第19話「信じるか信じないかはあなた次第」
遅れてすいません
宿に帰るとひと先ず明日以降4日の分の宿代を先払いし、夕食代に銀貨2枚支払っておく。
「今日も2人分頼む」
「はい、分かりましたー。ってあれ? 一枚多いですよ?」
「それは昨日の一食分だ」
「え……いいの? でもお金を払って許してもらったのはどうしたら……」
「俺はあれで許した覚えはないぞ?」
「え――?」
「俺は謝罪の時点で許したんだ。昨日払ってもらったのは、お金が無かったから借金しただけだ」
小さな女の子からお金を集るような真似はしないし、できるなら借金もしたくなかったが、そうしなければクロネと俺がひとつの料理を分け合うことになったのでやむを得なかった。
「まあ、俺のためと思って受け取ってくれ」
「ありがとうございます!」
マインは嬉しそうにお金を受け取った。
「でも、ハヤトさん優しすぎます。冒険者なら貰えるものは貰っておくのが普通ですよ」
「優しいと言うか、女の子のお金を奪っているようでもやもやするからな」
「それが優しいっていうんですよ。ハヤトさん、悪い人に騙されないでくださいね?」
「それは大丈夫だ。結構疑り深い性格してるから」
まあ、悪いロリには騙されるかもしれないが。
◇◇◇
その日の晩ご飯は、森うさぎのステーキとパン。そしてなぜかイチゴが付いていた。
「考えてみたら私、お金持ってても使うことなくて。ハヤトさんにお礼がしたいってお母さんに言ったら食べ物にしなさいって言われたの」
ええ子や、マインさんめちゃくちゃええ子やな!
「ありがとう! それで、マインは食べたのか?」
「えーっと――」
「食べてないのか。じゃあマインも一緒に食べよう」
「でも――」
「じゃあ一緒に食べろ」
「はい!」
そしてクロネとマインと俺の三人でイチゴを摘んだ。
マインは、奴隷が食卓に同席していることや一食分が用意されていることに驚いていたが、「やっぱりハヤトさんは優しいんですね」となぜか落ち込んでいた。
それもイチゴを摘めば元に戻り、いろんな話を始めた。
もしかしてと思っていたが、森うさぎは俺が狩ってきたもののようだ。
「今日珍しく五匹も入荷したそうで、ちょっと安くなっていたんですよ」
今日の森うさぎのステーキは俺たちだけの特別なものだそうで、それもやはりお礼の中に入っているようだ。
「ハヤトさんたちは、今日何されてたんですか?」
マインが話を振ってきた。ちゃんとクロネも一人に入っている。
「うさぎ狩りだな」
「え、まさか……」
「そうだ。森うさぎを5匹獲った」
「ええ〜⁉︎ 狩った人ってハヤトさんだったんですか⁉︎」
マインは椅子から立ち上がって身を乗り出した。
すごい驚きようだな。
しかしマインはすぐに落ち着いた。
「そ、そんな嘘信じませんよ。森うさぎは、冒険者のパーティーが獲りに行ってようやく一匹獲れるか獲れないかってほど珍しいですから。新人冒険者には一匹も獲れませんよ」
「ご主人様が獲りました」
「え? 言わされてるだけだよね?」
「そんなことないです! ご主人様が五匹全部獲りました!」
おいおいムキになるな。
「落ち着けクロネ。マインも悪気があって言ってるわけじゃない」
「でも……」
「俺は気にしてない」
クロネは納得してないようだ。
「そうだな、明日一匹……いや、二匹獲って来たら信じてくれるか?」
「私を連れて行ってください。そして狩っているところを見せてください」
「えっと、宿は?」
「お母さんに言えば、数時間抜けても大丈夫です」
「俺は構わないけど……」
ちらりとクロネを見る。
嫌そうな顔をしていた。
「クロネはどうだ?」
「ご主人様がいいならいいです」
しまった。今度から先に意見を聞こう。
と言うか、もしクロネがイヤだと言っていてもマインの申し出を断る口実にはならなかったんじゃないか?
一応奴隷だしな。
しかし叫んでいるところは見られたくないな。
「連れて行ってもいいが条件がある」
「なんですか?」
「クロネを差別しないこと。勝手な動きをしないこと。お母さんにちゃんと伝えること。それと……大きな音の鳴るものを用意してくれ」
「大きな音?」
「ああ、森うさぎが聞くとビックリするような音だ」
「うーん、何かあるかなぁ」
「まあ、一先ずはお母さんについて来る許可を取ることだな」
「そ、そうでしたね。今から聞きに行ってきます」
そう言ってトトトと去っていった。
ちょっと不安そうだったが、俺にはどうしようもないな。
俺から頼むのも変だしな。
そしてご飯を食べていると、
「おるるああ! お前だな? うちのマインを誑かしてるのは!」
マインの親父が来た。
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