使った結果。
《ロリコン》《ロリコン》《村人》《ロリコン》《ロリコン》《ロリコン》《ソーサラー》《ロリコン》《魔法使い》《ロリコン》《ロリコン》《ロリコン》《ロリコン》
選べる職業四種類のうち、十個がロリコンになった。
もうやだ……
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