それは精いっぱいの
勉強を終えてから電気を消して、ベッドの上で由佳とのことを考えていた。
俺が好きなのは・・・森咲だ。けれど、もう俺は由佳と付き合い始めてしまっている。まだ一週間も経っていないのに簡単に覆していいものだろうか。
―“京一くんは・・・綾ちゃんのことが好きなんだと思ってたから”
多分由佳は気付いていた。本当の気持ちに薄々気が付いていて、返事を分かっていて告白したんだ。だとしたら、由佳は自分が思っていたよりずっと強い。
やっぱり森咲が好きだから別れてくれ、なんて、由佳はどれだけ傷付くのだろう。
「・・・それに」
たとえ由佳と別れたところで、森咲にはもう榊がいる。由佳とは別れた、だから付き合ってくれと言われても森咲は困惑するだけだろう。
振られることが分かっているのなら、このまま由佳と付き合って由佳を好きになった方がいいのかもしれない。それが多分敦史の言っていた、“丸く収まる”ということだ。
「・・・寝よう」
結局決断は先延ばしにして、俺は目を閉じた。
▽▽▽
次の日校門から出ようとすると、既に由佳が待っていた。
「・・・一緒に帰ろう、京一くん」
「・・・ああ」
隣を歩く由佳はいつもと変わらない。なのに秘めた強さも努力も知った後では、こんなにも違って見える。
「引越し、3日になったみたい」
「そうか・・・見送りにいくよ」
「うん・・・ありがとう」
ふと由佳が立ち止まる。行き過ぎてしまった俺は後ろを振り返る。
「・・・別れよう、京一くん」
しっかりとこちらを見上げて、由佳はまた寂しそうに笑った。
「え・・・そんな、いきなり何で」
「京一くんはやっぱり、綾ちゃんが好きなんでしょう?」
やはり、分かっていたのか。
「・・・由佳、俺は」
「いいの。私、この一週間とっても・・・幸せだったから」
ああ、とても・・・強い。見ていて痛々しいほどに。
「結局私はどこまで行っても、京一くんの妹にしかなれない」
「そんなこと・・・ない」
「本当にそう思う?」
何も、言えなかった。
「もしかしたら、私のこの気持ちも・・・それと同じだったのかもしれないね。お兄ちゃんとして、好きだっただけなのかも」
それはきっと、精一杯の由佳の強がりで。それは分かっていたけれど。
「・・・ごめん」
それだけで意味は通じて、由佳は小さく微笑んだ。




