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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
六章「王都フォトーシス」
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第142話「聖水を売りに」

 ノーブルの屋敷に着き、開かれている門から入ろうとすると門前の兵士に止められた。


「止まれ! 貴様何者だ」

「冒険者のハヤトだ。ノーブルに売りたいものがあって訪れた」

「ダンジョン制覇者の⁉︎ 念のためアサートを見せてくれ」


 俺は素直にコイン型のギルド証を取り出しアサートスクリーンを表示した。


 ————————————————

 ハヤト rnk.4

 役:近距離型、遠距離型、治癒士

 スキル:

 《ヒールlv.4》《水魔法lv.4》

 《短剣術lv.2》

 備考:ダンジョン・パズル制覇

 ————————————————


 実はダンジョンを制覇したことでアサートスクリーンに新たな欄が追加された。


 これは偉業を成したものに与えられるそうだ。


 ちなみにギルド長のギルマンのアサートを見せてもらうと、「レッドドラゴン討伐」と書いてあった。


 ドラゴンを倒していると聞いて、ああ、やっぱりランク5は違うんだなと感じさせられた。


 自分の身長と変わらない牙を持つドラゴンを倒すなんて考えられないからな。


 アサートを確認するやいなや、二人いた門番のうち一人が屋敷の方に走って行った。


 しばらくして息を切らした兵士が戻ってくると、門の通行を許され、屋敷の前まで先導された。


 屋敷に入ると、クロネが自ら俺の靴を拭きにくる。


 が、もう世間的には奴隷ではないのでやらないように伝えると、ものすごく不満そうな顔をしていた。


 なんでそんなに靴を拭きたいんだか……


 ノーブルの所有する奴隷が俺の靴を拭いている間も、クロネはずっと頬を膨らませていた。


 その後案内が以前あった従者の男に引き継がれ、二階のノーブルの部屋まで案内される。


 途中、例のギャラリーを通ったが、すでに俺の作った幻の絵は消えていた。


「おお、ハヤトよ。よく来たのじゃ。ワシの傘下に入る決心がついたのか?」

「いや、俺はまだ旅を続けるつもりだ。それよりゴースト系に効くものを集めて回っていると聞いたが」


「そうなんじゃ! 以前ハヤトが話したことのある生きた絵(リビングアート)があったじゃろ? あの絵の中の少女が絵から飛び出して屋敷から逃げよったんじゃ! ワシはたまたま(﹅﹅﹅﹅)そこに居合わせたのじゃが、足止めのつもりかゾンビを召喚しよったんじゃ! ああ、あれは怖かった。この世の終わりかと思ったわい。幸いゾンビから逃げきることはできたのじゃが次に何かあった時撃退できるようにいろいろ集めているんじゃ!」


 一部聞き捨てならないところがあったが、そこを指摘するわけにもいかないから非難の言葉を飲み込み、代わりにさっさと本題に入る。


「それなら聖水は必要ないか?」

「聖水? ああ、聖水じゃな? そういえばお主は水魔法を使えるんじゃったか。うむ、聖水はいくらあっても足りぬということはないし是非買わせておくれ」


 その後地下室に案内された。


 そこには酒が入っていると思われる樽がたくさん並んでいて、どうやらワインセラーのような部屋らしかった。


 空の樽に聖水を注ぎ、いっぱいになると従者の手によって密封された。


 たった樽一つなのだが、それに対する対価が25,000エソと耳を疑う金額だった。


 しかし、参考程度にワインの樽の値段を聞くとさらに一つ桁が多くなっていた。


 初めて貴族の財力に驚いた瞬間だった。


 それから帰路に着いたがクロネはいまだに不機嫌だった。


「貴族ってやっぱりお金持ちなんだな」

「お酒がたくさんあったの」

「廊下に置いてある置物もけっこう変わってたねー」

「…………」


「何か面白い置物あったか?」

「目をモチーフにしたネックレスがあったの。持っていると呪われそうなの」

「気持ち悪いお面もあったねー。あれも持っていたら呪われそ〜」

「…………」


 うーん、クロネがまったく口を聞こうとしない。


 へんなところで意固地になるクロネが、見ていてとても可愛らしい。子供嫌いの人は「めんどくさい」と思うのだろうけど、俺の場合はクロネの考えてることを深く知れるまたと無い機会だと思え、むしろわくわくしてくる。


 俺は往来で足を止め、後ろを黙って着いてきていたクロネと話すために、しゃがんで目線を合わせた。


 クロネはふいと目を逸らした。


「クロネ、さっきはごめんな?」

「……」

「急いでいたとはいえ、クロネの気持ちを考えてなかった。だから、ごめん」

「……」

「俺のこと嫌いになった?」


 クロネは黙ったまま首を横に振った。


「よかった。怒ってるから嫌われたかと思った」

「…………ないのです……」

「え?」

「……怒ってなんかないのです」


 明らかに怒ってる態度だっただろう……と内心苦笑する。


 まあ、大体は分かっていた。クロネは一度見せた不満げな態度の止め時がわからなかったのだろう。一時の感情だけでやってしまって、もう気にしてないけどすっと元に戻ることができないなんて、子供だけでなく大人でもあることだ。むしろ大人の方が長引くくらいだ。


「じゃあおしゃべりしてくれるか? クロネが喋らないと寂しいんだ」

「分かったのです!」


 きっかけを与えてやると簡単に元に戻るもので、いつもの調子に戻ったクロネは、わだかまりが解けてスッキリした笑顔を浮かべた。


 うん、やっぱり笑顔が一番愛おしいな!!


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