小話「するのはいいけど……(3/3)」★
※第14話のクロネ視点になります。
かなり短めです。
クロネのイメージイラストを描きました。
後書きに載せています
キャラのイメージを損ないたくない方は表示設定から挿絵を非表示にしてからお臨みください
とうとう寝る時間がやってきました。
部屋は真っ暗で寒々しいけど、わたしはぽかぽかしていました。
それは、布団の中にいて、近くにハヤトお兄ちゃんがいるからです。
今日は、とっても楽しかったです。
それもこれもお兄ちゃんが傍にいたからだと思います。
もうちょっと隣にいるお兄ちゃんに身を寄せたいけど、さすがにそれは恐れ多すぎてできません。
幸せに満たされていると、彼がわたしの名前を呼びました。
「クロネ」
「はい」
「命令だ。俺と二人きりの時は言いたいことややりたいことを我慢するな」
奴隷紋は、反応していません。
でも、痛みもないのに、なぜか涙がこみ上げてきます。
それに、命令の内容もおかしいです。
やりたいことを我慢するな、って、奴隷に言う言葉じゃないですよ。
「お兄ちゃんはどうしてそんなに優しいんですか?」
「俺は、俺の価値観に沿って行動してるだけだ」
「奴隷でもわがままを言っていいんですか?」
今までやりたいことがあっても、ずっと我慢してきた。
怒られるから。
許されないから。
最近ようやく我慢が苦しくなくなってきたと思ったのに……
心の中にまた、さっきの箱が現れた。
「ああ、俺がいいと言ったらいいんだ。それに俺の価値観ではクロネは奴隷じゃない」
「無茶苦茶ですよ、もう」
わたしは戸惑いながら、ちょっと怒ってみせた。
でも、嬉しいのに涙が出てきて苦しい。
心の中に、嫌な感じはしないけど壊したい箱があります。
衝動のままお兄ちゃんに身を寄せると、箱が壊れました。
すると中に押し込められていた感情が解き放たれてしまいました。
お兄ちゃんと、もっとお話ししたい。
もっと撫でて欲しい。
もっと褒めてもらいたい。
もっと抱きつきたい。
好かれたい。
◇◇◇
甘えたいという想いがはじめて解き放たれた。
心にできたスペースは、今までの幸せでは満たせない。
でも、満たすのが難しいかといえば、そうではない。
それは、すぐ傍にいる彼によって、簡単に満たされてしまうのだから――