第1章7「会社員が辞めない理由~準備だけで勝つ男~」
全面的に自己責任でお願いします。
第7話
「通販画面の向こう側」
深夜。
部屋の明かりは、最低限に落としてある。
優守はベッドではなくソファに腰を下ろし、静かに息を整えた。
「……よし。これからだな……」
頭の中で、意識的に呼びかける。
――通販。
すると、視界の端に半透明のウィンドウが浮かび上がった。
スマホでも、パソコンでもない。
だが、どこかで見たことのある――通販サイトそのものの画面構成。
「……ほんとに“通販画面”だな……」
カテゴリ。
検索欄。
おすすめ商品。
ランキング。
そして、画面の隅には見慣れない表示があった。
《残高:0》
《ポイント:0》
「……お金、必要なのか……まぁ、当たり前か……」
恐る恐る、詳細を確認する。
購入方法は三種類。
・現実の通貨を“チャージ”する
・販売によって残高を増やす
・当サイト内ポイントを使用する
さらに、その下。
《販売:可能》
《対象:当通販サイトの規定を満たす物品》
「……え、売れるのか……?」
一瞬、思考が止まる。
買えるだけじゃない。
売れる。
それも――料理関連に限らない。
日用品、雑貨、本、工具、素材、貴金属、料理、リサイクル品。
条件はひとつ。
「……“自身が所有していること”……」
優守は、ゆっくりと息を吐いた。
「……これは……ヤバいな……」
さらに読み進める。
《レベルアップ条件》
・購入
・販売による利用実績
・ポイントの獲得
・通販関連書籍および雑誌の読了
《レベル上昇で可能になること》
・商品数増加
・品質・選択肢の向上
・特殊商品解放
・特注品注文フォームの開設
「……使えば育つし、読むだけでも上がる、と……」
完全に、読書特化型だ。
そして次の項目で、優守は動きを止めた。
《アイテムボックスとの同期を確認》
《同期しますか?》
【YES】/【NO】
「……同期……?」
一瞬迷ったが、拒否する理由は見当たらない。
「……はい」
【YES】を選択した瞬間、視界がわずかに揺れた。
《同期完了》
《購入品はアイテムボックスへ直接収納されます》
《アイテムボックス内物品の販売が可能になります》
《査定・販売・チャージ機能を統合しました》
「……統合……」
試しに、アイテムボックス内を意識する。
本、家具、雑貨――。
その一つひとつに、淡い光の枠が重なって見える。
――査定可能。
「……触らなくても分かる……
……ゴミと汚れまで光ってるのは、何でだ……?」
販売 → 残高へ反映
残高 → 購入に使用
購入品 → 即アイテムボックス内
完全に、循環している。
「……これは……表で使ったら、一発で終わるな……」
目立つ。
説明がつかない。
「……今は、確認だけだ……」
使いたい衝動を押し留め、料理スキルも確認する。
《料理 Lv1》
《レベル条件:調理経験・レシピ読了数》
「……作らなくても、読むだけで上がるのか……」
現実的だ。
安全だ。
今の自分に向いている。
優守は、得た情報をゆっくり整理する。
――今夜は、使わない。
「……チートは……育てるもの、か……
とりあえず、明日の予定を考えよう」
静かな部屋で、優守は一人うなずいた。
読んで、理解して、積み上げる。
静かに、確実に。
誰にも気づかれないように。
優守はスケジュール帳を開き、明日の予定を確認した。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




