月と太陽の書
村の外れにある高台の洞窟には月と太陽の書を持つ者がいた。月の書は朝を招き、太陽の書は夜を招いた。月の書は夜に太陽の書は朝にしかその文字を表さなかった。
ある時、他の国の王がその書物の話を聞きその村を訪れた。王はその書物を欲した。
『朝と夜を司るなら王の私が相応しい』
ある夜、王は村人の反対を押し切り書物を持つ者を殺しその書物を奪った。
しかしその書物は異国の字で綴られていて王は読むことが出来なかった。王は側近に文字の解読を命じたが、その文字を読める者は一人としていなかった。その日から夜は明けることなく続き植物は枯れ人々はどうすることもできなかった。
人々は村の外れにある高台で王を殺し書物を返上した。
それから間もなく書物は姿を消し夜明けが訪れた。植物や家畜は失ったが人々は半年ぶりの朝日に涙を流した。人々は過ちを忘れることがないように高台に王の石像を逆さまに建てた。