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2話 鳳林家の鉄則

鳳林家のルール。そして両親のことなど。ちょっとシリアス。かも。

「ただいまー。・・あれ、兄貴のやつ帰ってきてるし。」

「ホントだ! ただいま我が家、そしておかえりお兄ちゃん!」

「おー。」


鳳林慶次、通称よっしー。私の5つ上のお兄ちゃん。

立派に社会人やってます。

最近忙しくて家に帰ってくる時間が遅かったんだけど、今日は早いみたい。


「月見してたのか、いいなぁ学生はー。」

「つい最近まで学生してたろお前も。」

「あん?幸洋、おまえいつの間にそんな口聞くようになったんだ、ええ?」


今8時ぐらい。兄ちゃんも揃って私は嬉しかったんだけど、幸洋はそうじゃないみたいで。


「年が離れすぎるのも仲悪くなるのかー。」

「だな。俺としては、弟くんともぜひ仲良くしたいんだけどねー?」

「はっ、誰がお前なんかと仲良くするもんか。」


口を開けばいつもこう。

私はお兄ちゃんと幸洋それぞれ仲いいんだけど、二人はなぁ。


「そうだ、団子!団子食べよう!」

「「へーい」」



ささっと手を洗って、団子を盛り付ける。

そして、写真をパシャっ。


「うん、いい出来。」

我ながらよく撮れた。優越感というか、感慨に浸っていると・・。


「秋の写真展覧会にはどれ載せるんだ?」

「幸・・、そこから覗くのやめてよー。」

「えー、昔いつもここからだっただろ?」


にやけた顔して・・はあ・・。

昔は、となりに背伸びして立って一緒に写真を眺めてたのにっ!

今じゃ、屈むようにして私の隣に立つ。。

それがなんか無性にドキドキするシチュエーションで・・・。


「椅子に座りなさいよ、全く。」

「へいへい。」


「仲がいいことで~、えー、とりあえず酒飲んでいい?」


我が家鉄則その1。

お酒を飲む時は、必ず家族全員に了承を得ること。

なんでも、酒を飲むと酒臭くなったり性格変わって近所に多大な迷惑をかけるかもしれないということ。

その度いち早く対応しやすいように前もって知らせるためだ。

「いいよ~」


ただし、一人でも反対者がいれば・・


「ダメ。」

「幸、お兄ちゃん疲れてんだよね。飲ませて、ね、お願い」

「ぺっ」


さぞかしムカつくだろう。

まあ、基本的に幸ちゃんは徹底的に嫌いな人には態度悪いから。


「わーった。いいもん、もういい。俺氏、那沙美と飲んでくる」


肩に腕を回され、無理やり別部屋へと移動させられそうになる。


「お、おま、姉ちゃんまだ未成年だぞ!?」

「はー、これだからガキは。多少酔ったって、構わん構わん、捕まらないから。


それと。


 "酔いしれた姉ちゃん"見たいだろ?」


ファッ!?


なんでそうなる。幸ちゃんが私の酔ったところ見ても何も面白くないのに。


「そうだなー、あまり興味はないな。」


ですよね、そうきますよね、ええ分かってましたとも。

でもまだ続きがあった。


「まあ、酔って下僕になれるっていうんだったら飲ませてもいい」

「ってちょっと!?お兄ちゃんじゃなくて何で私に飲ませる話になってんの!?」


私飲まないからね!!!


話の盛り上がりを途中で折り、とりあえず、お兄ちゃんは飲んでよし!ということになった。


団子を食べながら、ゴミ出しの当番があることを思い出した。


「んあ!ほみはひあふのあふへへは」

「「ちゃんと食べてから喋りましょう。」」

「・・んぐ」


我が家鉄則その2。

食べ物を口に含んである間は何があろうと口を開くな。


それは結構わかりやすい。うん。なんか聞き取れないしね。

てか二人同時に突っ込むってやっぱ仲いいんじゃ・・・。


「とりあえず幸、行っとけよ。」

「えー・・・なんで俺なんだよ。兄貴だろ今日は」

「え、昨日したし。」


これで聞き取れる上、会話中いつも喧嘩腰なふたりがすごいと思う。



「・・・おほん、食事中は喧嘩するべからず。楽しく会話しましょう」


我が家鉄則その3。

食事中、喧嘩しないこと。

雰囲気が壊れれば、家族同士の絆が壊れやすくなるとのこと。


「そうでしたねー。あはははは、ごめんね兄貴ーあはは」

「全く謝罪の念が感じられないんだけど、まあいいかーカッカッカ」


棒読みで笑われても対応に困るんだけど。



プルルルルル、プルルルル


突然の電話。

実はここでもルールがある。


「「「出さんが負けの一回勝負の文句なし!」」」


「ちっ、負けた。」

「「いえーい!」」

今回は弟の敗北。


我が家鉄則その4。

電話に出るときは、公平に、じゃんけんで即決。

まあ本来なら近い距離にいる人間がとるんだけど、今回は同じ部屋にいるということで。



「もしもし。鳳林です。」


電話、上手く取れるようになったなぁ。

しぶしぶ重い腰をあげて電話を取った幸の成長ぶりを垣間見た。


「あー、その件でしたらー・・」


ちらっとお兄ちゃんの方へ目線を向ける。


「少々お待ちを。・・兄ちゃん。水道屋さんから」

「げぇ、マジかよ」


うーん。よそ行きの言い方だな。"兄ちゃん"だって・・!

あはは、笑える。心の中で笑っとこう。

そんなことを思ってたら幸ちゃんの可愛い顔で睨みつけられた。




「はい、お電話変わりました鳳林慶次ですー・・」


静かに待機する私たちは、こっそりお兄ちゃんのお菓子を食べていた。


「うお、マジっすか。分かりました。はい。はい。では」


「「なんて?」」


まさかの


「税上げに伴う水道代の価格あげ・・・だってよ」


まじかーーーーーーーーー。

ついに来たか。

税上げ、それはもうどこの家庭でも嫌になる言葉。

服や本や日用品などの費用、そして光熱費がそれに伴い上昇する。

仲のいい水道屋さんから、わざわざ連絡が来るのも、訳あってのこと。


「まあ、大丈夫。私バイト頑張るから。」

「・・・そうか。面倒、かけるな。」


我が家鉄則その5。高校生になったもの、皆バイトに励むべし。

理由は簡単。生活を楽に、いや生きていくためだ。


「ちぇっ、俺も学校じゃなくて働きてー」


幸、家族思いだから、余計辛いんだよね。

ふてくされちゃったのは、自分だけ高校生じゃないから働けないのが悔しい。

おおよそそういうところだろう、と私はふむ。



「にしても、なんで我が家には鉄則があるんだろう。」

「さーな。まあ母さんの決め事だし、言いつけ聞かないと天罰下りそうだしな。」

「その本人が居ないっていうのが何だかなぁ。」


私とお兄ちゃんはちょっとふてくされてる幸洋をよそに、

庭から見れる月を眺めて話していた。


「お父さん、あれからどうしてるかなぁ。」

「んー。何やってんだろね、あの人。まあ俺はどうでもいいんだけど。」

「え・・!?」


若者にしては珍しく、日本酒好きなお兄ちゃん。

片手に持った盃に入ったきつめの酒をくいっと呑み込む。


「俺は、お前たちを置いてったオヤジが憎いんだよ。どうやっても好きにはなれねぇ」

「お兄ちゃん・・。」


お父さんはエリート会社に勤めていて、それはもう出世しか考えていないような人だった。

でも、ある日を境に仕事をやめて、家を出てったんだ。

幼い私たち3人を残して。


「月がよく見える日でよ。そういえばこの時期だったか。オヤジの背中追いかけて、

"俺たちはこれからどうすりゃいいんだ!"って聞いたよ。けど案の定無視。」


所詮、中学生だったとは言え、ガキがいうことなんて聞きたくなかったんだろうよ。


そういう兄は、すごく、寂しげな目をしてた。



「俺さー、父さんの顔覚えてないんだよね。」

「幸ちゃん・・復活したの。」

「まあ、そんな深刻な顔されて話されてたら興味湧くだろ。」



当時お兄ちゃんは15歳、私は9歳で、幸洋は3歳だった。

それはもう一家慌てまくって、一家の大黒柱が蒸発・・なんて、私にはまだ分からなかった。

けど、お兄ちゃんは一番年上だから、きっといろんな重荷、背負ってたんだなぁって。


「まああれだよな。母さんもふっとどっかに行ってしまって、ここまで生きてこれたことが奇跡だわ。」

「お兄ちゃんのおかげだよ!! 親戚のあちこちに回って、頭下げて、

 私たちの面倒見てくれる人見つけてくれなかったら、今頃私たち・・・。」

「・・・。悪い。こんないい月夜にこんな話、似合わねぇな。話、変えよう」


そうだね、と相槌をうち、再びカメラを手にする。

裏山で撮った写真はほぼぶれまくってて使い物にならなかったから、


「お兄ちゃん、デジカメ持ってる?」


お兄ちゃんにデジカメを借りて、セルフタイマーを使って集合写真を撮ることにした。


「月をバックに家族写真か。いいな」

「でしょ? じゃいくよー。ほいな!」


5,4,3,2,1, ピー パシャッ



優しく大きなお月様が私たちを包み込んでいるかのようだった。

次回こそあいつを出します、ええ。。

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