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その花の名は


 「キミが来るのを、ずっと待っていたんだ」

目の前にいる少年は、そっと口を開いた。

 その言葉が、誰に向けて物なのか一瞬分からなかったわたしは、「え?」と小さく呟いて、

「わ・・・、わたし?」

ようやく理解してからも、まだ、分からないことだらけだった。

「そう、キミを待っていたんだ・・・・・・」

少年の寂しく揺れる瞳は、手の中にあるその花”枯れない花”に向けられる。

「キミのおかげで、この花は咲くことができた。心から感謝の気持ちを込めて・・・・・・ありがとう」

少年が言った言葉の意味が理解できなかったわたしは、「は、はぁ・・・?」と間抜けな声を出してしまった。

「わたしのおかげって・・・・・・。どういうこと?」

はてなと首をかしげているわたしをおかしそうに笑ってから、少年はわたしの知りたいことを教えてくれた。

「キミが、この花を探してくれたから、この花を見つけてくれたから、この花を繋げる人になってくれたから。この花は、安心して咲くことができたんだ。キミが、この花を未来に伝えてくれるから、だからこの花は咲くことができたんだ・・・・・・」

それを聞いてわたしはとても焦ってしまった。わたしは、この旅が終わったら、またもう一つの旅に出るつもりでいるのだ。

 もう一つの、もっと長く大きな旅に。

「だ、ダメだ! そんなことは・・・・・・わたしにはできない。未来に伝えていくなんて無理だ!!わたしは―――」

「―――この花はね」

突然、わたしの言葉を遮って少年は喋りだした。

「この花はね、永遠の花とも呼ばれているんだ。でも、永遠なんて、本当は存在しない。終わらないものなんて、なにもないんだ。だから、人によって永遠の永さは異なる。その人によって、その人の生命の永さは永遠の永さになるんだ」

「・・・・・・?」

少年の話し出したことがよく分からなくて、少し首をかしげていた。でも、少しずつ意味が分かってきて、驚きで目が見開いていく。

「キミの永遠は、まだ続くよね?自らの手で終わらせることなんて、しないよね?永遠に、ずっと輝いてるよね?」

 この少年は、知っているんだ。

 わたしの旅の意味を。

「人の生命は人の永遠なんだ。生命が続く限り、永遠は終わらない。だからこの花は、こう呼ばれているんだ」

少年はスッと手元の花に目を向けて、わたしの方に目を戻す。

 わたしを見つけて、言う。

「”永遠(いのち)の花”」

決して逸らさない瞳に、わたしは逃れることができなかった。

 少年は知っている。わたしの旅の訳を。

 この、”枯れない花”を見つけた後、わたしは――――――

 

 死に行くための、大きな旅にでるつもりなのだ。

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