第100話「結界の間違った使い方」
とうとう100話です!
ここまで来るとは思ってなかったなぁ……
ほとぼりが冷めて思ったことが幾つかある。
一つは、このまま村に戻っていいのだろうかということだ。
もう一つは、クロネたちはなぜこうなった俺をすんなり受け入れられたのかということだ。
こちらの理由によっては一つ目の問題が解決するんだが……
「王子様がねー、カエルにされちゃうお話があるのー」
「なの。この前幽霊のお屋敷で読んだの」
ホーンデットマンションで童話を読んでいる時に、そういう物語があったらしい。
その物語では悪い魔女ではなくトリックフェアリーが王子様に魔法をかけるそうだ。
堕落したとはいえ元々聖霊だったというし、そんな力を持っていても不思議じゃないから空想とも言い切れないのがこの世界だ。
「マスターもちゅうしたら戻るかなぁ」
「ガタッ」
おいクロネ、その音どっから出したし。
障壁で作った椅子は動かないんだが、どこか身体をぶつけたりしてないか心配だ。
「お兄ちゃん、ちゅうしてみましょう!」
何を言い出すんだこの幼女は。
絵面が百合になってしまうじゃないか。
迫ってくるクロネを抑えながら、
「ま、まあもうしばらくはこのままでいようと思う。せっかくの機会だしクロネたちと同じ目線で過ごしてみるのも悪くない」
そう言うとクロネは、残念そうであったが引いてくれた。
「でも、やっぱりこのまま村に戻ると問題がありそうだな。準備もあるし夜営しようか」
宿に前払いしたお金が無駄になるが、この際仕方がない。
「ええー、お兄ちゃんの枕になれないー」
「ごめん、また今度な」
「じゃあ約束ー」
「「ゆーびきーりゆーびきーり、嘘ついたら夜道は背後に気をつけろー、ゆーびきった!」」
ククラは指切りができて楽しそうだった。
◇◇◇
夕ご飯はムシュラウルフの肉を焼くことにした。
人魔大全によると、食べられないとは書いていなかったが、ムシュラ茸の時のこともあるから念のため結界で匂いが出ないようにする。
それから、みんなで食べ始めたのだが、クロネたちはじーっと俺の方を見ていた。
「どうした? 食べないのか?」
「ハヤトお兄ちゃん、すっごくかわいいです!」
「なの!(こくこく)」
「マスターかわいい!」
「……」
俺は、つい苦笑いになってしまった。
かわいいって言われてもな……褒め言葉なんだけど素直に喜べない。
かわいいと言っている三人の方がかわいいしな。
最終的にハヤちゃんとまで呼ばれるようになってしまったが、まあ、彼女たちの好きにさせよう。
その後、結界を張って眠ることにする。
結界は、当たり前だが不滅ではなく、ある程度耐久できる範囲がある。また小さな攻撃でも何度も受けると消耗しやがて壊れる。
しかしムシュラウルフの攻撃を何度も食らっておきながら、俺の結界はほとんど消耗していなかった。
だから、安全と判断したのだ。
だが、
「硬いな」
せっかくだから障壁を地面に張って汚れないようにしようと思ったのだが、いかんせん床が硬くて寝られそうにない。
障壁って何も硬いばかりが障壁じゃないよな。
勢いを殺す、弾力のある障壁があってもいいはずだ。
そう思って試してみると割と簡単にできた。
「わーい」
スプリングマットレスくらいの弾力を頑張って再現すると、ククラが楽しそうに飛び跳ねる。
結界は完全に無色透明で、屈折率もゼロなため、範囲がわかるように中に水を入れているのだが、跳ねるたびにそれがちゃぽんちゃぽんとなる。
トランポリンのようにして遊んでいるククラは、それによってさらにテンションが高くなっている。
「ククラ、明日もっといいのを作ってやるから今日はもう寝よう」
「わかったー」
うん、素直でよろしい。
それから場所決めが始まった。
クロネもククラもやる気満々だったが、ミズクはあまりやる気がなさそうだった。
いつもは負けてあんなに悔しそうにしているのにどうしたんだろう。
気にはなったがクロネとククラの方で問題が起きたからそれどころではなかった。
「クロネはハヤトにぃの上で寝ます!」
「ククラは下~。マスターも女の子になったから普通に下でも重くないよね」
「おいおい、それだと縦に積み重なることになるぞ」
結局ジャンケンになり、ククラが勝ってしまったことで、俺はククラの上で寝ることになった。
相変わらずジャンケン強いよな。
いつものように心を鎮める口実がないから、その晩はなかなか寝付けなかった。
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