第130話「揺れる少女とコントラスト」
ごめんなさい、宣言してからの更新日が思ったより近くて忘れていました。
物理むずぅい
状況に付いて来れていない少女たちに、俺の謎能力のことを話した。
「なにそれ、変身できるんだ、すごい! 他の姿にはなれないの?」
「いや、さっきの黒髪ロングの女の子にしかなれないんだ」
リティアは驚きながらも、素直に受け入れてくれたが、
「それじゃあ女の子のフリをして覗きとかしてるの?」
微妙に冷たい目線を向けてくる二次元少女。
「してないしてない。クロネたちに誓って」
「お兄ちゃんは変態じゃないです!」
「なの、ハヤトにぃはそんなことしないの」
「そうだよー」
おお、クロネたちの信頼がとても嬉しい。
わざわざ覗くようなことをしなくてもクロネたちがいる……と言えば誤解を招きそうだが、実際、女性の裸なんかを見るより幼女と健全に戯れているほうが百倍欲が満たされる。
それに覗きなんて、ともすれば幼女からの信頼を失う危険性があるのだから百害あって一利なしもいいところだ。
「言わされてるんじゃなくて? 獣人なのはこの際置いておくとして、性奴隷なんじゃないの?」
「ちがうの!」
「そうです!」
「「え?」」
「へぇそっちの猫人は性奴隷なのねー」
ふんふんと頷く絵の中の少女。
「こんな幼い女の子を……」と蔑みの目で俺を見てくる。
待てクロネ、何を言っているんだ?
「え、クロネ、ハヤトにぃと……してるの?」
「え? いつもミズクも一緒に寝てますよね?」
「え?」
「え?」
「なんか話がこんがらがってるねー」
「ねー」
リティアがため息をついた。それをククラが真似をする。
「クロネちゃん、ハヤトさんに抱かれたことある?」
「いっぱいあるのです!」
「「ええ⁉︎」」
驚いた顔でこちらを見てくるミズク。
リティアはクロネがソウイウことを知らない純粋な子だと分かって言っているようだ。
なんかリティアに恨まれるようなことしたかな……。
「じゃあ今、それをやってもらってくれる?」
「ちょっとそこの妖精さん! いくらなんでもこんな一目のあるところでさせるのは」
絵の中で少女があたふたとしているが、リティアはそれをニヤニヤして見ながらスルーしている。
「お兄ちゃん抱っこ〜」
「え、お、おう」
ハヤトは、突然のことに驚きつつも、甘えてくるクロネをいつものように抱っこする。
そこでリティアの思惑が分かった。
クロネが純粋な子であることを証明しようとしていたのだ。
「え、それだけ?」
「それだけ、って何を期待していたのかな〜? 意外とエッチなんだね」
「う、うるさいっ! ちょっとした勘違いよ!」
リティアのからかいに絵の少女は必死になって言い返した。
一方で同じような想像をしていたミズクはホッとしていた。
「(よかった、先を越されたかと思ったの)」
そのミズクの呟きを聞き取れたものはいなかった。
「というわけでハヤトさーん、誤解は解けたよー」
「おーありがとうな、リティア」
そしてハヤトはようやく話の輪に戻ることができた。
「えっと、ハヤトさん、勘違いしてごめんなさい」
「おう、気にしてないぞ」
口ではそういうが、二次元少女に嫌われたかもしれないと、内心ものすごく気にしているハヤト。
頑張って溝を埋めようと決意し、名前を聞いていなかったことを今更になって思い出した。
「と、とりあえず自己紹介がまだだったな。俺はハヤトだ」
「クロネです」
「ミズクなの」
「ククラはククラだよ〜♪」
「リティアだよ」
「よろしくね! んーと私は『ブランコに乗る少女』かな」
彼女の自己紹介に場の全員が呆然となる。
「えっと、それは絵の題名か何かだよな? 君自身の名前はないのか?」
「私自身の名前? ……ないわよ」
「そうか……」
こういう場合どうすればいいのだろうか。勝手に名付けるのは彼女が嫌がるだろうしなぁ。
なんて思っていると、
「できればハヤトさんに名付けて欲しいわ。ブランコは焼かれちゃってもう無いし、新しい題名も」
意外なことに彼女の方から依頼された。
「あれ、俺のこと嫌いなんじゃないのか?」
「なんで、嫌いじゃないよ? むしろ、その、好きよ?」
上半身を少し捻って横を向き赤面する少女。
か、かわいい。さすが、絵になるな。思わず見惚れてしまう。
好かれるほど彼女に関わってないと思うんだが、なぜ好かれているのだろうか。
「約束通り私を悪い貴族の屋敷から盗み出してくれた王子様だもん」
へぇ、そんな風に思ってくれてるのか。
少し恥ずかしいな。
「まあ、女の子に変身はするけど」
顔を覚えられたくなかった上に、加護があるならそっちの方がいいからそうしたまでなんだが……。
「でも、私になってにあいつに仕返ししてくれたのは嬉しかったよ、ゾンビ怖かったけど」
えへへとはにかむ少女。絵だけあって本当に絵になる笑顔を浮かべるな。
「そうか、そんな風に思ってくれているなら名前はちゃんと考えないとな」
「よろしくね。でもエッチな題名はやめてよね。題名になっちゃうとそれをしないといけなくなっちゃうから」
「そうなのか。大丈夫、分かってるよ」
そういうのを嫌がっていたのは知っているしな。
名付けか……そうだなぁ……。
「それじゃあ、名前はアルト。題名は『歌う少女』なんかどうだ?」
絵画をドイツ語っぽく発音してアルト。そこから派生して「歌う」としたのだが安直過ぎただろうか。
「アルト……うんっ、私はアルト! そして私は『歌う少女』! 素敵な名前ありがとう! そして私はこれからハヤトさんのために歌うわ!」
そして、「ah〜〜〜」と発声練習を始める絵の中の少女、アルト。声がアルトなのかソプラノなのかは音楽の教養がない俺には分からないが美しい声音なのは確かだ。
「アルトもお兄ちゃんを好きになってくれたのです」
「だってククラたちのマスターだもん!」
ハヤトが他人に好かれることを自分のことのように喜んでくれるクロネとククラ。一方でミズクは、頷きながらまた小声で呟いていた。
「(ネーミングセンスもある……これは意外と重要なの)」
ミズクの表情も満足気だがいつも何を言ってるんだろうか。
気になるが、なんかかわいいからそのまま見ておこう。
その後、アルトをどうするかの話になり、彼女を持ち歩くのは危険だから、アルトはリティアのツリーハウスに飾っておくことになった。
「できるだけ毎日会いに来てね! そしていつか家を買ったらその家に私を飾ってね!」
「ああ、約束するよ」
独特な約束を交わす二人であった。
◇◇◇
新しい持ち主との出会いを喜んだアルトだったが、後日誰も見ていないところでは絵の背景を見つめてため息を吐くアルトの姿があった。
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