池田恒興と佐久間盛政
丹羽の首を信長が切り落とした。一切のためらいもなく慈悲を込めて。
「行くぞ。かたじけない、丹羽よ。俺は神を地に落とす。」
その言葉に柴田は、
「そこは俺たちと言ってもらわんと。わしらも丹羽殿も信長様とともにあるんですから。」
と言って胸を張る。嬉しそうに「そうだな。」と信長は言い、消えていく丹羽を見届け牢屋を出ていく。
一歩出れば外には鬼の群れがあった。黒い人型の影のようなものだ。ただ、地獄にいるものだから鬼だと思ったのであろう。
「行くぞ。」
みじかく、それでいてはっきりと言い、織田軍の進軍が始まった。しかし多勢に無勢。明らかな劣勢になった。もとより勝ちなど狙ってはいないのだが。目標はここの突破。一番層の薄い地点を見定めての突破である。何とか抜け出すも逃げ切るには距離を開けなければすぐ追いつかれてしまう。
「信長様ここは私にしんがりを任せて先へお進みくだされ。」
「そういうことならこの俺も残ります。」
と池田と佐久間が背を向け言う。信長が何かを言いかける前に光秀は、
「行きましょう。」
と無理やり信長を進ませる。
「必ず追いつきますから。気にせずに。」
そう池田は念を押し、池田と佐久間は敵中へと特攻を仕掛ける。2人は善戦した。
多少の足止めにしかならないことは分かっていても引けないときは来るものだ。敵の数がどれほどであろうとも、
「おっしゃー、ここは通さねーかんな。」
「ははは、佐久間殿には負けられませんね。私も全力でいかせていただきます。」
信長たちが少し進むごとに2人はどんどんと影に飲まれていった。