第134話「見せ物」
広場にやってくると、子供達の他に二人の冒険者がいた。
冒険者はハヤトを見つけると文句を言いながら詰め寄ってきた。
「おいテメェ! 嘘つきやがったな!」
「テメェが昨日俺たちに見せた階層パズルと全然違うかったぞ!」
そんなことを言うから、リティアが各階層のパズルを入れ替えたのかと思ったが、よくよく話を聞いていると「俺が見せた数字の並び順じゃない」というだけだった。
「俺はパズルの解き方を教えただけだ。答えなんか教えるわけないだろう」
「パズルを解くってなんだよ! 意味分かんねぇんだよ!」
「ぶふっ」
本当に馬鹿なようだ。思わず笑ってしまったじゃないか。
「テメェ! 何笑ってんだ!」
二人の冒険者は激昂し、街中にも関わらず剣を抜き襲いかかってくる。
俺はその二人の顔面に水球をぶつけた。殺傷力はないただの水の塊だ。
「ぶ、ぶふぁ⁉︎」
「ガハッゴホッ、な、なんだ⁉︎ 水?」
「こんな街中で剣を抜くな、馬鹿が。顔洗って出直してこい!」
と、言い放った瞬間、俺が今やったことを思い出す。
「あ、今もう顔洗ったのか」
うーん、なんかかっこ悪いなぁ。
そんなことを思っていると、腰にしがみついているミズクから振動が伝わってくる。
「ミズク? 笑っているのか?」
「か、顔洗ってって、洗ったばっかりなのに……ハヤトにぃ、うまいの」
う、上手いか? むしろ間違えたように思えるんだが。
そして、クロネまでも笑い出し、
「つ、つまりどれだけ顔洗っても、お兄ちゃんには相手にされないってことなのです?」
「ああ、なるほどな」
「うおおお! 何笑ってんだクソガキャアァアアア!」
そんなことを話していたからだろう、起き上がった冒険者は怒り狂って剣を振り回しながら襲いかかってくる。
「ひゃあああ、ごめんなさいなの!」
「お兄ちゃんっ!」
「人に笑われたくらいでキレるなよ」
今度は少々威力のある水球で冒険者たちの顔を洗ってやると、鼻血を出しながら男たちは倒れた。
こういう場合は放置でいいとギルマンに言われたが、広場の入り口に転がっていると邪魔だから、道の脇まで引きずって唖然としている子供達の方に向かう。
近くにいた露天の親父が、兵士を呼びに言ったからすぐに彼らはお縄になるだろう。
「みんなは、怪我とかなかったか?」
声をかけると、止まっていた時が動き出したかのように子供達が一気に話しだした。
「お兄さん、すごい!」
「カッケェエエエ!」
「怖い冒険者さんたちが一瞬でたおれたよ!」
「あれって昨日も使ってた魔法だよね!」
「もっと魔法見せて!」
その後、一通り魔法を披露することになった。
とは言っても、水魔法とごまかせる範囲で結界魔法を使った曲芸だ。
それでも子供たちはおおいに喜び、往来の人からはおひねりなのかチップなのか、色貨を投げつけられた。
子供達に当たると危ないな。
「クロネ、帽子を逆さに持って、見ている人たちの間を回ってくれ」
「はいっ」
取り巻きを一周したクロネは、たくさんの色貨を持って帰ってきた。
色貨は赤緑青と三種類あるからとてもカラフルだ。
その後、本来の目的のパズルを幼女優先——もといレディファーストで行い、全員が一問ずつ解いたところで別れを告げる。
「えーもっと解きたいよー」
「ならまた明日ここに来るんだ」
「分かった!」
ふふふ、こうやってリピーターを作ることで、俺は毎日幼女に囲まれることができるのだ!
え、ショタもいるって? 枯れ木も山の賑わいとも言うし、邪険には扱わないさ、幼女ゆ——レディファーストだけどな。
その後大量にあっても仕方がない色貨を消費する目的も兼ねて、クロネたちに果物を買い与えたりしてまったりとした時間を過ごした。
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