第22話「森へ」
添削してたら遅れました……
ごめんなさい
※5/3修正しました
「はぁ〜、初めて街から出ました」
マインは、関所を通るとそんなことを言った。
るんるんと楽しそうに俺の前を歩いていく。
ポニーテールが揺れてかわいい。
「おいおい、あんまり早く行くなよ、危ないだろ」
「大丈夫ですよ。魔物なんて出るわけないですから」
この森がかなり安全なのは知っているが、それでも絶対ではない。
現にゴブリンに襲われた被害者が俺の隣にいる。
「はぁー。まあいいか」
実際に、遭遇する確率はすごく低いわけだし、そこまで心配しなくてもいいか。
「クロネ、お姫様だっこするぞ」
「はぁい」
俺は、早く行きたそうにしているマインのためにクロネを抱き上げ、歩く速度を上げる。
森へ入り、ずんずんと奥へ進んでいく。
「そういえばハヤトさん、道、覚えてるの?」
「覚えてない」
「え……」
マインがさあああっと顔を青くした。
「道を覚えるのはクロネの仕事だ」
「わたしの仕事です」
「え、クロネちゃんが覚えてるの?」
「うん」
「クロネのおかげで、俺はうさぎを追いかけることに集中できるんだ」
その時、スキルの範囲の端で小さな気配を察知した。
お、ラッキー。叫ばなくとも見つけられた。
「森うさぎを見つけた。後で追いついてくれ」
そう言ってクロネを下ろし、気配のする方向に駆け出した。
気配には一分ほどで追いついた。
気配はやっぱり森うさぎのものだった。
手早く首の動脈を切り、逆さにして血を抜きながら踵を返す。
しかし、気配察知に嫌な気配が引っかかった。
(近い⁉︎ 何でここまで気がつかなかった⁉︎)
俺は、疑問に思いながら気配の方に向かった。
気配の主はゴブリンだった。
木の棍棒を持ち、粗末な布切れを腰に巻いたゴブリン。
俺がそいつを発見したと同時に、そいつも俺を見つけたようだ。
目が合い、ゴブリンが醜悪な笑みを浮かべる。
(ゴブリンか、楽勝だな)
以前の瞬殺した経験から、俺はほとんど恐怖を感じていなかった。
うさぎを置いて駆け出す。
しかし、俺は重大なことを見逃していた。
俺は、それに、ゴブリンに殴り飛ばされたことでようやく気付く。
身体がイメージ通りに動かないのだ。
駆ける速度が遅い。
(加護の効果が切れている⁉︎)
気配察知の範囲が狭まっていたのも、それが原因だったのだ。
このロリコンどもめ!の加護がない今、俺の実力は村人レベル。
今の俺では、ゴブリンには、勝てない。
(だがここで倒せれば‼︎)
ここで勝てば経験値を得られロリコンの格が上がる!
……言い直そう。
ここで勝てば経験を得られ、職業のレベルが上がる!
俺は思考を前向きに変えた。
立ち上がり、ロングナイフを構えゴブリンを見る。
走り寄ってきたゴブリンが棍棒を振りかぶるのを目で追おうとして、反射もくそもなく慌てて後ろに下がる。
(動体視力も下がってるのか‼︎)
驚いている間にも、ゴブリンは距離を詰めてきて、振るわれた棍棒が俺の左腕を叩く。
「ぐぅっ……」
やっぱり俺は幼女がいないと生きていけないのだろうか、と言う思いがよぎる。
もちろん加護的な話でだぞ? 勘違いするなよ?
俺は、ゴブリンの腹を蹴飛ばし距離を取らせた。
そして相手が立ち上がる前に距離を詰めようとするが、ゴブリンの軽快な身のこなしの所為でそれも叶わない。
一旦距離を取ろうとするが、ゴブリンは笑みを浮かべたままピタリとついてくる。
(くっ、鬱陶しい!)
痛みはあるが、まだ死ぬほどではない。
しかしまったく手が出せない状態のままでは嬲り殺されるだろう。
何か手はないかと考える。
ヒールを使うか? いや、時間稼ぎにしかならない。
時間を稼ぎながらクロネたちの元に戻るのは、彼女たちを危険にさらすことに繋がるからしたくない。
(仕方がない、ダメ元で水魔法だ!)
水魔法で水球を生み出し、ゴブリンの顔を覆う。
水魔法の制御力は意外と落ちておらず、割とイメージ通りに動かせた。
動きが鈍ったゴブリンにナイフを突き立て戦いが終わる。
一度経験したからだろうか、それとも自分が危険な目にあったからだろうか。前ほどの嫌悪感はなかった。
『ロリコンのレベルが上がりまちた』
お、これでクロネに並んだな。
俺は、ヒールを使って打撲を治していく。
ヒールの魔法も、やはり効果が落ちていた。
(すると俺は、水魔法の実力が加護に頼らずとも高いのか?)
実力が10あって、加護で20まで上がっていても、今まで11くらいしか使ってなかったら、加護が無くてもあまり変わらない。
そういえば細々したことはやっていたけど思いっきり使ったことはなかった。
戦闘に使ったのも今回が初めてだ。
水魔法は、攻撃手段なイメージが無かったけど、それは、俺が攻撃手段として用いなかったからかもしれない。
いろいろ試したかったが、まずはクロネたちと合流するのが先だと思い直して、うさぎを拾って、こちらに向かってきている二人の気配の方に向かった。
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