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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
六章「王都フォトーシス」
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第144話「魔法道具店にて③」

 魔法道具店から頼んでいた媒体が完成したとの連絡があり、クロネたちを引き連れて店に向かう。


 扉を開けると正面のカウンターに座って俯いていた婆さんがガバッと顔を上げた。動きに緩急がありすぎだろ……


「ま、マスター……!!!」

「ハヤトにぃ……!」

「お兄ちゃん……!!」

「ヒィヒヒヒヒヒヒヒ! よく来たね!」


 一挙一動が怖いんだよな、この婆さん。


 またクロネたちが怖がっているじゃないか。


 まあ、婆さんが悪いわけでもないし、クロネたちにはちょっとの間我慢していてもらおう。


 前来た時は留守番させたのに今日彼女たちを連れてきたのは、魔法の媒体をすぐに見せてやりたかったからだ。


 ハヤトは早速要件を切り出した。


「媒体ができたと連絡を受けたんだが」

「ヒヒッ、こちらに用意しとるよぉ」


 カウンターの上に布に包まれた物体が四つ順番に置かれる。


「この二つの長い包みが指揮棒型、丸い包みは小さい方が指輪で大きい方がブローチだよ」


 俺はまず一番長い包みを手に取る。


 布を解くと尖端の直径が一センチほどの太めの指揮棒が姿を見せた。


 持ち手の部分には銀の装飾がなされていて、蔦が幾重にも重なっているような細かい細工が施されている。


 持ち手の太さもちょうどよく、しっかりと握ることができた。


 持ち手の真ん中あたりにBB弾よりは少し大きい程度の無色透明な球が嵌っていた。


 薄暗い店の天井からぶら下がる魔法照明の光を反射して、虹色の光を放っている。


「この宝石みたいなものはなんだ?」

「ヒヒッ、それが水晶だよ」

「なんだって⁉︎ めちゃくちゃ小さいぞ⁉︎」


 もしかしてあのハンドボールくらいはあった水晶を削ったのか?


 それならとんでもないボッタクリだぞ。


 しかし、よく見てみるとその球体の中には小さな数字が浮かんでいた。


「鍛冶系スキルの中に《圧縮》っていうのがあってね、素材の特性はそのままにサイズだけ小さくできるんだよ、ヒヒヒッ」


 また鍛冶系スキルか……


 圧縮された水晶は圧縮水晶と言うらしい。


 ミズクがなぜかピクリと反応したが、特に何を言うわけでもなさそうだ。


 水が圧縮できたり、圧力を加えても体積を変えられないものも圧縮できるのは本当に不思議だ。


 ただ、水晶が薄暗い店でも輝き虹の様な反射の仕方をしている原因は分かった気がする。


 ダイヤモンドがきらめいて見えるのは屈折率が大きいからだが、水晶が圧縮されたことで屈折率が大きくなったのだろう。


 ——っと、そんなことを小難しく考えている場合ではなかった。


 俺は残りの包みを取り、クロネたちにそれぞれ手渡していく。


「開けて中身を見てごらん?」


 好奇心旺盛なククラはもうすでに布を解き始めていたが、三人にそう声をかける。


「やったぁ、指輪だ!」

「お兄ちゃんとお揃いの杖なのです……きゃあっ」


 ミズクも静かに笑みを浮かべていて、三人はとても喜んでくれた。


 婆さんもその様子をニヤニヤしながら見守っている。


「お兄ちゃんありがとうです!」

「ハヤトにぃ、ありがとなの」

「ありがとー!」


「どういたしまして。でも、婆さんにもお礼を言っておけよ。作ってくれた人なんだから」


「「「お婆さんありがとー(です)(なの)!」」」


「ヒヒヒッ、どういたしまして」


 婆さんの双眸が三日月型に歪む、笑っているのだろうがその顔にクロネたちは怯えてしまう。


 婆さんに同情せずにはいられなかった。


「あ、ところで——」


 俺は婆さんにとある話を切り出した。


「これってここで買い取ってもらえるのか?」


 俺は小物入れから赤色の欠片を取り出す。


 ホーンデットマンションのケープゴートから手に入った物だ。


 荷物の整理をしている時に見つけ、売れるかもと拾っておいたのを思い出したのだ。


「ヒヒッ、何かと思ったら血色晶(ブラッディクリスタル)じゃないかい」

「血色晶?」

「ああ、ポーションや魔法道具の一般的な素材だよ。魔法学園に行くなら持っておいたほうがいいね、ヒヒッ」


 へぇ、ポーションの材料か……


 念のためクロネたちにも持たせているが、今まで一度も使ってないんだよな。


 俺のヒールの方が速い上、お金もかからないし、クロネたちも俺に怪我を治してもらう方が好みみたいだ。


 スキンシップが好きなお年頃だからな。そのうち遠慮されるようになることを考えると、今強いてポーションを使わせようという気は起きない。


 だが、役に立つものであることは確かだ。


 ポーションを作るのに必要なスキル《調合》の習得は、魔法学園での卒業条件で、授業でも度々使うそうだ。


 血色晶は売らないでおいて、逆にその他の素材となるアイテムを買った。


 その中にムシュラオイルなるものがあった。


 ムシュラウルフの抽出液だそうだ。


 結構大量に買わされたが、かなりよく使うオイルらしい。


 効果や使い方は学園の授業での楽しみに取っておくとして、ムシュラウルフを呼び寄せる作用が無いことをしっかり確認した。


「ヒヒッ、もしかしてお前さんやっちゃったのかい?」

「……ああ」

「お前さん強いのに常識はからっきしなんだね、ヒヒヒッ」


 ムシュラウルフはこの世界の物語では定番の魔物らしい。


 ゆえに子供でも知っている常識なんだとか。


 ただ俺をはじめクロネたちの経歴は特殊ゆえ話を聞いたことがなかった、というわけだ。


 よく本を読んでいたはずのククラは……まあ、思い出せなかったのは仕方ないよな。ククラは悪くない。


 素材を買った後は長居せず、怖がって足にしがみついたままのクロネたちと共に店を後にした。


 魔法の媒体も入手したことだし、あとは学園都市(フィマフジスク)に向けて準備して旅立つだけだな。

これにて6章本編は終了です!


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