第8話「ファマーチストの街」
二章突入しました。
街で活動します
二章からは原則1日1話投稿にする予定です
クロネの案内を聞きながら街へ向かうこと2時間と少し。
街の入り口に着いた。
「うん、明らかに体力も伸びてるし、足も速くなってるな」
俺は、加護 《このロリコンどもめ!》の凄さを体感していた。
「すごい……馬車でも3時間は掛かる距離なのに……」
俺の腕の中からクロネの驚く声が聞こえた。
ちなみにクロネが掛かる時間を分かっているのは、空間把握スキルのおかげだ。
空間把握で距離を把握し、馬車での移動には慣れているらしく、これくらいの距離ならこれくらい時間がかかると分かるらしい。
「それもわたしを抱えながら……」
「クロネは軽いからな」
クロネは俺にお姫様抱っこされているが、羽のように軽い。
クロネ自身も痩せ気味で軽いのだけど、加護の力で筋力も倍になっているのがかなり大きい。
途中で何回か休憩したが、回復も早かった。
「さて、さっさと街に入って寝床を確保しよう」
まずは中に入るため関所にいく。
「身分証はあるか? あれば50エソ、なければ200エソだ。もちろん一人分だ。二人ならそれぞれ100エソ、400エソだ。亜人も頭数に入る」
剣を帯びた甲冑の兵士はちらりとクロネを一瞥して言う。
「この子は奴隷なんだが」
「なら一人分でいい」
俺は、銀貨二枚支払った。
もともと大したお金を持っていなかったが、これで所持金が300エソになってしまった。
奴隷に人権はなく物扱いという考えは気にくわないが、この時ばかりは助かったと言える。
「珍しいな、身分証を持っていないのか?」
「ああ、この街で作ろうと思ってな」
嘘は言ってない。
「そうか、冒険者ギルドなら入ってすぐのところにあるから、急ぐならそこで作るといい」
「わかった。ありがとう」
礼を言って街に入る。
俺はワクワクしていた。
異世界に来て最初の街だ。興奮して当たり前だろう。
街に入ると、煉瓦造りの街並みが目に入った。
地面は石畳で舗装され、見えるところでも三つ馬車が停まっていた。
「おお、さすがファンタジー」
ただの西洋風の街並みだが、単純な俺はそれで十分だった。
だって水色とか赤色の髪の毛ってコスプレ以外で見たことないもん。
「――っと、まずは身分証からだったな」
冒険者ギルドは言われていた通りすぐ近くにあった。
3メートルはある大きな観音開きの扉が内側に開かれ、
二つの剣を交差させた紋章があったので雰囲気でここだと分かった。
それにこの建物だけ二階建てで、酷く目立っていた。
俺はクロネを連れて中に入る。
中に入ると汗と鉄の匂いがした。
しかし思っていたよりも人が少ない。
少し見渡し、カウンターの向こうで話している二人の女性のところに向かう。
どちらも美人だ。
これが異世界の標準なのか、それとも受付に美人を置いて印象を良くしているのか。
「ちょっといいか、冒険者登録をしたいんだが」
「あ、はい分かりました」
女性はすぐに話を止め、こちらに向き直った。
「冒険者登録ですね。こちらに必要事項をお書きください。質問があれば何でもお申し付けください」
「奴隷の登録はできるのか?」
「はい可能です」
「じゃあもう一枚頼む」
「はいどうぞ。他に何かありますか?」
「いや、ない。ありがとう」
俺が紙を受け取ると、ちょんちょんと服の裾が引っ張られた。
クロネかと思ってみると、違った。
「お兄ちゃん、代筆させて? 2エソでいいから」
なるほど子供の小遣い稼ぎか。
これは女神に言葉について尋ねた時に教えてもらったことだが、イロエリスで一般的に使われている文字は、神聖文字と呼ばれる文字で、文字を知らない者でも単語が持つ意味を拾って読むことができる。
俺がステータスを読めるのは、ステータスが神聖文字で書かれているからだ。
しかし、書くとなると話は別。
神聖文字を勉強して使えるようになると、神聖文字スキルを習得する。
つまり神聖文字を書ける人はみんな神聖文字スキルを持っているのだ。
さて、俺は人間の一般人と同等となるように送られたから共通語は話せる。
そこは問題ない。
しかし、人間の使っている文字は神聖文字だけで、
神聖文字を書くには神聖文字スキルが必要で、
俺がこの世界に来る時、貰うことを許されたスキルの数は2個。その2個はヒールと水魔法スキルに割り当てた。
長々と語ったが、つまり何が言いたいかというと――
俺は文字が書けないのだ。
※4/29ルビ追加しました。みんな大好きヒエログリフ。だってロリが隠れてるから。
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