表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

有沢鈴

 無口で無表情で、でも無感情じゃない。

 夕ちゃんの想い人、清川朱音ちゃんを一言で表すなら、多分これが一番しっくりくる。

 夕ちゃんの双子の妹として生まれたわたし、有沢鈴は、夕ちゃんが大好きな所謂シスコンだ。

 夕ちゃんが幸せなら、それはわたしの幸せでもある。

 だから、わたしは夕ちゃんの恋を誰よりも応援している。つもり……。

「中々上手くいかないのよね……朱音ちゃん、そういう感情にはとんと鈍いから」

 誰が見てもあからさまな程なのに……まあ、朱音ちゃんに恋愛感情を持っていた人が、告白するよりも前に風音ちゃんにやられてたから、無理もないけど……わたしに負けず劣らず、風音ちゃんもシスコンだからね……禁断症状が出る程なんだもん。

 中学の時、修学旅行ではそれで一騒動あったらしいし。

 聞いた話では二日目からそれが出たらしく、終始「朱音ちゃん朱音ちゃん」と呟いていたとか……一日二時間は朱音ちゃんに触れていないと生けない風音ちゃんが、計六時間も触れられなかったんだから、当たり前と言えば当たり前だけど。

 朱音ちゃんを好きになるというのは、これまで彼女に恋愛感情を抱いた人達が考えるよりも、遙かに大変だ。

 彼女に近付く前に、まずわたし達がそれを許さないから……特に夕ちゃんと風音ちゃん。

 二人の壁を越えるのは至難の業だろう。

 ベッドに寝転がり、二人が言っていた言葉を思い出す。

 夕ちゃん曰く――アンタにとって一番大事なモノは?

 風音ちゃん曰く――君にとって一番大事なモノは?

 その問いに答え、且つそれが正しくなければ、朱音ちゃんに近付くことは許されない。

 いや――わたし達が許さない。

 その壁を越えたことがあるのは、未だたった一人だけ。

 正しく且つ、それ以上ない答。

 それはたった一言で、十分なモノ。

「『自分』」

 そう答えれば、二人の壁は越えることが出来る。

 過去に起こった事件から、朱音ちゃんの周りにいるわたし達にとって、それは暗黙の了解となった。

 自分を大事にしないと、それは朱音ちゃんを悲しませることになるだけだから。

 さっき、朱音ちゃんは恋愛感情には鈍いと言ったけど、それ以外のことに関しては、とても鋭い。

 わたし達本人が気付かないことでも、朱音ちゃんは気付く。

 わたしでも気付けなかった夕ちゃんの体調に気付いた時は、悔しさもあったな……。

 まあ、とにかく。

 朱音ちゃんはそう言った所に関しては鋭いんだよね。

「……夕ちゃんの恋が実るのは、いつになることやら」

 呟いて起き上がり、部屋を出るとそこには、夕食が出来たことを知らせに来た夕ちゃん。

 くすりと、小さく笑い合って、わたし達は下に降りた。

「応援してるからね」

「何か言った?」

「なんでもな~い」

「?」

 首を傾げる夕ちゃんを、可愛いなと思いながら。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ