第1章 19「会社員が辞めない理由~準備だけで勝つ男~」
全面的に自己責任でお願いします。
第19話「年の瀬と、運の使いどころ」
年末が近づいていた。
街にはイルミネーションが増え、
会社でも「今年も終わりだな」という空気が流れ始める。
(……もうすぐ一年、か)
ステータスを得てから、ほぼ一年。
生活は激変したわけじゃない。
だが、確実に“別物”になっている。
◆◆◆
会社帰り、優守は売り場の前で足を止めた。
年末ジャンボ宝くじ。
(……買うか)
いつもは、期待しない。
だが、今回は条件が違う。
《スキル:豪運》
このスキルには、レベル表記がない。
だが、これまでの出来事を思えば――効果は明白だった。
バラで、数枚。
ごく自然な量。
「……行事みたいなもんだな」
そう言って、何事もなかったように財布にしまう。
◆◆◆
年末休暇。
優守は、新幹線で大阪へ向かった。
実家に帰るのは、久しぶりだ。
◆◆◆
玄関を開けた瞬間。
「……あんた、誰なん?」
母の第一声だった。
「ちょ、ちょっと……優守?」
父も目を丸くする。
「…しかし…痩せたな」
「いや、痩せたっていうか…お母さん誰かわからんかったわ…」
体重は、75kg。
目標通り。 180cmの身体には、無理のない数字だ。
太っていた頃は分からなかったが、今は体の芯がはっきり見える。
「ちゃんと、飯食べてるん?」 「運動してるだけやって、ほれみてみい。」
バキバキの腹筋を見せつける。
「うわーすごいやないか。」
「ちょっと、お母さんに触らせてーな。」
それ以上は聞かれない。
母にまさぐられるだけだ。
それでいい。
◆◆◆
実家では、特に何もしない。
こたつ。 テレビ。 みかん。
散歩に出て、風を吸う。
(……悪くないな)
何も考えず、何も急がない。
◆◆◆
年が明けた。
新年。
ニュースを見ながら、何気なく宝くじを確認する。
一致。
一つ、また一つ。
「……ああ」
心は、不思議なほど静かだった。
(……だよな)
当たった。
だが、驚きはない。
(一等…7億か。)
◆◆◆
後日。
優守は、事前に連絡を入れた上で、大阪の銀行へ向かっていた。
隣には、父と母。
「共同で買ったことにしてるからな」
「「分かってる」」
誰にも知られないように。
変な疑いを持たれないように。
手続きは、淡々と進む。
特に当たった後の対応のビデオや冊子は、為になる。
両親も真剣にきいている。
(……運も、使い方次第だな)
◆◆◆
帰り道。
父がぽつりと言った。
「無理すんなよ」
「してへんよ」
それは、嘘じゃなかった。
◆◆◆
夜、布団に入る。
ステータスを得て、もうすぐ一年。
――健康 ――仕事 ――金 ――人間関係
すべてが、少しずつ、だが確実に整っている。
「……派手じゃないけどな」
それでいい。
豪運は、振り回すものじゃない。
必要なときに、自然に“当たる”。
優守は、そう理解していた。
静かな新年の空気の中で、
彼は次の一年を、ゆっくりと思い描いていた。
生活は、まだまだ続く。
だがもう、
“戻る”ことはない。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




