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第二章 太郎国へ

文明の衝撃! コンビニ『タローソン』へようこそ

 国境の関所を抜けた瞬間、世界が変わった。

 大袈裟な比喩ではない。足元の感触が、劇的に変わったのだ。

「れ、レオンさん! 見てください! 道が……道がツルツルですぅ!」

「ああ……これは『アスファルト』だ」

 キャルルがはしゃいでその場でタップダンスを踊る。

 ガルーダ国の道は荒れた土や砂利道ばかりだったが、ここから先は黒く滑らかに舗装された道路が、地平線の彼方まで続いていた。

 さらに、等間隔に設置された街灯が、魔法の光(LED)で夜道を真昼のように照らしている。

「キュウッ!(あかるい!)」

「信じられないな……本当に、日本(俺のいた世界)と同じだ」

 レオンは感慨深げにブーツの底を鳴らした。

 噂には聞いていたが、タロー国の文明レベルは想像を超えている。

 しばらく歩くと、道路沿いに一際明るい建物が見えてきた。

 青と白のストライプ看板。全面ガラス張りの店舗。

 そして看板には、どこか見覚えのあるミルク缶のマークと、『TARO SONタローソン』の文字。

「……コンビニだ」

「こんびに? なんですかそれ?」

「24時間いつでも開いている、冒険者の補給所オアシスさ」

 レオンはゴクリと喉を鳴らし、二人を連れて店の前へと立った。

 ウィィィン。

 入り口に近づいた瞬間、透明なガラス扉が左右に開いた。

「キュアッ!?(敵!?)」

「ひゃうっ!?」

 ヴォルトがビビって尻尾の毛を逆立て、キャルルがレオンの背中に隠れる。

「だ、誰かが魔法で開けましたよぉ! 透明人間ですか!?」

「いや、自動ドアだ。人が近づくと勝手に開くんだよ。……ほら、入るぞ」

 レオンに促され、恐る恐る店内へ足を踏み入れる。

 その瞬間、肌を撫でる涼しい風(空調)と、何とも言えない香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。

 揚げ物の匂いだ。

「はわわ……! いい匂いですぅ……!」

 キャルルの長い耳がピーンと立ち、鼻がヒクヒクと動く。

 彼女の視線が釘付けになったのは、レジ横にあるガラスケース――ホットスナックコーナーだ。

 黄金色に輝くチキン、フランクフルト、コロッケが整然と並んでいる。

「いらっしゃいませー! タローソンへようこそー!」

 店員(見た目はゴブリンだが、清潔な制服を着て愛想が良い)が元気よく声をかけてきた。

「レオンさん! あれ! あの棒に刺さったお肉! あれが食べたいです!」

「『からあげ棒』か。いいぞ、好きなだけ食え」

 レオンは財布(なけなしの銀貨)を確認し、頷いた。

 これからの稼ぎを考えれば、数百円の出費など安いものだ。

「店員さん、この『からあげ棒』を一本。あと、『人参ジュース』はあるか?」

「はい! タロー農園直送の搾りたて人参ジュースパックですね! そこの棚にあります!」

 キャルルが歓声を上げて冷蔵棚へ走る。

 レオンはその隙に、自分の目的の物を探した。

 飲料コーナーで、黒い缶を見つける。

 【ブラックコーヒー 微糖】。

 震える手でカゴに入れた。そして、レジ裏の棚を指差した。

「あと……その、12番のタバコをくれ」

 店員が取り出したのは、赤と白のパッケージ。

 【Marlboro】――通称、赤マル。

 この世界では「タロー商会専売品」として流通しているらしい。

「合計で銅貨8枚(800円)になります!」

 レジに銀貨を置き、商品を受け取る。

 レシートとお釣りを受け取る感覚すら、涙が出るほど懐かしい。

 買い物を終え、キャルルにからあげ棒とジュースを渡す。

 彼女は紙袋から漂う匂いを嗅ぎ、うっとりとした表情を浮かべた。

「では、レオン。この謎の料理、解析しますか?」

「いや、いい。……いや、一応見ておくか」

 レオンは職業病で、ついキャルルの手にあるからあげ棒にスキルを発動してしまった。

【物質解析】

> 対象: タローチキン(からあげ棒)

> 成分: 鶏肉(ブラジル産種)、小麦粉、植物油脂、アミノ酸等

> 特記事項: 保存料(ソルビン酸K)、pH調整剤

> 判定: カロリーの塊。悪魔的な美味さ。

>

「……保存料にpH調整剤だと? 高度な錬金術(化学)が使われているな」

 この世界の住人から見れば、腐敗を防ぐ魔法がかかっているように見えるだろう。

 だがレオンには分かる。これは科学の結晶ジャンクフードだ。

「さあ、外で食おうか」

「はいっ! 早く食べたいですぅ!」

「キュッ!(にく!)」

 三人は自動ドアを抜け、夜風が心地よい駐車場へと向かった。

 そこには、異世界とは思えない「現代の休息」が待っていた。

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