-☆-
あたしはたびたび、先生のことを思い出す。
いつも一生懸命だけど、ちょっと抜けている部分もあって飾らない雰囲気なのが、みんなに共感を与えていたのかな。
あたしにも、いつも優しい笑顔で接してくれていた。
それなのにあたしは、あんなことになってしまって……。
先生の笑顔を涙で曇らせてしまったのが、あたしにとって一番つらいことだった。
そんな思いに打ちひしがれていたあたしの前に現れたのが、あの人だった。
あの人は、あたしを優しく慰めてくれた。
あたしはここに居てはいけない存在。それはわかっていた。
それでも、ここに居たい。
あたしのわがままを、あの人は許してくれた。
嬉しかった。
温かかった。
それ以来、あたしはずっとここで、再びあの人が来てくれるのを待っている。
もう一度会えたら、なにをお話すればいいのかな。
そう思って待っているこの時間こそが、幸せなのかもしれない。
先生はこの無花果塚が建てられてから、この学校を去る日まで、ずっとイチジクをお供えしてくれた。
あたしとお話したときに、大好きなんだって言ったのを覚えていてくれたから。
先生はやがて教師を辞めた。
結婚することになったからだ。
もちろんあたしは、心から祝福した。
おめでとう、その言葉は先生の耳には届かなかったけれど。
先生の心には届いていたと、あたしは信じている。
先生が辞めてからも、お供えは続けられた。
イチジクをお供えするよう、他の先生方に話してくれていたみたいだった。
先生に会うことができないのは寂しいけれど、あたしはここに居る。
そうすればまたいつか、あの人にも会うことができるかもしれない。
その日を、楽しみに待っていよう。
ふと見ると、今日もリスさんが、干しイチジクの実を小さな前歯で一生懸命かじっていた。