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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
五章「サムーラトの村」
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第105話「部屋に戻ると、」

遅れてすみません!

宿に戻って荷物を降ろし、ベッドに腰掛ける。


「よしクロネ、いいぞ——ってうわ⁉︎」


「むうむうむうむうむ〜〜」


凄い勢いでクロネが飛び込んできて、ハヤトはベッドに押し倒されてしまう。


そしてクロネはグリグリと頭を押し付ける。


「クロネ甘えん坊ー」


まさにククラの言う通りだった。


そんなに甘えたかったのか?


「クロネそんなに——ガッ⁉︎」


いつにもなく甘えてくるクロネを落ち着かそうとすると、彼女の頭が俺の顎に当たった。


かなりの傷みが顎に走る。と、同時に舌も噛んだ。


「ああ! お兄ちゃんごめんなさい!」


クロネが甘えるのをやめて謝ってくるが、俺の事はどうでもいい。


それよりも、


「ごめんな、クロネは痛くなかったか?」


「う、うん」


ならよかった。


しかし、俺に頭をぶつけてしまったことで、クロネの甘えは収まってしまった。


「ごめんなさい、お兄ちゃんがわたしのために急いで帰ってくれたのが嬉しくて……」


あちゃー、クロネにはバレていたようだな。


まあ、それで喜んでくれたなら結果オーライだ。


「本当は甘えたかったらどこでも甘えさせてやりたいんだけどな……一応奴隷だし……」


俺が外聞を気にしているから、クロネは甘えることができないのだ。


しかしクロネが奴隷じゃなくなればいいかと言うとそうでもないんだよな。


奴隷のように、誰かの所有物でないとなると、獣人差別の魔の手が伸びてくるし、差別の対象である獣人と仲良くしている俺も、世間からいい目では見られないだろう。


奴隷から解放した時の方がデメリットが大きいから、できれば奴隷から解放したくない。


と思っていた矢先、


「そのことなんですけど、わたし、奴隷をやめたいです」


クロネが意外なことを言った。


どういう心変わりだろうか。


「理由を教えてくれるか?」


「わたし、お兄ちゃんとずっと一緒にいたいんです」


「?」


繋がりが見えないぞ?


「なんで奴隷じゃなくなることが一緒にいられることに繋がるんだ?」


「その……わたしもハヤトお兄ちゃんのお嫁さんになりたいから……」


……今日三度目だけど、もしかして俺は夢を見ていたりするんだろうか。


頬を抓るが、夢ではないようだ。


奴隷をやめたい理由は分かった。奴隷と結婚なんて普通はおかしいからな。


だがどうして急にそんなことを?


「どうして俺のお嫁さんになりたいんだ?」


「ククラちゃんが、最後まで一緒にいるのはお嫁さんだって……」


ああ、そういうことか。


「結婚は……クロネが小さいうちは無理だが、奴隷からならすぐに解放してやろう」


普通の獣人になってしまうことに不安が残るが、クロネの思いが優先だ。


彼女にいちゃもんをつけてくる奴は、俺が痛い目に遭わせてやればいいだけのこと。


「お兄ちゃん、それは大きくなったら結婚してくれるってことですか?」


「ん? ああ、大きくなっても——」


「っわ、わたしの気持ちはずっと変わらないです!」


凄い勢いだった。


「そ、それじゃあ、結婚できる歳になったらな」


「はい! それと、その時まではずっとお兄ちゃんの奴隷でいます!」


「あ、ああ」


クロネのやる気が凄い。いつにもなく、感じる気配も強くなっている。


「じゃあクロネともずっと一緒だね〜」


ククラが嬉しそうにそう言う。


この二人も結構仲が良くなっているからな。


幼女が笑いあっている光景は、とても目に良かった。


ミズクにも期待してしまったが、それは欲張りすぎというものだ。


ミズクは、梟人の種を途絶えさせないという人生の目標があるから、俺とずっと一緒にいることはないと思う。


しかし俺は、その時まで彼女を守り抜くだけだ。


その日は、そのまま夕食までクロネたちとのんびりして過ごし、些事を済ませて眠りについた。


その晩のじゃんけんの結果については、


クロネ:人

ミズク:人

ククラ:剣→勝ち


クロネ:剣→勝ち

ミズク:人


だった。


「またハヤトにぃの隣じゃないの……」


割と負けることが多いミズクが半泣きになっていた。


ごめんなミズク、幼女どうしの決め事に口を出すことは出来ないんだ。


せめてもの情けとして、就寝前のじゃんけん大会でミズクが勝った時には精一杯可愛がってやった。



◇◇◇



次の日、ルーが俺達の宿にやってきた。


もちろん俺が停まっている宿を教えたからだが、その後ろにホークさんがいた。


うちの娘はやらんぞ、的なことを言われるかと思ったがそうではなく、また馬車の護衛を頼めないかということだった。


「行き先はどこだ?」

「王都です」


セメカインストに戻るようなら断らせてもらおうと思っていたが行き先がちょうど王都だったとは。


こう言うのを諺で何て言うのだったか、

泣きっ面に蜂の逆……そう、渡りに船だ。


「ちょうど俺も王都に行きたかったんだ。その依頼喜んで受けさせてもらおう」

「やったー! 今度もハヤトさんと一緒だー!」


ルーが手放しで喜ぶ。


その後報酬の話をし、出発日は二日後と伝えられた。


準備はほとんどすることがないから、サムーラトを発つまでの間は採取依頼をこなして過ごした。

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