表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みっしぃ  作者: 沙φ亜竜
幕間2
17/37

-☆-

 あたしはたびたび、先生のことを思い出す。

 いつも一生懸命だけど、ちょっと抜けている部分もあって飾らない雰囲気なのが、みんなに共感を与えていたのかな。

 あたしにも、いつも優しい笑顔で接してくれていた。


 それなのにあたしは、あんなことになってしまって……。

 先生の笑顔を涙で曇らせてしまったのが、あたしにとって一番つらいことだった。



 そんな思いに打ちひしがれていたあたしの前に現れたのが、あの人だった。

 あの人は、あたしを優しく慰めてくれた。

 あたしはここに居てはいけない存在。それはわかっていた。


 それでも、ここに居たい。


 あたしのわがままを、あの人は許してくれた。

 嬉しかった。

 温かかった。

 それ以来、あたしはずっとここで、再びあの人が来てくれるのを待っている。


 もう一度会えたら、なにをお話すればいいのかな。

 そう思って待っているこの時間こそが、幸せなのかもしれない。



 先生はこの無花果塚が建てられてから、この学校を去る日まで、ずっとイチジクをお供えしてくれた。

 あたしとお話したときに、大好きなんだって言ったのを覚えていてくれたから。


 先生はやがて教師を辞めた。

 結婚することになったからだ。


 もちろんあたしは、心から祝福した。

 おめでとう、その言葉は先生の耳には届かなかったけれど。

 先生の心には届いていたと、あたしは信じている。


 先生が辞めてからも、お供えは続けられた。

 イチジクをお供えするよう、他の先生方に話してくれていたみたいだった。


 先生に会うことができないのは寂しいけれど、あたしはここに居る。

 そうすればまたいつか、あの人にも会うことができるかもしれない。

 その日を、楽しみに待っていよう。


 ふと見ると、今日もリスさんが、干しイチジクの実を小さな前歯で一生懸命かじっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ