第133話「魔法道具店にて」
2017/8/8 魔法学園の入学金を変更しました。
100万エソ→30万エソ
2017/9/9 魔法学園の入学金を変更しました。
30万エソ→40万エソ
2017/9/11 魔法学園の通学制度を変更しました。
全寮制→任意で入寮
このお婆さんは《鑑定》を使えるということだが、クロネたちの正体が見破られたりしてないだろうか。
「そ、それって他人のステータスを覗けるアレか?」
「ヒヒッ、それは《人物鑑定》だよ。あたしのは《品質鑑定》。物の質の良さが分かるだけさ」
ハヤトは胸を撫で下ろした。
なんでも、年期の入った職人は大抵このスキルを持っているらしい。
それに対して人物鑑定スキルは、知名度は高いが持っている人が非常に少ないらしい。
「ヒヒッ、鑑定結果、全部で8万エソだよぉ〜」
高いな! 一気に金持ちじゃないか。
「ヒヒッ、すごい稼ぎだねぇ。だが、いつまでもこうはいかないよ。たくさん産出するとなったら値段は下がるからね」
政治経済で習った需要と供給曲線の話を思い出した。
ふむ、売るなら早いほうがいいのか。
「それならこいつも頼む」
ハヤトは最下層で手に入る数字入りの水晶を五つ、カウンターに置いた。
「キエェェェェェェエエエ!!!!」
婆さんがさっきよりも激しく頭を振り回し、クロネたちがびくりと肩を竦ませる。
……ほんと何なんだろうこの人。
「ヒィーヒヒヒヒヒッ! 長生きしてみるもんだねぇ、こんな水晶は見たことない! 質も文句なしの一級だよ! 水晶自体で、3万エソ、珍しさも加えると4万エソは行くね、ヒヒッ!」
な、なんだってー⁉︎
単価高過ぎだろ!
というかノーブルに売った水晶は3万エソ損してるってことじゃないか!
まあ、これで生きた絵を盗んだことに対する罪悪感を持つ必要がなくなったことにしよう。
「全部違う文字が入っているね。それが五つも! 悪いがさらに20万エソも払う金はこの店には無いよ! ヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」
後日商人ギルドを通してお金をもらうことになった。
大金ということで契約魔法で作られた書類に血印を押して確かな契約を結ぶ。
「それにしてもこの時期にたくさんの水晶があるのは助かるねぇ、ヒヒッ」
「ん、何かあるのか?」
「ヒヒッ、魔法学園の入学式だよ」
「魔法学園?」
「ヒヒッ、そうだよ。フィマフジスク市に、魔法学園があるのは知ってるかい? ヒヒッ」
「市の名前までは知らなかったが、存在は聞いたことがある」
これは嘘だ。この世界に来てから魔法学園なんて聞いたことがなかった。
だが、全く知らないというのは怪しまれるだろうから、このくらいの嘘が妥当なはずだ。
婆さんは特に不審がる様子もなく魔法学園について説明してくれた。
魔法学園はその名の通り魔法を教える学校で、フォトーシスの北のフィマフジスク市にある大きな学校だそうだ。
というより学校が丸ごと市になっているそうだ。
夏の第一月(日本の六月)の後半から夏の第三月(日本の八月)の間に長い休みがあり、翌月から新学期が始まる。
出身、身分、年齢関係なく誰でも入学することができ、その市に住んでいない人のために男女別の寮なども用意されている。
「それに水晶がどう絡んでくるんだ?」
「水晶と言ったら魔法の媒体だろう? 入学する人間はみんな媒体を持つ必要があるのさ、ヒヒッ」
やばい、魔法使いが知っていないと不味そうな話だ。
ギルマンから俺が魔法を使えることは聞いているだろうから下手をすると疑われるな。
「そ、そういえば思ってたんだが、媒体ってなんで必要なんだ?」
「そりゃあ魔力の消費を抑えるためだろう、ヒヒッ」
へぇ媒体があれば魔力の消費が抑えられるのか。
「お前さんが最後に売った文字入りの水晶を加工したら、魔力の消費は一割にまで抑えられるだろうね、ヒヒッ!」
消費が一割で済むのか。それはかなり大きいんだろう。
「お前さん、操者のくせに魔法をよく使うらしいじゃないか。どれだけ質のいい媒体を持ってるんだい?」
「いや、そこまでいいのは持っていない」
嘘は言ってない。
婆さんは「そこそこの物は持っている」という意味で取るだろうが、嘘は言ってない。
「それじゃあ地の魔力量が並外れて多いんだね、ヒヒッ」
それは違う。俺は加護のおかげで魔力量が二倍になっている。それのおかげで操者でありながら魔法を使えるのだ、と思う。
このまま話しているといつか墓穴を掘りそうだから学園の話をしよう。
「魔法学園には、本当に誰でも入学できるのか?」
「高くつく媒体を持っていて、さらに高い入学金が払えるなら誰にでも入れるよ、ヒヒヒヒヒヒッ」
「種族はどうなんだ?」
「特に制限はないよぉ、ヒヒッ」
制限はない……か。そうは言っても獣人の差別はきっとあるんだろうな。
「そんなこと聞くってことは、そこの偶人を学校に行かせるのかい? ヒヒッ」
「ひええ、ククラは人形、美味しくないよ⁉︎」
ククラは突然自分のことを言われて肩をすくませた。
気持ちは分かるが少しビビりすぎだ。ちょっと婆さんが可哀想に思えた。
しかし、婆さんは特に気にしていないのか「イーッヒッヒッ」と笑っている。
「まあ、そんなところだ。いくらあれば入学できるんだ?」
「4万エソあれば十分だよ。最初の半年が過ぎたら半年ごとに幾らか払う必要があるけどね、ヒヒッ」
むう、日本円にして40万円か。
まあ、思ったより高くはないな。
だって最下層の水晶一個で同じだけ稼げるわけだし。
「まあ、詳しい話は学園に言って聞いておくれ、ヒヒッ」
よし、次に行く町は決まったな。
まあ、クロネたちに学園に行きたいか聞く必要はあるが。
そうと決まればさっさと店を後にし、広場でパズルをしに来る幼女と遊ぶことにしよう!
クロネたちが怖がっているから聞くことを聞いたら早く店を出たほうがいい。
「ヒヒッ、また売りに来ておくれよ」
「ひぃっ!」
「ひゃあ!」
「ハヤトにぃ!」
……次に来るときはクロネたちはリティアのところでお留守番していてもらうことにしよう。
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