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遥か遠い日の記憶――。
これは、いつ頃のことだっただろう。
冷たい。
雨に打たれながら、あたしは立ち尽くしていた。
雨の冷たさなんて、感じるはずはないのだけれど。
でも、冷たい。
みんな、あたしのことをわかってくれない。
みんな、あたしのことを信じてくれない。
みんな、あたしの思いに気づいてくれない。
だから、祈った。
あの人たちは、悲しい思いを抱えている。
それはあたしにもわかっていた。
長いあいだ、つらかったのだろうということも、想像はできた。
それでも、その思いに他の人を巻き込んでしまうのは、いけないこと。
だからあたしは、あの人たちに声をかけて回った。
今はまだ、誰も応えてはくれていないけれど。
そのうちきっと、わかってくれる。
そう信じて、あたしは今日も、あの人たちのもとへ向かう。
これがあたしにできる、精いっぱいのことだから……。