小話「するのはいいけど……(2/3)」
※第13話のクロネ視点になります。
本日午後7時に3/3を投稿します。
色々お話ししていると、お料理が二人分運ばれてきました。
ハヤトお兄ちゃんは優しいけど大食いみたいです。
いや、優しいこととは関係ないですね。
今日の晩ご飯は、鳥の照り焼きという、つやつや光っていい匂いのする焼き鳥とパンみたいです。
食べたことのないほどのご馳走を前に、よだれが出てしまいます。
まだです。奴隷であるわたしは、まだ食べられません。
でも、そんなこと気になりません。
だって、こんなご馳走が食べられるんですよ?
ただ心配なのは、ハヤトお兄ちゃんがどれくらい大食いなのかです。
もし全部食べられてしまったら……
奴隷章では、余り物が少なかった時は、そういうことがよくありました。
亜人だから、他の奴隷に回されてしまうのです。
わたしが少し不安になっていると、彼が困ったように部屋を見回しました。
「クロネの椅子が無いな」
「わたしは奴隷だから床に座るよ?」
もともと椅子に座るのはご主人様だけですし、奴隷は許されてませんけど、床に座っても特に不便はないです。
椅子は、確かに立ち上がりやすいけど、それだけです。
そう思っていると、
「いいから椅子に座ってくれ。俺が落ち着かないんだ」
彼は、ベットに腰掛けて、空いた椅子を指しました。
心の中で首をかしげながら椅子に腰掛けます。
「いただきます」
「食べます」と宣言して、彼ががご飯を食べ始めました。
食べ終わるのを待っていると、ふと彼が顔を上げました。
「あれ? クロネ、食べないの?」
変なことを聞くなぁ、と思って、思い出しました。
彼は、奴隷について詳しくないんでした。
「奴隷は主人の残した物を食べるんです」
「何のために二人分頼んだと思ってる」
「ハヤトお兄ちゃんが食べるんじゃないんですか?」
「あれは嘘だよ! クロネにしっかり食べてもらうためのな!」
そ、そうだったのですか!
「とにかく一緒に食べるぞ」
「はい」
食べたかったので、文句も何もありません。
わたしは、料理を前にナイフとフォークを構えました。
さっきも思っていたけど、彼は、ナイフとフォークでとても綺麗にご飯を食べます。
お兄ちゃんは、食べてるところもかっこいいんだなぁ……。
わたしも、見よう見まねでご飯を食べようとするけど上手くいかないです。
「クロネ? もしかしてナイフとフォーク使えない?」
あうぅ……ばれてしまいました。
「……はい……」
「仕方ないな、教えるよ。利き手はどっちだ?」
彼は、わたしの後ろに回ります。
「えっと、右です」
そう答えると、ハヤトお兄ちゃんは後ろから……抱きつきなさってくださりやがりました⁉︎
はわわわわ、お兄ちゃんに抱きつかれてる!
お兄ちゃんの温かさが服越しに伝わってきます!
心臓のドキドキが大きく、激しくなりました。
お兄ちゃんは、何かを言いながらわたしの手をぺたぺた触っていますが全然耳に入ってきません。
そして下手に身動きも取れず、心の中であたふたしてるうちに、わたしの手が動かされ、鳥の照り焼きが口の中に入ってきました。
とりあえずもぐもぐと噛んで飲み込むけど、心の中が大変すぎて味が全然わかりません。
「どうだ? 美味いか?」
「……美味しい……です」
わたしは、とりあえずそう言い、熱くなる顔を隠すためにお兄ちゃんから顔をそらしました。
「それは良かった」
そう言って、お兄ちゃんは身体を離した。
熱くなった体が少し涼しくなったのを喜んでるけど、わたしはそれどころじゃないです。
「使い方は分かったか?」
ぶんぶんと首を縦に振りました。
今、分からない、と言ってしまうと、またさっきのようになってしまいます。
抱いてもらえるのは嬉しいというか、恥ずかしいというか、すごく嬉しいけど、そろそろ心臓がドキドキしすぎて苦しいです。
そのあとしばらくは、彼の方を見れませんでした。
自分から抱きつくのはいいけど……
抱きつかれるのは、とっても恥ずかしいです。
※次話、イラストの挿入があります。キャラのイメージを損ないたくない方は非表示にしてお臨みください。
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