奇跡の光
困ったことに、お金が足りなくなってしまった。
思っていた以上に、物価が高かったのだ。
「どうしよう……」
カラに近い状態の財布を握り締めて、辺りをキョロキョロと見回す。
お金を稼ぐ手立てはあるのだが、どうしても使いたくない手段だったので、断念する。
「ねえねえ、もしかして旅をしている人?」
ガックリと項垂れているときに、いきなり後ろから肩を叩かれて、少し驚いて反応する。
「!……そうだけど」
見ると、同年代位の少女が、ニコニコと笑みを振り撒きながら立っていた。
「だと思った!!お金に困ってるの?泊まるところで困ってるの?だったらうちにおいで!!ちょっとだけど持成してあげる」
言うが早いが少女はわたしの手を引っ張って歩き出す。
「え……ちょ……!!」
わたしの意見なんて、聞きやしない。
そしていつの間にかわたしたちは、お互いの名前を教えあうほどの仲になっていた。
「ねえ…。なんで旅に出たの?」
「ぅ……」
きっと少女は何気ない気分で訊いただろう。でも、わたしは答えを言うのをかなりためらってしまった。
「バカに……しない?」
「うんしない」
間髪入れずに応えてくれた少女に少し安心感を覚えた。
ああ、この子だったら……。
「実は、わたしは“枯れない花”を探しているんだ。その花を見て、わたしが涙を流せるか、わたしの心の中に、まだキレイな部分が残っているのか……。それを確かめたくて、花を探しているんだ」
一気に話し終えたあと、わたしはチラッと少女の顔を窺った。
「―――ステキ……」
予想していなかった言葉に、わたしは面食らった。
少女は、そんなわたしに気付かず、話続ける。
「ステキ。花を探して旅に出るなんて、あたしもできるようになりたいな。……あたし、信じてるから。絶対、その花が見つかるって。絶対に、あなたが見つけてくれるって」
その言葉は、わたしの胸の中にスッと溶け込んで、隅々まで行き通るように広がっていく。
この子は、わたしを信じてくれている。誰も信じてくれなかった世界で、この子だけがわたしを信じてくれた。
涙が零れるのを必死に隠そうと俯くと、わたしの手を少女が無理やり握ってきた。
驚いて顔を上げると、少女はキラキラと輝いた笑顔で言ってくる。
「その花が見つかったら、あたしに教えてね。一番最初にね。真っ先に教えてね。絶対ね、約束だよ……?」
期待に満ちた、そんなキレイな瞳を見つめていると、心の奥がとても温かくなってくる。
それと同時に、チクッとした小さな痛みが、胸の中に広がっていくのも感じた。
それは、今までわたしを信じてくれた知人、友人、家族がいなかったからだろうか?
そう思うと、少女の輝いた瞳に対して、素直に頷くことができず、消えそうなほどに小さな声で、「うん……」と呟くことしかできなかった。
昼間のように明るい夜。
その明るさは、大きな光が地上に降ったせいであった。
「奇跡の光が、墜ちた」
その明るい光が消えるその瞬間、そっと少年は囁いた。
枯れない花を、咲かせよう
キミとボクとの映った夢に
キミとボクとがまた会うために




