第129話「ハヤちゃん、変身する」
体育祭、文化祭も終わりいよいよ受験勉強に本腰を入れないといけない時期になりました。
十月から更新を大幅に遅くしたいと思っています。具体的には毎週日曜日かなと。
変更の可能性は十分あります。
曲がり角からその様子を覗き見ると、ノーブルの野郎がカンテラからロウソクを取って、絵に近づけているところだった。
「ひぃっ、や、やめて! 脱ぐ、脱ぐから!」
「そうじゃ、初めから言うことを聞いておればいいのじゃ」
結界があるから火を近づけたくらいじゃ燃えないのにどうして、と考えた時、さっきまでクロネたちと話していたことを思い出した。
(そうか、「怖かったら暴力」なんだ)
火が近づいてくることは人間に取っても恐怖だ。彼女の絵は一度焼かれているからその恐怖は普通の比ではないだろう。
ろうそくの上から水滴を垂らして火を鎮火させると、ノーブルは面白いように狼狽えた。
「なんじゃ⁉︎ 火が突然消えたぞ⁉︎ 暗くて何も見えん!」
まあ、少女よく見るために絵に顔を近づけていれば必然的に火にかなり顔を近づけていることになるもんな。そりゃあ目はすぐに慣れるわけがない。
パニックになったノーブルを蹴り飛ばすと簡単に倒れた。
「誰じゃ! ワシを蹴ったのは!」
「な、何が起きたの⁉︎」
すぐさま絵に駆け寄り安心させるために話しかける。
「(しー。俺だ、ハヤトだ。しばらく静かにしておいてくれ)」
「(お兄さん? でも女の子——)」
「(しー。詳しい説明は後でするから)」
「(わ、分かった)」
「そこにいるのは誰じゃ!」
何かの魔法道具なのか火種もないのにすぐに火を復活させて見せたノーブルが俺を照らす。
これは姿を見られないわけにはいかなくなったが、先ほど面白いことを思いつき、とうに幻装魔法で自分の姿を変えていた。
今の俺の姿は、水色の髪に白いワンピース——
「お、お主。絵から出てきたのか⁉︎」
絵の中の少女と全く同じ特徴だった。
「そうだよ。これでようやく仕返しができるね♪」
おっと、ちょっとテンションを上げすぎて変なキャラになってしまった。
深夜だし仕方ないよな。
「し、仕返し⁉︎」
もっとも驚きで訝しむどころではないようだからそのまま続けさせてもらおう。
騒ぎを聞きつけた見張りが何人かやってくる。
うん、知ってた。気配察知で分かっていたからな。
俺はそいつらに幻装魔法を施す。
それによって今彼らはどこかで見た映画に登場するようなゾンビに姿を変えた。
それがわらわらと倒れたノーブルのところに集まっていくのだ。
「ぎゃああああああ来るなああああああああ!」
当然ノーブルはパニックになる。
「ご主人様、どうされたのですか⁉︎」
「お気を確かにご主人様!」
「ぎゃああああああ喰われるううう! ゾンビがああああああ!」
「ゾンビ? 何を言って——ぎゃああああああああああ!」
おお、楽しそうな悲鳴だ。
ホラー映画やゾンビのアトラクションが割と好きな俺は、素直にそう思った。
おっと、ろうそくが倒れて火事になったりしたらダメだから消しておかないとな。
場の灯りが一切なくなると悲鳴は一段と大きくなった。
ノーブルさんとゾンビな従者たちがホラーを楽しんでいる間に絵を取り外し、そこに絵と全く同じ形の結界を張る。その上にさらに少女のいない絵の幻を貼り付ける。
これはもちろん、翌朝夢だと思って確認したら本当にいなくなっていたというネタのためだ。
結界は一日くらいで消えるようにしてあるから、忽然と消えた絵にもう一度驚いてもらうとしよう。
彼女の幻を貼り付けたままリティアのダンジョンに戻るとキョトンとした三人の幼女に迎えられた。
「絵の女の子なのです!」
「なんでいるの? 絵から出てきたの⁉︎」
「あれーマスターは?」
「だ、だれ?」
そこから元の黒づくめハヤちゃんの姿に戻った。
「あ、ハヤちゃんです」
「あ……」
「ハヤちゃん久しぶりー」
「だ、だれ?」
む、リティアは気づいてないみたいだ。
俺はリティアに絵を持たせ、絵に掛かった幻装魔法を解く。
結界魔法と幻装魔法の合わせ技で更衣室を作り、ハヤトに戻って着替えてから姿を見せる。
幻装魔法を使えば服を着ているように見せられるとは言っても、さすがにその場で裸になることはできない。
俺の矜持的にもそうだし、何より——
「お兄ちゃぁぁぁん」
「すごく久しぶりのハヤトにぃな気がするの!」
「ハヤちゃぁぁぁぁん」
クロネたちががこうしてすぐにひっついて来るのが分かっていたからな。
そしてククラ、今はハヤちゃんじゃないぞ。
「え、え?」
「どうなってるの?」
三人の幼女がハヤトと戯れに行く中、三次元と二次元の少女は事態に付いて行けず混乱していた。
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