第23話「食料以外の何ものでもない」
「本当に森うさぎだ、すごい!」
マインは俺が持っている森うさぎを見て歓声をあげた。
「信じてなかったんですか?」
クロネがマインを責める。
「いや、信じてなかったというより、森うさぎを始めて見たから……」
「じゃあゴブリンも見てみるか?」
「「ゴブリン?」」
クロネは顔を少し青くして、マインは訳が分からなさそうにしている。
「さっきゴブリンと会ってな、ギリギリでやっつけた」
クロネたちの姿が見えてからヒールの効果が跳ね上がったから今は擦り傷もないが、あれは結構やばかった。
「見てみたいです!」
「じゃあこっちだ」
そして、ゴブリンを倒したところに戻る。
「うわぁ……」
ゴブリンを見たマインは顔をしかめていた。
「気持ち悪いですね」
「だろ?」
「でも、持って帰ったらお金もらえますよ」
「そうなのか?」
「はい、森うさぎは動物だからないですけど、ゴブリンとかの魔物を倒すとお礼の金がもらえます」
そうなのか。さすが冒険者ギルド支部長の娘だ。
「出来れば生きてる森うさぎを見せてやりたいから、もう一匹追っかけたいが、二匹いても仕方ないしな……」
「それなら直接お肉屋さんに売りに行ったらどうですか?」
「え、そんなこともできるのか?」
「はい」
「じゃあそうしようか」
◇◇◇
「じゃあ今から俺のうさぎ探しを実演するぞ。さっきのは例外だったからな」
「大きい音を出す必要があるんですよね?」
「ああ」
「ハヤトお兄ちゃん、がんばってください」
クロネの励ましにマインは首を傾げた。
まあすぐにわかるさ。
俺は息を吸い込み、空に向かって叫ぶ。
「森うさぎいいいいいいいいいい!!!!」
……
……
…………
「この辺りにはいないみたいだ。少し移動しよう」
「はい」
「えっ? ええっ⁉︎ 呼んだら出てくるんですか?」
マインが困惑している。
「すまんな。俺とクロネの秘密なんだ」
「二人だけのヒミツです」
「ええっ⁉︎ よく分かんないけど羨ましいです!」
クロネが勝ち誇ったような顔をしているがどうしたんだろう。
あ、ドヤ顔か。クロネも空間把握隠してるもんな。
奥の手が残っているのよフフフフフ的な。
そしてしばらく移動したところでもう一度叫ぶ。
「いた!」
俺は、気配の方向に駆け出し、逃げている森うさぎを捕まえた。
そしてクロネたちのもとに戻る。
「へぇー、これが森うさぎなんですかー。大きいうさぎですね」
「抱いてみるか?」
そう言ってマインに渡してみる。
森うさぎはマインに脇の下を持たれて、びろーんとなっている。時々思い出したように暴れるが手を離すほどではない。
「うわぁ〜わさわさだ〜」
「噛まれないようにだけ気をつけろよ」
マインは、うさぎをもふもふ改めわさわさしている。
うさぎと戯れる少女。
萌えるねぇ〜。
ふと、空いた俺の手にクロネが手を繋いできた。
振り向くと、懇願するように上目遣いを俺に向けていた。
「クロネも、もふもふしたかったのか。そういえば生きたのを触ったことなかったな。マインが満足したら触らせてやろう」
しかしクロネは首を横に振った。
「その……する方じゃなくて、される方がいいです」
「えっ?」
「耳、もふもふして欲しいです」
……よろしい、ならばその願い叶えてやろう。
と思ったが。
「い、今はいいです。寝る前の二人だけの時にお願いします」
「それもそうだな」
そうだ、この世界の人間はケモミミをよく思っていないのだ。
ケモミミを好き好んで愛でているとか本気で正気を疑われるからな。
不便な世界だ。
独占できていると思えば悪い気はしないが。
そして、森うさぎがクロネの手に渡り、手だけでは暴れるうさぎを抑えられなくて抱きつくような姿になったクロネを見て鼻の中がダメージを受けたりして、最終的には殺した。
「ハヤトさん厚かましいかもしれませんが後でお肉分けてもらえませんか?」
「ああ、もともとそのつもりだ」
「ハヤトお兄ちゃん、今日も昨日のお肉食べられるんですか?」
「マイン、多めにあげるから頼んでいいか?」
「もちろんです! 『もともとそのつもりだ』です」
この世界の常識は、うさぎ=食料だったりする。
誰も可哀想だから逃そうだなんて言わない。
かくいう俺も肉を食べたいから、二人がそんなことを言いださなくて良かったと安心している。
あと、マインが俺の言葉を真似をしたのが可愛かった。
ロリが自分の真似をしてくるのって嬉しいよね。
解説さん(第3話参照)なら萌え死にするレベルだろう。
クロネとマインにうさぎを一匹ずつ持ってもらい、俺はゴブリンを担いで街に戻った。
もちろん薬草はちゃんと採取した。
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