第二章2 使い始めるための現実解
全面的に自己責任でお願いします。
第二章2【読書してチート目指します。~本でスキルゲット!?チートですがなにか?~】
第2章 第2話「特別じゃない成功。当然の結果」
部屋は、相変わらず静かだった。
開業届を出したからといって、何かが変わるわけじゃない。
机の位置も、椅子の軋みも、窓から入る光の角度も、昨日までと同じだ。
ただ一つ違うのは、肩書きだけ。
――個人事業主。
そう名乗れるようになっただけで、生活そのものは何も変わっていない。
優守はデスクに向かい、作業用の端末を立ち上げた。
今日やることは、もう決めてある。
派手な挑戦はしない。
無理な仕事も取らない。
説明できる範囲で、確実に終わる作業を一つ。
それだけだ。
作業を始めると、自然に感覚が切り替わる。
資料を読み、要点を抜き出し、整えていく。
スキルが働いているのは分かる。
処理は速いし、迷いもない。
だが、それを意識することはもうない。今はただ、普通に仕事をしているだけ。知能系のスキルは体に馴染み、初期の感覚すらもう認識できないほどになっている。
数時間後、作業は終わった。
提出を済ませ、あとは待つだけ。
特別な期待はない。
ダメならそれまで、通れば次を考える。
そんな距離感だった。
夕方、スマホが小さく震えた。
通知を開く。
――入金完了。
金額は、正直に言えば小さい。
昼飯を数回我慢すれば消える程度の額だ。
……それでも。
「……あ」
思わず、声が漏れた。
既に副業として何度も金銭をもらっている。それでも、個人事業主になって、初めての収入に嬉しい、という感情は確かにあった。
だが、その感情はそれほど長く続かなかった。
優守はすぐに、別のところを見始める。
振込元。
名目。
記録の残り方。
すべて、問題なし。
説明できる。
誰に聞かれても、どうやって得た収入かを言葉にできる。
制度の外に飛び出していない。
無理も、歪みも、ない。
ここで、ようやく肩の力が抜けた。
「ふぅ・・・。これで確認完了。これなら問題なく続けられる。」
(まぁ、当然だな。準備をした。調べた。相談もした。その結果として、この形になったんや早々問題起きても困るし、これからも確認はおこたれん。)
特別な奇跡は起きていない。
スキルが暴走したわけでもない。
計画通りの結果が、計画通りに出ただけ。
帳簿を開き、売上を記入する。
日付、金額、内容。
すべて、事務的に終わる。
個人事業主になった実感は、まだ薄い。
だが、不安はなかった。
独立というのは、勢いで飛び込むものじゃない。
ねんみつな計画とそれを実行するためのコネそして少しの勇気と事務手続き、そして立場が切り替わっているものなのかもしれない。
優守は、画面を閉じて小さく息を吐いた。
「……地味なことばかりやけど」
そして、少しだけ口角を上げる。
「これが、普通の大人の正しい独立やな」
その一言で、この日は終わった。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




