第28話「奴隷商スーラリブ」
「奴隷商スーラリブへ、ようこそおいでくださいました。本日はどういったご用件でしょうか」
奴隷商に入ると、小太りのおっさんがぴっちりしたスーツを着て出迎えた。
「ああ、こいつの奴隷の首輪を買いたいんだ」
「失礼ですが彼女を奴隷にする正当な理由がおありで?」
おお、予想をしてなかったことを聞かれた。
まさか人身売買をする人間から正当な理由という言葉を聞くとは思わなかった。
「ああ、この子はもうすでに奴隷なんだ」
そう言ってクロネに後ろを向かせ、服をめくる。
クロネの背中が露わになった。
疚しいことはないんだ。
なのになぜ俺は背徳感を感じているんだろう。
俺の苦悩を余所に、奴隷商のおっさんは納得した風に頷いた。
「なるほど。どこかで拾われたのですか?」
「ああ、マナモシの森でな」
「マナモシの森……ああ、同業者の話と一致しますね」
「捨てられた物を俺が拾ったんだ。金は払わんぞ」
どんな形で権利を主張されるか分からないから、下手に出ずに偉そうにするのを忘れない。
「もちろんですとも」
ちょうどその時、店の奥から一人の男がやってきた。
ひょろりとしていて癖っ毛のある男だ。
「あ」
「クロ――おまえ、知り合いか?」
「はい、最後の奴隷商人さんです」
ほう、話し好きだったというやつか。
クロネに暴力を振るわなかったということで俺の中の印象がまあまあ良いやつだ。
「おい、こいつマナモシの森で拾われたやつらしいぞ」
「なんだと⁉︎ お客様、それは私めの商品でございます。返すか、もう奴隷にしたのでしたら、代金をお支払いください」
なんだこいつ、印象最悪だな。
「ははは、残念だったな。ワシは、お前が六日前に捨ててきたと愚痴っていたのを聞いたぞ。お前の商品でもなんでもないわ!」
「チッ。さすが商品の質が悪いと有名なスーラリブだな」
おうおう、商人が潰し合ってるぞ。
何がさすがなんだか。
「獣人なんて拾う物好きがいたのはびっくりだな」
男はその言葉を残して奥に戻っていった。
何しに来たんだあいつ。
「あいつは金にがめついことで有名なショヌヒップ商会の奴でね。儲けることしか考えてない困った商会です」
もういいからおっさん。俺はそもそも奴隷商にたいして良い感情を抱いてないんだから、他の商会を悪く言ったところでどちらの株も下がる一方だから。
「それで首輪の話なんだが」
「ああ、そうでしたね。細いものから太いもの、軽いものから重いものまで色々ありますよ。どれをとっても性能は変わらず、鎖や紐付きの物もあります」
クロネに紐付きの首輪だと……!
それはなんともそそ――らない!
クロネの今までの境遇を思う。
……
煩悩なんて吹っ飛ぶよな。
俺は予てより考えていたことを聞いてみる。
「首輪を加工してもらう事はできるのか?」
「ええ、色なら緑以外自由に選べます。家紋を入れたり装飾をつけるのは別料金ですが可能です」
ほう、ならよかった。
「なら色は青で、――――――は可能か?」
俺は、クロネに聞こえないように注文を付け加える。
「はあ、可能ですが、高くなりますよ?」
「ああ、構わない、予算は全体で1500エソだ」
「分かりました。あまり無い注文なので作成に一日かかります」
「なら、明日の昼過ぎにまた来よう」
「承知しました」
俺たちは奴隷商を後にした。
結局もう一日滞在することになったが、それは構わない。
俺は、首輪をただの首輪で済ませる気はない。
ふふふ、明日が楽しみだ。
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