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きっとどこかに  作者:
3/20

考えるべきこと

偶然にも去年と同じになった担任が明日の入学式時の部活動の制限について説明していた。そんなものは顧問に聞いてとうに知っているのだが、まあこれも仕事である。

敦史の奴もまた同じクラスだった。これで9年目の腐れ縁になる。中学2年間一緒だった森咲は離れた。

そして8年間一緒だった由佳とは今年初めて分かれた。居るべき存在が居ないというのはなんだか妙な気分だ。敦史のほうは俺よりもショックを受けていたようだったが、どこまで本気なのやら。

まあ、ずっと一緒だった今までの方がイレギュラーだったのだ。何も心配する必要はない。

俺が居ないからってどうにかなるような由佳ではないし、森咲も同じクラスだから大丈夫だろう。

確か午後は練習があるんだよな・・・。新入部員の勧誘をどうするかも考えなくては。

思考をサッカーへとシフトして、俺は窓の外を眺めた。


部活を終えて帰ろうとすると、校門のところで由佳と鉢合わせした。

「今帰りか?」

「うん」

「鈍いな~キョーイチは。待っててくれたんだろー、優しいユカちゃんが」

やれやれ、と敦史が肩をすくめる。

「そうなのか?」

「え、ち、違うよ?」

由佳は両手を振った。

「だよな。俺なんか待ってたって仕方ないだろ」

「どうだかね・・・ま、いいわ。じゃ~ね~ユカちゃん!あとキョーイチ」

「うん、バイバイ」

「人をついでみたいに言うなよ・・・じゃあな」

大きく手を振って、振り返りざま由佳に投げキッスまでかまして敦史は駆けていった。

「・・・本当に何なんだろうな、あいつは」

「さあ・・・?」

気を取り直して歩き出す。

「・・・クラス離れちゃったね、京一くん」

「そうだな」

目線を下げると彼女と目が合い、慌てて逸らす。

「寂しい・・・か?」

「え、そんなこと・・・」

「冗談だよ。言ってみただけだ」

誤魔化したが由佳はちゃんと答えた。

「ちょっとは、思ってるよ・・・・寂しいって」

「・・・そうか」

寂しいと思ってくれるということは、少しは必要とされていると思っていいのだろうか。

「京一くんは?」

「え?」

「寂しいって・・・思ってくれる?」

あまり格好悪いことは言いたくないが、強がってもこの幼馴染にはきっと見透かされる。

「そりゃ・・・ちょっとはな」

「ふふ、ありがとう」

由佳は嬉しそうに微笑んだ。

「新しいクラスはどうだ?」

「うん、綾ちゃんもいるし大丈夫。先生も優しそうだし」

「そうか。俺の所は去年と同じだよ」

「あ、沢田先生?いいな」

「まあ楽ではあるよな」

雑用のほとんどを一人でこなしてしまう教師なので、去年の委員長は仕事が少なくて助かると零していた。

「森咲は相変わらずか?」

「うん。役員決めは明日だけど、委員長はまた綾ちゃんかもね」

「あいつは無駄に人望あるからな、女子に」

「綾ちゃんはかっこいいもん。運動神経良いし、リーダーシップもあるし」

「そうだな。俺もあいつには勝てる気がしないよ」

体力はともかく、足は下手したら俺より速いかもしれない。

「・・・よ」

「うん?」

「京一くんだってかっこいいよ・・・私の憧れだもん」

「・・・正面切って言われると照れるんだけど」

「あ、ご、ごめんなさい!」

由佳は顔を真っ赤にして謝った。

「あー、いいよ。・・・ちょっと嬉しかったし」

赤くなった顔を背けつつ、話題を変える。

「そういえば、由佳は進路どうするかとか決めてるか?」

「進路?」

由佳は少し目線を落とした。

「京一くんと一緒のところ目指して頑張ろうかな、って思ったりもしたんだけど。でもね、私やっぱり・・・お母さんの行ってた高校に行きたいな、って思って」

「由佳の母さんの・・・ってことは俺の母さんの?」

「そうだよ」

俺の母さんと由佳の母さんとは高校時代の同級生で、俺と由佳が小さい頃からよく知った仲なのは家が向かいにあるからというだけではなく、彼女らに引き合わされたからだった。

「本当はね、綾ちゃんと一緒に行けたらいいなって思ってるけど・・・でも綾ちゃんはきっと推薦で違う学校に行っちゃうだろうし」

「スポーツ推薦か。あいつなら取れそうだな」

「うん。だから独りでもいいから、行ってみようかなって」

「そうか」

ちゃんと、考えているんだな。もしかして、真面目に考えていないのは俺だけなんだろうか?

敦史とか森咲とかも、意外としっかり考えていたりして・・・まさかな。



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