第24話「肉屋」
うわわっ! 大幅遅刻
すいません!
街に戻ってギルドにゴブリンを届けると礼金として80エソもらった。薬草の報酬は実入り50エソの100エソ。
森うさぎよりかなり安いのは仕方がないだろう。
ゴブリンなんて得るものも無いし、薬草や森うさぎの方が価値がある。
森うさぎを見てびっくりしている職員を一瞥して俺たちはギルドを後にした。
「ずっと持ったままも何だから、まずは肉屋に行こうか」
「じゃあ私が昨日森うさぎを買った店でいいですか? 多分クエストを出したのもその店です」
「ああ、まずはそこに行ってみようか」
俺たちはマインの案内のもと肉屋に向かった。
◇◇◇
「凄いな……」
俺は、誰にも聞こえない声でそう呟いた。
天井から肉が吊るされた、動物から皮を剥いだだけの肉。
前世とは違って、動物が俺たちが食べる肉になっていると一目でわかる。少々気持ち悪いがグロいというほどではない。
また、ざっくりと大きく角切りにされた肉が棚の上に並んでいる。
中には骨ごとぶつ切りしたと分かる物もあった。
あまり見栄えのよろしくない細々とした肉は、くず肉として100グラムあたり5エソとかで売られていた。
その隣にミンチ肉があるが、扱いから見てくず肉を加工したものだろう。
それらの光景は、前世の肉屋になれた俺としては衝撃的だった。
店に近づくと、スキンヘッドのおっさんがこちらに気づき、声を掛けてきた。
「いらっしゃい! どんな肉を買いに来たんだ?」
「いや、肉を売りに来たんだ」
そう言うと、肉屋は顔をしかめた。
「肉屋に肉を売るたあどういうつもりだ?」
「昨日は森うさぎの依頼があったが今日は無かったのでな、買い取ってもらえないかと思って」
そう言ってクロネが担いでいた森うさぎを見せる。
すると肉屋は目を見開き、
「何でぇ、オメェが犯人か。オメェのせいで今日は肉が売れねぇんだ。どうしてくれる!」
おっさんは大きな声でそう言った。
肉が売れないって、俺、何かしただろうか。
「けっ! 冗談が通じねえのか。オメェが昨日獲って来たうさぎが売れに売れたから、逆に今日の客入りが少なく見えちまうってこった!」
「ほう、それは何より」
「ギルドに礼をしにいかにゃならねえと思ってたが、オメェが来たんなら話は早い。ちょっと奥に来い」
この「礼」って悪い意味の「礼」じゃないよね?
「ハヤトさん? 行きましょうよ」
渋っているとマインに促された。
身構えながら肉屋の後を付いて行く。
肉屋に連れてこられたのは、巨大な台のある広い部屋だった。いろんなノコギリや刃物が壁に掛けられている。どうやら加工室のようだ。
「とりあえずこれは昨日の礼だ」
そう言っておっさんは銀貨5枚を手渡してきた。
何の例だ?
「一匹の報酬の500エソっていうのは、状態が悪かった時の保険の値段でな、オメェのは余計なキズが無かった上に、血抜きもしてあった。だから追加で金を払うってわけだ」
「なるほど、ありがたく頂いておく」
「おう、そうしろ。それで今日も狩ってきたんだっけか。やはり金に目がくらんだか?」
金も欲しいがそうじゃない。
「この子に森うさぎを狩れることを信じてもらうためにだな――」
「違うって! それは建前で、森に行ってみたかっただけなの!」
俺の言葉を遮りマインが頬を膨らませる。
かわいい。
「ハッハッハ! 随分と気軽に森うさぎを獲ってくるんだな」
「気軽じゃないさ。信用に関わるんだ。すんごく重大だろ?」
そう言うと、肉屋は豪快に笑った。
「いやあ、面白ぇな! 肉を売るっつー話だっけか。いいぜ、丸ごと買ってやるよ」
「いや、売るのは一匹だけだ。もう一匹は解体を頼みたい。金は払う」
「何でぇパーティーでも開くのか?」
「いや、この子たちに食べさせたくてな」
「それなら一匹は多いぜ? 半分でも朝と夜に食って余るくれぇだ」
「そうなのか。じゃあ半分で頼む」
「おうよ! そうだな解体の分を引いて200エソでいいか? 解体に銀貨1枚は高いと思うが、細かい計算をしたくねえ」
解体にたったの1000円だと?
「そんなに安くでやってくれるのか。まあ、お言葉に甘えておこう」
「肉売って出る利益の方がでけえから気にすんな。解体は時間がかかるから、暫くしたらまた来てくれ」
これからマインに街を案内してもらう予定だしちょうどいいな。
「じゃあ先に800エソ渡しておくわ。細かくなってもいいか?」
「ああ、ある程度ならな」
「ちょっと待ってろよ。……6銀18銅20色でどうだ?」
俺の持ち金はさっきのゴブリンや薬草やうさぎの追加報酬で7銀8銅6色……そのままもらうと硬貨が60枚を超えてしまうな。
「一先ず6銀6銅でいい。後で解体した肉を取りに来た時に残りを受け取る」
「分かった。店は12時までだからできればそれまでに来いよ」
「ああ分かった。それじゃあまた後で」
「おう!」
俺たちは肉屋を出た。
「じゃあ、服か防具、どちらから行きますか?」
「服だな」
クロネを早く地味で粗末な半袖から解放してやりたい。
念のためギルドで、ある程度お金を引き出してから、服屋へ向かった。
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