第97話「忘れていたこと」
結界魔法で椅子と机の代わりになるものを作り、みんなでムシュラ茸を食べる。
ムシュラ茸は、肉の脂をよく吸い込んだきのこのような味がした。
噛むと、甘みのある肉汁が口の中に染み出す。
そういえば狼の方も食べることができるのだろうか。
そう思いながら口を動かしていると気配察知にこちらに向かってくるムシュラウルフの気配が引っかかった。
たまたまこちらに移動しているのが範囲に入って来ただけだろう、と思っていたが、どうもそういうわけではなさそうだ。
さらに、ムシュラウルフがもう一匹気配察知に入った。
一匹、また一匹とこちらに向かうムシュラウルフが増えていく。
「何が起きている?」
「ハヤトお兄ちゃんどうしました?」
「たくさんのムシュラウルフがこちらに向かって来ている」
「ええ⁉︎」
「な、なんでなの⁉︎」
「ああ! マスター! 思い出したよ!」
ククラは慌てて叫んだ。
「ムシュラ茸を焼くときは匂いが広がらないようにしないといけないの! ムシュラ茸が焼ける匂いに他のムシュラウルフが集まってくるから」
「ククラ、遅いのです!」
「もっと早く思い出すの」
「ううー、ごめんなさーい」
「ククラを責めるのは間違っているぞ。確認しようとすればできたのにしなかったのは俺だし、焼いたのも俺だ」
「マスタ〜」
ククラが弱々しい顔になって引っ付いてきた。
「まあ、多分倒せるだろう」
さっきまでは意図的にロングナイフだけで戦っていたが、水魔法や結界魔法も使えば相手が出来そうな気がする。
「とりあえずお前たちはここから動くんじゃないぞ」
クロネたちを一ヶ所に集め、結界で周囲を囲う。
幼女を閉じ込める趣味はないから、内側からなら簡単に外に出られるようにしているため、出ないようにと念を押しておく。
と、ちょうどムシュラウルフが姿を見せた。
「キューブ!」
すかさず結界に閉じ込める。
攻撃を加える間もなく、別のムシュラウルフが飛びかかってきたが、それもすぐに結界に閉じ込める。
「きゃああああああ!」
ククラが悲鳴を上げた、次々と飛びかかってくるムシュラウルフを結界に閉じ込めながら振り向くと、二、三匹のムシュラウルフが結界に張り付いていた。
どうやらククラは、驚いて悲鳴をあげてしまったらしい。
ミズクが結界の中から腰の入った槍の一撃をムシュラウルフに加えている。
安全な所からの一方的な攻撃。
ミズクたちには戦わせるつもりはなかったが、あれなら彼女たちが怪我をすることは無さそうだ。
狭くて動きにくそうだから、外側にもう一つ結界を張っておくことにしよう。
「結界をもう一枚外側に張った。内側のムシュラウルフが片付いたら一つ外に出るといい」
「「はい!」」
さて、そうこうしてるうちにもどんどん箱詰めウルフが出来上がっていくんだが、気配察知によると、こちらに向かっているウルフは減って来ているようだ。
それから30分くらいでムシュラウルフの襲撃は収まった。
「すごい光景なのです……」
「多分誰もこんな光景見たことないの……」
「うじゃうじゃしてるね!」
途中から結界を張れるスペースが無くなってきたため少しずつ移動して箱詰め作業をしていると、終わった時には一帯が箱詰めウルフで満たされていた。
「ミズクたちは何体倒した?」
「三体なの」
「ククラ、レベル17になったよー」
おお、順調に上がっているな。
「じゃあ、こいつらを片付けていくか」
ヘヴィウォーターの水球を撃ちこむと、三発で倒れた。
一匹ずつ倒すのも面倒だから、八個の水球を同時に作ってそれぞれ三回ずつ打ち込んでいく。
中には二発で倒れているのもいたから、その場合は別のやつにぶつける。
しかし魔力が全然なくならないな。
何故か魔力量がかなり多くなっているせいだろうな。
『《ロリコン》のレベルが上がったのです』
三十匹ほど倒すとレベルが20になった。
節目というイメージがあるが、新しい加護を会得したりすることはなかった。
だがまだ五十匹は残ってるんだよな……
これ、もう一レベは上がるだろうな。
全て始末し終えると、やはりレベルアップコールが響いた。
『《ロリコン》のレベルが上がったのです』
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