第四区切り
一階に下りてみると台所の所に明かりが点いていた。
まだ母さんが起きていたのかとびっくりし、心臓が高鳴った。
台所に行くと案の定母さんは起きていて、洗い物やらをしていたらしい。
「あれ。起きてたの?」
この時間は滅多に起きていない俺に母さんはびっくりしたらしい。
「あ、うん。……ちょっとね」
辺りを見回したが母さんは一人しか居ず、俺の予想とは反していた。
俺の予想では、母さんがすでに二人居て、どっちかが偽者なんだろうと思った。
少しほっとした。
やはりさっき見たものは全て夢じゃないのかと思った。
「母さんこそ。まだ寝ないの?」
「そうね、そろそろ寝るわ」
「うん、おやすみ」
何の取り止めもない会話。
牛乳を温めて飲んでから寝ようと思い、コップに牛乳を注ぐ。
すると唐突に母さんの悲鳴が聞こえた。
びっくりして、手に持っていたコップを落としそうになった。
コップは落ちなかったが、残念ながら牛乳パックは落ちてしまった。
いや、今はそんな事はどうでもいい。
コップを急いで傍の机に置き、急いで悲鳴が聞こえた場所へ行った。
悲鳴は聞こえた場所は、母さんの部屋で、中を覗くと母さんが立っていた。
「どうしたの!?」
と、俺が慌てて声を掛けると母さんは「ベット……」と力無い声で言った。
そこは母さんの部屋で、ついでに言うと、この家は俺と母さんの二人暮らしで他には誰もいない。
ベットなどに誰かいるとすればそれこそ泥棒か何かだろう。
しかし、そこにいたのは泥棒どころか、まして知らない顔の人間ではなかった。
そう、そこには、今俺のすぐ隣にいる母さんが少し距離のあるベットで寝ていた。
――いや、正確には、さっきの母さんの悲鳴で起きたらしいもう一人の母さんの姿があった。