第103話「お願い①」
それからは、村の周りの森で受けられる採取依頼をして過ごした。
クロネたちは討伐依頼より採取依頼の方が喜ぶ。
「だって、採取はお兄ちゃんの役に立てます」
討伐は俺が一人やった方が効率がいいとクロネたちは感じているようで、戦闘力が関係してこない採取の方が足を引きずらないと思っているようだ。
俺が強いのはクロネたちが近くにいるからなんだけどな……
それを言っても信じてくれないくて、むしろ俺の株が上がっていくのが今の現状だ。
とまあ、話が逸れたが、採取依頼となるとクロネたちのやる気は凄いことになる。
「たくさん見つけたらハヤトにぃが褒めてくれるの」
と言うことらしい。
クロネは、やはり周りをよく見ているから、生えている草とかにもよく気が付くし、ミズクも子供の頃から採取をしていただけあって、見るべき場所がよく分かっている感じだ。
対して俺とククラは、あまり見つけられない。
まあ、気にしないことにしているけどな。
そんなのわけで一日に五、六件の採取依頼をこなし、ルーとの約束の日までの三日間で約3000エソ稼いだ。
その間に馬車で半日くらいの距離に王都が存在することを知った。
王都に行ったら頑張ってくれるクロネたちにしっかり還元してやろうと決めた。
ちなみに王都に行くことについて三人に意見を聞いてみると、
「マスターが一緒ならどこでもいいよ~」
ミズクとクロネもククラと同意見のようだった。
そして行くことになった王都だが、どうやらダンジョンが存在するという話だ。
それも一つではなく、六つもあるらしい。
ダンジョンから産出する資源で栄えている都なのだそうだ。
それを聞いてますます王都が楽しみになったのは言うまでもない。
◇◇◇
約束の一週間が経ち、ルーに会いに行った。
「ハヤトさん久しぶりー! 会いたかったよー!」
ルーは、ハヤトの姿を見つけるや否や走ってきて飛びついた。
彼女の母親であるパドラは、娘の行動に申し訳なさそうな顔をしていた。
「久しぶりだな。一週間頑張ったか?」
「うんー!」
「それは凄い頑張りようでしたよ」
聞くと、自信満々に頷く。
パドラさんは柔和な笑みを浮かべながらここ一週間のルーの頑張りを教えてくれた。
もともと朝に弱かったルーだが、ハヤトとの約束を守るため、毎朝日の出と同時に起きたり、洗濯や洗い物をやったり、料理のお手伝いまでしたそうだ。
それを聞いたハヤトは、まさかそこまで頑張っていたとは思わず、ルーをまじまじと見てしまった。
「ルーちゃん、すごく頑張ったんだな」
「えへへ~。じゃあ……お願い事聞いてくれる?」
上目遣いで尋ねるルー。
「ああ、もちろん」
頑張った彼女との約束を違えるハズもなかった。
ハヤトがそう言うと、彼女は「じゃあ、お願いするね」と改まって、もじもじし始めた。
恥ずかしがる理由が思い当たらないハヤトの関心は、自ずと高まり彼女の次の言葉に疑問と期待が募る。
ルーがその幼い唇を開いた。
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