第10話「テソプレ」
章管理で二章作るの忘れてました……
ギルド登録を終え、出口に向かおうとして、しかしその進路が塞がれた。
「おいおい、随分堂々と歩いてるじゃねえか」
進路を塞いだのはガラの悪い男二人だった。
(ああ、テンプレか)
まさか起きるとは思ってなかったので少し笑ってしまう。
「てめぇ、何笑ってんだ!」
「すまない、思い出し笑いだ」
「そうか、なら仕方ねぇな。あ、お前は行っていいぞ」
(あれ?)
俺はあっさりと見逃された。
「俺らが用があんのはそこの亜人だ」
男たちは俺を彼らの背後に追いやるとクロネを挟み込む形で囲んだ。
クロネは震えて二人を交互に見ている。
「人間様の街を我が物顔で歩きやがって」
「出来損ないのくせに面の皮まで厚いとなったら少し教育しなきゃいけねえな」
「ご、ごめんなさい!」
「一般人が王様の玉座座って謝って済むと思うか?
処刑だよ処刑!」
「厚かましい根性も叩き直してやんねえとな!」
なんだこいつら、聞いていたら頭のおかしい人間至上主義を唱えやがって。
冒険者は種族差別がないんじゃなかったか?
ああ、それはギルドだけか。
しかし差別禁止を謳っているギルドの中で堂々とその発言をするとは、それこそ面の皮が厚すぎて脳まで皮膚なんじゃないかと思ってしまう。
ちらりとギルドの職員を見ると、見て見ぬ振りをしていた。
一介の受付嬢にできることはないか。
黙って見ているとそろそろ気分が悪くなっていた。
「おいあんたら」
「なんだ? まだいたのか」
「そいつは俺の連れ――奴隷なんだ。だからそろそろ離してくれないか?」
「何? でも首輪が――なるほど分かった。悪かったな。おい亜人のテメェ! 命拾いしたな!」
「奴隷であることで救われるっていうのも変な話だけどな! がははははは」
男二人はあっさりと引き下がった。
あれ? なんか色々と違くね?
評判の悪い二人が絡んできて撃退して……って展開じゃないの?
まあ、俺が絡まれたならいいとしても今回はクロネだからな暴力沙汰にならなくてよかったというべきだ。
ちょうどその時ギルドに人が入ってきた。
見る限り冒険者のパーティーのようだ。
全員が人間で、亜人はいない。
「よう、カラム! ナクンセ! あんたの言った通りだった! おかげで助かったよ」
パーティーの一人が、俺達に絡んできた男達に声をかけた。
「だろう? 伊達に長いこと冒険者やってねえからな」
「また何かあったら俺たちに聞いてくれ」
「ああその時は頼むよ。それと、お礼がしたいんだけど……」
「礼なんていらねえよな! ナクンセ!」
「おうよ! お前、俺たちが情報渡した時にさらりと銀貨置いてっただろ! 無下に突き返すことはしねえがああいうのは別にいらねえかんな!」
「じゃあ、酒でも奢らせてくれよ」
「そういうことなら仕方ねえな!」
「酒なら仕方ねえ! 俺たちは大の酒好きだから、酒の話を出されたら飛びついちまう!」
「それじゃあ、クエスト結果を報告してくるから、また後で!」
「「おう!」」
そう言ってパーティーの男はギルドのカウンターに向かった。
なかなか……と言うより、かなりいい人たちじゃないか?
見たところ信頼も厚いようだし。
クロネに絡んできたからチンピラかと思ったが、もしかして人間はみんな亜人に対してああなのだろうか。
後で聞いた話によると、カラムとナクンセは超亜人嫌いのベテラン冒険者として有名らしい。
ギルド職員が何もできないのも、彼らがちゃんとした実績を残して今もなおよくギルドに貢献してるから出そうだ。
実力主義を亜人を差別しない理由として掲げ、世間の批判を受け流しているそうだが、本末転倒だな。
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