第37話「食べ歩き」
町に帰ったらまず、ギルドで報酬を受け取る。
スライム討伐クエストで300エソ。
コボルト討伐クエストで400エソ。
それらの報酬とは別として、スライム六十体の討伐に対する礼金で3600エソ。
コボルト四十体討伐で3200エソの稼ぎだ。
ハイペースで狩り続けたから、がっつり儲かった。
ギルドの人が驚いていたが、騒ぎになるようなことはなかった。
ギルドに5000エソを預けるためにアサートスクリーンを出すと、ランクが2に上がっていた。
一緒にクロネのも確認すると、1に上がっていた。
旅亭レヤンドカにチェックインして、90エソの宿泊代を支払う。
「ああー、疲れた〜」
「きゃあっ⁉︎」
部屋に入るや否や、俺はクロネを巻き込んでベッドに倒れこんだ。
深い意味はなく、ただベッドに倒れたかっただけだ。
クロネを巻き込んだのは、俺一人でやるのが嫌だったからだ。
「び、びっくりしました……」
目を丸くして転がるクロネが可愛らしい。
「やっぱり連戦は疲れるなー」
「うん……わたしも疲れました」
足を地面に投げ出したままベッドに仰向けになり、天井を見る。
「今日は結構お金も手に入ったし、どこか外にでも食べに行くか――と、思ったけどやめておこう」
「? どうしてですか?」
「外だとクロネと一緒にご飯が食べられないだろう?」
奴隷を相席させて食べるのは、この世界の常識ではありえない。
変に目立つのは避けたいのだ。
「わたしはそれでもいいですよ?」
「ん〜じゃあ屋台でも回って食べ歩こう」
「楽しそうです!」
俺たちは宿を出た。
◇◇◇
「おーい、ハヤト!」
屋台で焼き鳥を食べていると誰かに呼ばれた。
「お、ネウスか」
振り向くと、角刈りの青年が少し離れたところから手を挙げて、こっちに向かっていた。
「どうだった?」
「すごいぞ! エキシピウムで本当にレベルが上がった! さらにシバカリキっていう加護も手に入ったぞ! でもなんだろうな、シバカリキって」
さすがに芝刈り機は、この世界にないよな。
「さあ、知らんが、よかったじゃないか」
「ああ、ハヤトのおかげさ。ところであの後どうだった?」
「スライムとコボルト合わせて百体くらい狩った」
「百体⁉︎ 嘘だろ?」
「いや、運良くたくさん遭遇できたんだ」
「へぇ、それが本当なら大量発生しちまってるかもしれないな」
それはないと思うが、変に問いただされると困るので言わない。
変わりに気になっていたことを聞く。
「そういえば、スライムばっかり偏って遭遇することがあったんだが、どういうことか知ってるか?」
「ああ、それは魔物のテリトリーの違いだよ」
ああ、やはり魔物でもテリトリーがあるのか。
「でもスライムばかり何十体も連続っていうのは多いな……ギルドには報告したか?」
「いや、してない。異常かどうかも分からなかったしな」
「じゃあ俺が報告しといてやるよ。だからなんか奢れ。そんだけ倒したなら稼いだんだろ?」
「仕方ないな……おっちゃん! 鶏五本追加で!」
「エールも頼むよ!」
「あいよっ」
「おま、勝手に……」
「いいじゃないか、酒くらい」
「別にいいが……ネウスは何歳なんだ?」
「十七だよ?」
未成年じゃないか、と思ったが、ここは異世界、日本ではないことを思い出した。
「ああそうか、この街は十六からオッケーだぜ?」
「……ギリギリいけるかな」
「へぇ、もっと下だと思ってたぜ。お前童顔だな」
「そうか?」
日本人は、外国人から見たら幼く見えるっていうのは本当なんだな。
「でも、今はやめておくよ」
クロネもいるしな。
串三本とエールを胃に放り込んだネウスは、ギルドに報告へと向かった。
俺たちは、屋台巡りを再開する。
俺以外にも奴隷を連れて屋台を巡る冒険者を見かけた。
別に珍しくは無さそうだ。
俺は、安堵しながら普通のうさぎ肉のオムレツを頬張る。
この世界はうさぎが食肉用として飼育されているから、うさぎ肉料理は鶏と豚の次によく見る。
オムレツを半分食べたところでクロネに譲る。
「美味しいれふ」
クロネの頬張る顔はいつ見ても可愛い。
夜の帳が下りる前に宿に帰った。
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