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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
六章「王都フォトーシス」
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第141話「調査報告」

執筆間隔開けすぎると、キャラの呼び方とか分からなくなりますね……(7章の話です)

 ダンジョン調査の依頼が来てから二週間経った。


 売った水晶にかかった魔法をすべて解き終わり、そろそろ頃合いだろうと思い、「調査結果」を報告しにギルドに行く。


 ギルドに入ると幾つかある窓口のところにカカリの姿が見えた。


 ハヤトは迷わずそこに向かった。


 以前までは童顔だから、という理由で彼女の窓口を選んでいたが、最近ではもっぱら親しくなったから利用している。


「あ、ハヤトさん、おはようございます! ククラちゃんとミズクちゃんとクロネちゃんも!」

「ああ、おはよう」

「おはようー」「お、おはようございます」「おはようなの」


 カカリはクロネたちにも気を配ってくれるいい人だからとても好印象だ。


 奴隷商育ちのクロネは、人見知りをする。


 今でもカカリに挨拶された途端俺の顔を見上げていたが、これは無意識に心理的な距離をとった証だ。


 奴隷としてのおつかいなどは問題なくできるから人が苦手なわけではないが、人と普通に(﹅﹅﹅)接することに慣れておらず、どうしたらいいのかわからないようだ。


 だからクロネたちにもちょっとした話を振ってくれるカカリはちょうどいい。


「今日はどういったご用ですか?」

「ダンジョン・パズルの調査が終わったからその報告にな」

「今ギルド長は別件で出かけているので私が聞きますね。それでは待合室に案内します」


 カカリは奥で書類をまとめている職員に声をかけると奥に消え、壁際にある扉から再び姿を現す。


 そしてその扉からギルドの事務所に入り、廊下の途中にある待合室まで案内される。


 待合室には長いソファが向かい合って置かれていてその間に膝の高さほどのテーブルが置いてあった。


「ハヤトさんはここに入ったのは二度目ですか?」

「いや、初めてだ。前は直接ギルド長の部屋らしき場所に行った」

「ああ、そういえばそうでしたね」

「ギルド長大きいかったー」

「あそこまでデカイと色々苦労しそうだよな」

「ドアの上のところで頭打ちそうなの」


 少し何でもない話をしてから本題を話す。


「——なら、パズルを解けば問題は解決するわけですね?」

「ああ、だが魔法を解かずに売りに来る輩が出てくるだろうから買い取る時は注意してほしい。魔法道具店の婆さんによると《品質鑑定lv.1》があれば十分に判別がつくそうだ」

「なるほど。では、ダンジョン・パズル産の水晶を取り扱う人の条件にそのスキルの有無を入れておきましょう」


 各ギルドへの報告などの対応や最終的な判断はギルド長の仕事らしく、ここで話せることは話し終わった。


「そういえば、生きた絵(リビングアート)ってご存知ですか?」


 世間話のつもりなのだろう、カカリがそんなことを聞いてきた。


 知ってるも何も盗んできた物を持っているのだが、その件だろうか。


「ああ、ノーブルの屋敷に行った際に見せてもらったことがある」


 俺は正直に答えた。


「ああ、なら話は早いですね。その生きた絵がノーブル氏の家から逃げ出したんです」

「絵が? 足でも生えてきたのか?」


 どうしても言葉が取り繕ったものになり自然に話せないが、カカリは不審に思う様子もなくそのまま話を続ける。


「いや、絵に描かれた少女が絵の中から出て逃げて行ったんです」

「それは事実なのか?」

「みたいですよ。そしてその少女が操霊魔法を持っているらしいんですよね」

「操霊魔法?」

「死者を呼び出して操る珍しい魔法です。色々なタイプがあるんですが、その少女はゾンビを召喚してノーブルさん達を足止めしたらしいんです」


 おお、あの一件はそんな風に認識されたのか。


「ノーブルは無事だったのか?」

「ええ、何とか逃げ切ることが出来たようです。でも不思議なことに、ゾンビはその後忽然と姿を消してしまったんですよ」


 と言うことは魔法が解けてしまったわけか。


 最近になって、幻装魔法は、幻を纏わせた物が激しく動いたりすると魔法が解けるまでの時間が極端に短くなることが感覚的に分かってきた。


 あの時ゾンビの幻を纏わせた従者達もお互いの姿を見て叫びまくっていたし逃げ回ったりしているうちに魔法が解けたのだろう。


 何はともあれ「絵は盗まれた」という認識はされていないようでよかった。


「ノーブルはその逃げ出した少女を探したりしているのか?」


 最後の確認に聞いてみる。


「いいえ、今ノーブルさんは除霊の効果のある物を集めることに執心しているようです」


 へえ、そっちに行ったのか。

 まあ元々自己満足の珍品コレクターみたいな人だったわけだから自然な流れかもしれない。


「それって例えばどんなものがあるんだ?」

「数珠とかですかね」


 そうか数珠か。以前ダンジョンで手に入ったビーズのブレスレットも除霊の効果があったよな。


「クロネが持ってるのも数珠だったよねー?」


 話に寄りたがっていたククラがここぞとばかりに入ってくる。


「え、クロネちゃんも持ってるんですか」

「う、うん。お兄ちゃんに貰ったんです」


 クロネは少しうつむきながらカカリに右腕のブレスレットを見せた。


「かわいいブレスレットだね」

「うん! とっても大切なものです!」


 クロネが照れ笑いを浮かべながらカカリの顔を見た。


 が、すぐに「あっ」という顔になって俯く。


「普通に振舞っていいんだぞ」とクロネの頭を優しく撫でてやる。


 クロネは俺に関することだとたまに我を忘れて威勢が良くなるときがあるんだよなぁ。王城でリンシスと会って、俺の膝の取り合いで口論みたいになった時も、王女相手に反論してたもの。


 カカリが不思議そうに見ていたから説明してやる。


「クロネは奴隷だった期間が長くて人と普通に話すのがちょっと苦手みたいなんだ」

「そういうものなんですか?」

「ある日突然『あなたは貴族です』って言われて貴族と対等に接することができるか?」

「ああ、確かに無理ですね」


 日本の感性をもつ俺はあまり貴族に威厳を感じないが、この世界の一市民であるカカリはやはり貴族を「偉い人」という風に思っているようだ。


 日本の例で言うと「今日からあなたは熟女好きです」と言われて幼女を目にして「六十年後に期待」なんて言わなければいけない事態を想像してみてほしい。


 無理だろ?


 え、そういうことじゃない? ああそう。


 何はともあれ、いきなり違う環境に来た時、誰しも馴染めないものなのだ。


「でも元主人であるハヤトさんと話すのは普通ですよね? 一番遠慮してもおかしくなさそうなのに」

「元々酷く扱っていたわけではないからな」

「そういえば初めて会った時から顔色も肌ツヤも良くて髪も綺麗でしたね」

「よ、よく見ているな」

「当然ですよ! まさか奴隷に石鹸とか使わせてたんですか?」


 だんだん声に力が籠ってくるカカリ。

 やはりどの世界でも女性は綺麗になりたいという願望があるのだろう。


「いや、ただの聖水だよ」

「聖水⁉︎ そんな高価なものを……あれ、そういえばハヤトさんは水魔法が使えたんでしたっけ」

「魔法の練習を兼ねて聖水を作っていたんだ」

「へぇ……努力家ですね。あ、聖水といえば、ノーブルさんの話に戻りますが、同じく除霊の効果があることは知っていますか?」

「ああ、それで何度かゴースト系の魔物を倒したこともある」

「ノーブルさんに聖水を売ってみてはどうですか? 結構なお金になりますよ」

「聖水って高いって聞くけどどれくらい高いんだ?」

「一リトルで100エソです」


 リトルというのは体積の単位で、一リットルとほぼ同じだ。


高いな! コップ一杯で200円ってことだろ?


 あ、でも無水エタノールは一リットル3000円もするからそれに比べればかなり安い……


 いや、単純に額面で見たらそうだが、無水エタノールは複数の製造過程があってその値段だが、聖水は、魔力があればすぐに生み出せるのだ。


 苦労に対する対価としては聖水の方が高いかもしれない。


「何でそんなに高いんだ?」

「そりゃあ、食材の穢れを祓ったり霊が撃退できるからですよ。聖水を作れる水魔法使いはそれだけで生きていくこともできるって言われているんですよ」


 聖水ってそんなに凄かったのか。


 健康食品的な感じで気軽に飲んだりするもんじゃないんだな。


「ですから売りに行ってみてはどうです? ダンジョン制覇者の作る聖水ならきっと箔が付きますよ」

「そうだな。高く売りつけてやるか」


 図らずもマッチポンプの構図が出来てしまったが元々需要があるものだから気にしないでおこう。


「あれ、ということは魔法道具店に聖水を売ることもできるのか?」

「ええ、もちろんですよ」


 何ということだ。俺はかなりいい稼ぎの機会をずっと捨てていたわけか。


 ファマーチストにも魔法道具店があり、俺はそこで夜営用に火付けの魔法道具を買ったわけだが、その時に知っていればクロネの服をもっと買えていたのに。


「知らなかったんですか? 意外です」

「知識が偏っている自覚はある」


 ククラと会った屋敷から持ち出してきた本で勉強はしているものの、日常的な知識は殆どないのだ。


 『この世界の常識』なんて本もあるわけないし


「そんなことないですよ。剣の手入れの仕方を知らない冒険者だっているんですから」


 励ましのつもりだろうが、俺もその中の一人だったんだよな。


 タゼウロンの訓練所で教わって以来しっかりやっているけど。


 今では毎朝クロネたちと一緒に自分の武器を手入れするのが日課になっているほどだ。


「それじゃあ、聖水を売りにノーブルを訪ねてみるよ」


 話も終わったからと立ち上がると、カカリも慌てて立ち上がった。


「あっ、ハヤトさん、今日も夕ご飯一緒に食べませんかっ。」

「ああ、この子たちも一緒でも構わないか?」

「もちろんですよ! また新しいお店紹介しますね!」

「それならどこかで待ち合わせしておいたほうがいいな。何ならギルドまで迎えに来てもいいが」

「え、いいんですか? それならお願いします」


 そして俺は、ノーブルの屋敷に向かった。

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