第112話「ツッコミ」
遅れてすみません!
最近遅刻ばかりですね……
次の日、思い至ったハヤトは、ギルドにウェイストの六階層までたどり着いたことを報告しに行った。
「ええ⁉︎ ウェイストの五階層まで突破した⁉︎」
窓口の童顔のお姉さんが大きな声を上げた。
それにしてもまだウェイストと呼んでいるのか、あそこはパズルと呼ぶべきダンジョンだぞ。
まあ、それは隠しておいたほうが、他人に踏破される心配が減るから言わないが。
「おい、声が大きい」
「す、すいません。でも、本当ですか?」
「ああ、因みに一階層の地図がこれで、二階層の地図がこれだ」
クロネがクレヨンで描いたかなり精巧なダンジョン内の地図を見せる。
「は、早すぎですよ。取り敢えずギルドから調査員を向わせて真偽を確かめた後、報酬を支払いますね」
「報酬?」
「ええ、地図の代金だと思ってください」
「ああ、わかった」
クロネが描いたものを勝手に売ることになってしまった。
ギルドを出た後、クロネに謝った。
「せっかくクロネが描いた地図を売ってしまって、すまん」
「え、でも、あれハヤトお兄ちゃんが写したやつじゃあ……」
そうだ、先ほどギルドに渡したのは、昨晩俺が別の紙に写した地図だ。
だが、それはクロネが元の地図を描いてくれたから出来たことだ。
「そんな、奴隷がしたことは主人の成果です」
そうは言っても俺は納得できない。
「よし、今度服を買ってあげよう」
「もういっぱいありますよ!」
お、クロネからツッコミが来た。
前より遠慮がなくなったようで嬉しい。
「ククラもお洋服欲し〜い」
そういえばククラにはまだ一着も買ってやってなかったな。
セメカインストやサムーラトには古着屋しかなく、聖水+ロリ整然の効果で汚れもなく常にいい匂いがしているから先延ばしにしていた。
と言うかもともと王都に着いたら三人に服を買ってやろうと思っていたんだった。
ダンジョンに浮かれて忘れていた。
よって急遽服屋巡りとなった。
ククラを文字どおり着せ替え人形にしていると、やはりワインレッドが似合うということがわかった。
長い金髪にワインレッドがよく映えるのだ。
最終的に買ったのは、首元にレースのあしらわれた前開きのワインレッドのシャツに、縦筋の入った紺色のスカートだ。
普通のシャツもあったのだが、そこはククラが前開きがいいと言い張った。
試着の際、俺がボタンを留めてやったのがお気に召したようだった。
着替えるときは毎回手伝わされそうだ。
クロネとミズクは十分持っているからこれ以上はいいと言っていた。
だから追加で三人分の寝巻を買うにとどめておいた。
「ハヤトにぃ……」
「うう、お兄ちゃんの負担が大きくなるのです……」
「気にするな、お金は余ってるんだから。それに寝巻はもともと買うつもりだったしな」
真っ赤な嘘である。
お金はあと30万エソは残っているからこちらは嘘ではないが、寝巻は先ほど目に入って思わず買っただけだ。
だってネグリジェだぞ、ネグリジェ。
幼女たちに着せたらきっと、いや絶対かわいい。
それにこの世界の市民はあまり寝巻と普通の服を分けたりはしないようだから今までそれに従っていたが、睡眠用の服が別であったほうがいいだろう。
決して、クロネたちが着替える機会が増えることを期待しているわけではない、ということをここに断っておこう。
その晩は、何日かぶりにヒールを鼻に使った。
裸足の妖精たちに囲まれてとっても幸せでした、まる
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